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2020年08月16日07:47

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週記508 オリンピックの花火

 2020年7月24日の晩、国中が新型感染症でstay homeしている中、僕はパソコンで絵を書いている彼女の後ろで明日のプロポーズの段取りを確認していた。

遠距離で滅多に会えないから会うときには色々なイベントを計画していた僕らだったが、感染拡大の最中であることもあり、今回は出来るだけ外出は控えるようにしたのだ。

外は先ほどまで雨が降っていたが、今は止んで、濡れた路面を走るタイヤがその名残を響かせていた。

「雷の音?」

 手元に集中していた僕は彼女がそう言ったのを聞いて窓の外に目を向けた。

「雨は降っていないみたいだけど……、あっ! 花火が上がっているんだ!」僕は叫んだ。

直接は見えなかったが、斜め向かいの窓に音に合わせて明るい光が反射するのが見えた。

「見に行こう!」

それまで絵を書いていた彼女が椅子から飛び降りてクローゼットにかけてあった白いワンピースを驚くほど素早く着るとそう言った。

 僕らは着の身着のままで汗ばむのにも関わらず手を繋いだまま夜の街を走っていた。

花火の音は聞こえるが背の高い建物のせいで全然見えなかった。

5分くらい走ったところで歩道橋の近くで空を見上げている人が数人いた。

「あそこだ!」

そこに着いたとき、大きな花火がバーンと空に広がったのが見えた。

花火はそれきり上らなかった。

 後で調べたことだが7月24日はオリンピックの開会式予定日だったらしい。

感染症拡大でオリンピック自体は延期になったが、その名残として全国で事前発表なく午後8時から数分だけ打ち上げられたものらしい。

オリンピックに向けて1000日前から準備していた人たちのニュースを思い出した。

連休の後、帰りの長距離列車に揺られながら、あの花火は本当は咲くはずだったその人たちの努力と情熱の美しさを代弁するものだったのかもしれない、と僕は一人回想した。

以上

【最近のComic】
・ミステリと言うなかれ
 以前から面白いという噂は聞いていましたが、漫画喫茶に行く機会があったので3巻まで読んできました。主人公の整(ととのう)はどこか私の知り合いの面影のある人物で、いろいろな物事に口を挟んで物語の登場人物たちを諭して行く姿が印象的な作品でした。子供と大人、男と女、若者と老人、それぞれが持つ様々なパラダイムの欠陥を言葉巧みに浮き彫りにしていくのは、読んでいて面白いものでした。続きの巻も読んでいきたいです。

【最近のGratitude】
・Meal with girlfriend
 For a long time, I have eaten meal alone. Until recent days, I don’t feel anything about it, but now I notice that I feel happy eat something with her much more than alone.
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