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2021年07月11日22:00

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【バレエ】宝満版「美女と野獣」


耳に馴染む音楽とコミカルな演出、小野さんと福岡くんのプロフェッショナルな踊り、そして二人のパートナーシップがツボにはまり、表題の配信を追加してしまった。

次に見る機会がいつになるのか、そもそも観ることができるのかも不明なので、記憶を文字にとどめることにした。

公式サイト
https://www.ycb-ballet.com/w

ACT1

『遥か遠い国の物語です。人里離れたとある村に「ベル」という愛情深く、聡明な、誰もが羨む美貌を持った大変魅力的な少女が暮らしていました』
(公式サイトの「あらすじ」より。https://www.ycb-ballet.com/summary

暗闇の舞台中央、スポットライトを浴びた小野さんが床に腰を下ろし本を読んでいる。「読書好きの少女」とすることで彼女の聡明さを表現しているのだろう。しばらくしてお父さんも登場。本を手にした小野さんのバリエーション、その足さばきを観ているだけで配信代の元が取れた気分になる。(笑)

『そんな彼女の元に、やがて3人の求婚者たちがやって来るようになり、毎日代わるがわる彼女の気を引こうとしましたが、乱暴で粗野な彼らがひけらかす裕福さなどは、ベルにとっては全く魅力的なものではありませんでした。世界中を旅してきた商人である父の話を聞いて育ったベルは、「もっと知らない世界を見てみたい!」と想いをつのらせます』

この3人の求婚者が悪役として最後まで絡んでくるが、「3馬鹿」と言う表現がぴったりのキャラが良い味を出している。3人の登場場面では声楽がBGMに使用され、ロングコート風の衣装も相まって「カルミナ」の神父たちの群舞を連想させる。

『ある日、道中、不気味な城に迷い込んだ商人が、咲いていた美しいバラをベルへ持って帰ってあげるために一輪摘んだところ、恐ろしい野獣が現れました。あまりの恐ろしさに商人は、自分の大切な娘のためにバラを一輪持って帰ってあげたかったことを正直に話しました。すると野獣は、商人を許す代わりにベルを自分に差し出すよう、無理やり約束させたのでした』

暗転後、夜道をさまようお父さん。薔薇の化身たちが両手に持ったライトを蛍のように点滅させ、時には明かりを「→」と並べてお父さんを怪しげな森の中へと誘い込む。この化身たちと後ほど登場するサルたちは、大道具を回したりテーブルをセッティングしたりと黒子的な役割も担っている。

お父さんがいざなわれるままに薔薇の花を手にしたとたん、咆哮とともに野獣登場。普段はノーブルな福岡くんの荒々しい踊りや仕草は新鮮。(笑)

舞台装置はロシアの夏ガラにも負けないシンプルさで、階段が付いた大道具、白い箱、暖簾のような下がりものの3種類を効果的に使いまわしている。大道具は前後に大小の階段があり、その片側に帆船の帆のようなかたちの三角形の板が付いているだけだが、回転させるとさまざまなカタチに見えるので、壁や屋敷のホール、バルコニーとして使う。また階段を昇り降りすることで、ベルの家と外界、野獣の館間の移動を表現している。

白い箱は主にテーブルや寝台として使われるが、全体に暗い舞台の中、アクセントにもなっている。

ロープを何本も並べた下がりものは、正面から見るとアーチ状に見えるよう長さを変え、そこに光を反射する飾りを付けて場面に合わせた色のライトを当てる。ほかにも舞台装置が少ない分、照明が活躍する。

お父さんが野獣にベルの話をしていると、そのイメージとして白い箱に座って本を読むベルが現れるが、階段に乗った野獣ごと大道具を回転させると場面はベルの家となり、そこへへろへろになったお父さんが闇の中から出てきて帰宅を表現している。

