雪解けのツンドラをさまよう一頭のカリブー、煌めく水しぶきをあげながら鮭を捕まえるクマ、4千キロの旅を経て北の海にやってきたザトウクジラのブリーチング。大判の写真で見ると、文庫版とは違って、壮大な極北の大地に包み込まれる感覚を覚える。
星野道夫の動物たちの写真はどれもみな愛くるしく、クマでさえもコグマを背に乗せた和やかな姿が捉えられている。動物たちを人間とは別のものと見なすのではなく、人間と同様に同じ地球に生きるはらからと考える、星野の優しい眼差しが伝わってくる。
動物たちと同じ地平にいた星野であったが、カムチャッカでクマに襲われ亡くなった。この出来事を読むと、決まって宮沢賢治の『なめとこ山の熊』の話を思い出し、動物と人間との関係を考えさせられる。
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