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2009年06月21日20:40

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涙のある句

先日の朝日新聞の「天声人語」(2009.6.7)にて、鶴彬の生涯をたどる映画の話題の続きで、井上信子の川柳が紹介されていた。

 国境を知らぬ草の実こぼれ合ひ  井上信子

「日中戦争が泥沼化し、日米が開戦する前年」に70代で詠んだ句だそうだ。ジョン・レノンの「イマジン」を先取りしたような句と天声人語子は書いているが、僕は、いつぞやも書いたが「イマジン」はあまり好きではない。ジョンはあまりにも言葉に頼り、あまりにも「理」に頼ったという印象が強い。しかしこの井上信子の句は、とってもいい。ジョンもこのぐらいで言い留めておけば良かったんだよ。ホロリとしてしまうじゃないか。

昨日の「俳句王国」(NHK・BS2)にて、印象に残った句。

 蛇衣を脱ぐとききつと泣いてゐる  沼田美山

「蛇の衣」という兼題での一句。つい最近知ったのだが、「兼題」は宿題、「席題」はその場で題を出されて詠む句だそうだ。短歌ではこういう言い方はしないが、わたくし、「席題」の歌は苦手なので極力避けております。^^;
番組の句会では1点だけ入った句だったが、何やら僕はツボにはまってしまった。たぶん、俳諧の精神からは遠く、あまりに涙の多い句なのだろうと思う。上の「国境を・・・」の川柳もまたしかりかと思う。

こういう川柳や俳句に共感しているうちは、まだまだ短歌に留まってうじらうじらと詠み続けるしかないのだろうなあ、と思う。

伯母の渡辺あや、24年前に他界したが、俳人であった。伯母が存命の頃、僕は俳句には特段の興味関心がなく、伯母の家を訪ねると「こんな句ができたんだけどどう思う?」などと言って批評を請われるので、ちょっと困っていた。伯母の死後、師匠だった石田踏花氏の編纂で遺句集『水引草』が刊行された。今読み返してみても難しい句が多いのだが、僕はやはり涙のある句に惹かれてしまう。

 祖母在し優しかりしよ赤のまゝ  渡辺あや
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