『家に戻った商人は、その城で起きたこと全てをベルに話しました。泣き崩れる父親を見て、ベルはこの不幸を招いた責任は自分にあると感じ、父の代わりに犠牲になると決心し、野獣のもとへ飛び出して行きました』

父親がベルに出来事を説明するとき、スポットライトが当てられた階段の上に野獣が現れ、その階段を上ることでベルの決意の出立を表現、大道具が回転して反対側の階段を下りてくると、そこは野獣の館というあんばい。幕を使わないシームレスな場面転換はノイマイヤー演出を彷彿させ、スピーディというよりはスムーズな進行もツボにはまる。

出迎えた野獣と1回目のPDDは、さながらランケデムとギュリナーラのPDD。野獣の異形に一度は気絶するベル。目が覚め、料理をふるまわれるも気丈に拒絶。すると野獣は怒って食器を薙ぎ払い去っていく。恐怖と悲しみ、困惑のバリエーションをはさみ、大道具の壁によりかかったまま眠りに落ちるベル。

『城へ着いたベルは想像以上に恐ろしい野獣の姿を見て自分の運命を嘆きましたが、夢の中で出会った美青年に「偽りのうわべに騙されてはいけない。目に相談してはいけないよ。自分の心で感じるままに真実を見てみて。」と告げられました』

2回目のPDDは夢の中だから、福岡くんは素顔でベルも笑顔。途中、ベルはマイムでわが身にふりかかった不幸を語るが、その仕草がかわいい。(笑)

テーブルとして使われていた白い箱は、上面に青いライトを当てられてベッドとなり、お姫様抱っこされたベルはそこに寝かされる。

サルたちがやってきて、ベルの寝顔を覗き込む。目を覚ましたベルは間近にあるサルの顔に悲鳴をあげ、その声でサルも驚きの声、客席からは笑い声。

サルは元近衛隊長で、部下が2人とその妻、子供の計7人。隊長の福田くんは以後物語の進行役となる。

大人のサルたちの歓迎の踊りを、意味がわからず壁に張り付きながら恐る恐る見つめるベル。そこへ子ザルがやってきて踊りに誘い、ベルにも笑顔が戻る。

しかし自分の置かれている状況を思い出して泣くベルを見て、サルたちは食事に誘う。ベルは最初拒否するが、お腹が鳴り、子供たちと食堂へ。残ったサル隊長は一思案。

場面が変わり、いらだちを隠さない野獣に歓迎の宴を開きましょうと提案するサル。二人のやりとりがコミカルで面白い。

退場する2人に代わり、ベルを追ってきた3馬鹿がサルに変装して館への侵入を試みる。出くわしたサルは不審に思うも、サルも頭は良くないからそのまま通してしまう。いや、元は人間だよね、というツッコミは飲み込むことにした。

『城には喋るサルや美しい色とりどりの鳥たちがいて、ベルのために晩餐会を開いてくれました。初めは険悪な様子だったベルと野獣でしたが、次第に野獣の中に優しさ、誠実さを見出すようになり、いつの間にか彼との時間を楽しむようになっていました。段々と歩み寄る2人に、周りもそれを微笑ましく見守っていました。それを面白く思っていないのは城に忍び込んだ求婚者たちです。ベルを取り戻そうと躍起になります』

場面が変わり、群舞のディベルティスマンを宴の余興として利用。華やかな雰囲気はたしかに歓迎の宴。

最初は女性の鳥群舞。黄色8人、+3色(赤、青、オレンジ)、+メインの孔雀(イメージカラーは緑だけど、飾り羽が他の鳥とあまり変わらないからオウムだと思ったよ)。躍り込めばさらに良くなりそうだが、それでもどこかのなんちゃって主役より勢いがある。(笑) 明るい曲調にマッチしたコミカルな振付は観ていて楽しい。

笑顔で入場して来たベルに、野獣はサルに教わった通り丁寧なあいさつをするがシカトされてしまう。おかしいなあ、と首をひねるサルに、話がちがうじゃないか、と八つ当たりする野獣。

