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2019年12月07日05:53

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もっと救いのある話だと思っていたのに、キツすぎる。イザベル・コイシェ監督「マイ・ブックショップ」(2018)。

2年前にAFMでみて、鮮やかな色彩感覚と音響に感心した作品ですが、今回DVDで見直すと、こんなキツい話だったっけと残念至極でした。今年の3月に劇場公開したのに、そのとき駆けつけなかった“報い”かも。素材がデジタル化されてから、これほどの落差を感じたのは初めてです。

もちろん2年前に書いたとおり、AFMに行って最初に見た作品ですから、そのプラス要素が大きかったと思います。でも、そのとき見た画面は、もっと鮮やかな色彩にあふれていた気がしたのです。そして音響効果の素晴らしさにも感心したのですが、今回のDVD再生ではそれが感じられない。

1959年のイギリス、東アングリアの寒村が舞台です(ロンドンの北東部にある海辺ですね)。小さな港町に思えますが、ナボコフの「ロリータ」を250冊も仕入れて売れるわけですから、それなりの都会なのかも。戦争寡婦のフローレンス(エミリー・モーティマー)が、空き家になっていた“オールドハウス”を買い取り本屋を開きますが、町の有力者ガマート夫人(パトリシア・クラークソン)に邪魔される、という展開です。

あの時代の因習に固執するガマート夫人たち支配階級の“本心”がよく見えなかったわけです。前回見たときはそんなことよりも、本に魅入られて店を開くフローレンスのうきうきとした雰囲気が楽しく、それを手伝う少女クリスティン(オナー・ニーフシー)とのやりとりなどが楽しかったのですが、今回は陰湿なガマート夫人の圧力が前面に出て、息苦しいほどキツく感じました。

特典映像でパトリシア・クラークソンが登場して、“監督がすばらしかった”なんて発言していると、何をしゃあしゃあと抜かしておるかと殴りかかりたくなる。ビル・ナイもこんなに“世捨て人”だったっけという気分です。すべては画面の色調の問題だと感じました。

つまり前回見たときは、豊かなブリティッシュ・グリーンに代表される優しい色彩が、見ている僕を包み込んだと思う。そしてSEの際立った迫力と共に、フローレンスの本の世界への愛着がたまらなく愛しかった。その感覚が今回は感じられなかったわけです。←フィルム時代なら、焼きつけの不首尾だと思うけどデジタルでこんなことあるのか?

それと、前回気に入っていたフローレンスの仕草、オールドハウスの壁を触って夫の思い出にひたるシーンがなかった気がしました。レイ・ブラッドベリに対するオマージュも、なんか表面的に思えたし。

やはり日本語字幕が付いて物語の意味だけが前面に出たせいかな、と思います。その字幕で、本来“運転資金がショートした”とするべきところを、“資本金が減った”なんて出されたからたまりません。経理の初歩的な言葉くらいチェックしてほしいな。銀行家のセリフですからね。←この銀行家がポテトヘッドと呼ばれていて、前回も「トイ・ストーリー」のポテトヘッドを思い浮かべたのですが、英語では単に“ボケナス(木瓜茄子)”という言葉らしい。

とりあえず、少女を演じたオナー・ニーフシーの今後に期待して、今回は腹の虫を治めておきたいと思います。
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