鳥たちの踊りに続き、サルたちの群舞、再び鳥たちが登場し、次いでサルに変装した3馬鹿の踊り。リーダーが中家さんで、ほかの2人も彼に釣り合う力量の踊り手なので3人とも上手い。馬鹿だけど。(笑) ベルにちょっかいを出し、最後は野獣に威嚇されて逃げ散る。

助けてもらったベルは、野獣に対してそれまでとは違う気持ちが心の中にあることに気付き、そんな自分に戸惑っていると鳥たちが踊ってごらんと促す。小野さんのバリエーションは眼福以外のなにものでもない。

舞台袖で肩を落とす野獣におそるおそる近寄り、お礼を言うベル。顔を上げた野獣が近寄ってくると、でもまだちょっと怖いので逃げてしまう。それを見て再び凹む野獣。

まったくもう、見てられない、とサルたちに後押しされ、踊りを申し込む野獣。笑顔がひっこんでしまったベルに、薔薇の花をプレゼント。すると最初は驚いていたベルに笑顔が戻る。よし、お師匠さまの機嫌を損ねた時はこの手を使おう。(笑)

ベルのあまりの喜びように戸惑う野獣。最後は笑顔でダイブしてきたベルを受け止めるも、驚きのあまりフリーズしてしまう。ここで例のワルツ2番が流れ始め、彼のソロバリエーション。

呆然とし、心ここにあらずでぎこちなかった動きが、じわじわと湧き上がってくる歓喜とともに次第に激しさを増す変化が見事。面白い場面なのに、野獣の心情を思うと、ついうるうるしてしまう。感極まった野獣に引きずり込まれるようにして始まるコミカルなPDDは、ある意味この作品の山場でもある。

セリフのないバレエ・ダンサーにとって顔や目の表情はとても重要だが、被り物はそれも封印してしまうから、ダンサーは全身を使い、まさに踊りで気持ちを表現しなければならない。ところが福岡@野獣は喜怒哀楽が手に取るようにわかり、技術はあっても演技力はいまひとつだった過去を思うと、その成長ぶりに驚かされる。バレエダンサーは若いうちに被り物役を経験すべき、と彼の踊りを観て思った。

PDDのあとはサルの隊長のバリエーションに続き全員が参加してのまさに舞踏会。しかし踊りが終わり我に返ると、現実が信じられず再び肩を落とす野獣を見て慰めるベル。短いPDDの後、打ち解けた2人は食事を共にするまでになり、それを見てはやし立てるサルや鳥、咆吼で照れを誤魔化す野獣。

3馬鹿たちの悪だくみを示唆して1幕終了。
ここまで約50分。

Act2

『ある夜、ベルは父親が求婚者たちに詰め寄られて苦しんでいる夢を見て飛び起き、野獣に父に会わせてほしいと嘆願します。野獣はそれを許し、ベルは野獣の親切心に感謝しながらも城をあとにするベルを見送りながら、野獣は、愛する人を失う悲しさと、もう2度と人間に戻れないかもしれないという絶望感で膝から崩れ落ちました』

「あらすじ」から想像するよりも、3人がおべんちゃらで父親を翻弄するシーンはコミカル。途中からベルが止めようとするが、夢なので手が出せない。連れ去られる父親を追っていくと、捕まえたのは野獣、という場面転換もうまい。

幼いころの身の上話(ちびベルが演じる)を絡めてベルの父を思う気持ちを描いたのち、去っていくベルを寂しそうに見送る野獣。階段と照明を効果的に使った演出だが、「膝から崩れ落ちる」ことはない。原案ではそういう演出だったのだろうか。

『大急ぎで帰ってきたベルは父親と無事再会し、野獣がベルの思いを汲んで解放してくれたこと、本当は優しく誠実で誰よりもベルのことを1番に想ってくれていること、城で起きたことを、夢中で話している内にベルは眠りにつきました』

3馬鹿の出迎えと長旅の疲れに、薔薇を手にしたまま眠りに落ちるベルの元、薔薇の化身たちが忍び寄る。

『すると、再び夢の中であの美青年に会いました。近づこうとすると、突然老婆が現れて青年に向かって、あなたの城に一晩泊めて欲しいと、1輪のバラを差し出しました。ですが青年は老婆のあまりの醜さに老婆を罵りました。その瞬間、青年は野獣の姿へと変わってしまいました。その老婆は実は森に住む仙女だったのです。「この呪いはあなたの心の醜さを映し出しています。あなたが誰かから本当に心から愛された時、あなたは人間の姿に戻るでしょう。それまではこのバラ達に愛を注ぎ続けなさい。もしあなたが愛を忘れた時、あなたはただの獣になり、城の者たちも一生元には戻れないでしょう。」すると仙女は姿を消して、1人残された野獣は天に向かって吠えました』

目覚めたベルは、薔薇に込められた物語知り、求婚者たちを振り切って野獣の元へと再び旅立っていく。

『再び求婚者達が訪れましたが、野獣の正体を知ったベルは大急ぎで城に戻ります。残された求婚者の1人が「こんなにも愛しているのに何故私のものにならない!? 全てはあの醜い野獣のせいだな!殺してやる!」そう怒り狂うと、群衆を引き連れて城に向けて出発するのでした・・・』

3馬鹿たちのバリエーションとトロワに村人も混ざっての群舞へ。皆うまいけれど、もっと回を重ねたり、あるいはKの腕自慢たちが踊ったら、さらに迫力が出るだろう、と思ったのは内緒。

場面が館に変わり、落ち込む野獣のバリエーション。ここで彼は膝を落とす。そこへベルが駆け戻るが、再会を喜ぶ間もなく村人たちが押し寄せ、サルや鳥も駆けつけての混戦に。サルと鳥、意外と強い。

村人は追い払われ、野獣と3馬鹿との一騎打ちに。野獣はナイフで刺されて重傷を負うが、勝ち誇るリーダーの背中に渾身の爪を立てる。深手を負って階段の向こうに落ちるリーダー、力尽きる野獣、駆け寄るベル。

介抱されると痛そうだけど意外と元気な野獣とベルのPDD。そこへ這い上ってきたリーダーが背後から銃弾を1発撃ち、ふたたび階段の向こうに落ちる。野獣はしぶとい相手にとどめを刺そうと階段を這い上るが、彼もまたそのまま階段の途中で動かなくなる。野獣にすがり慟哭するベル。その様子は「ロミジュリ」のラストを想起させる。

サルたちが駆け寄り、隊長がベルを引きはがす間に他のサルたちが大道具を半回転。すると野獣は人間に戻り、立ち上がる。ベルは呆気にとられるが、すぐに笑顔で駆け寄る。元野獣も嬉しそうに階段を駆け下り、抱き合うところでリフトに入るのはやはりバレエ。(笑) 祝福するように薔薇の花びらが舞う。

PDDのあと、キスして暗転。

明るくなると、サルや鳥も人間に戻り、なぜかお父さんもいて、うしろでは3馬鹿リーダーが女性を追いかけまわしている場面でおしまい。


さすがに初演、それも公演1回だけでは、まだ踊りがぎこちない人もいるし、群舞も条件を思えば揃っている方だが、躍り込んだらさらによくなるだろう。

しかしバレエ団の立ち位置を考えると、次に観られるのはいつになるかわからないし、主役も同じとは限らない。

とはいえ、コミカルかつ家族で気軽に楽しめるこの作品、埋もれさせてしまうには惜しい。いっそのこと新国が上演権を買い、必要なら都改訂版として定期的に上演してほしいものだ。

*なお、使用曲については後日追記の予定。

**長くなったので別の日記にしました。
https://mixi.jp/home.pl#!/diary/3210641/1979818407
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