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2024年01月19日08:03

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続・「き」は「た」の代用品?

一昨年の11月のこの欄に「『き』は『た』の代用品?」という記事を書いたことがあった(*)。

(*)https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1983777058&owner_id=20556102

その記事のコメント欄にてゆめのひとさんがYouTubeの「ゆる言語学ラジオ」というのを教えてくださったのだが、その「ゆる言語学ラジオ」で「た」についてなんと5時間50分余にわたって喋ってくださっている動画がある(**)。

(**)https://www.youtube.com/watch?v=Qnb7Bo7AWhI

なるほど「文法」についての先端の議論はこんなことになっているのか、へぇ〜〜! とまことに興味深く視聴した。一昨年11月の記事で引いた「軸の俳句」の秋尾主宰さまは「単純な学校文法(規範文法)」と「科学的な文法」とがある、というようなことを言われていたのだが、そんなのんきなことをぐずぐず言ってる場合じゃないよ! ということがこの「ゆる言語学ラジオ」を視聴すれば直ちにわかる。

で、上記の5時間50分余にわたるレクチャーの中で、文語の「き」「けり」「つ」「ぬ」「たり」「り」が口語では「た」に収束したのではないか、と論じられているくだりがあって(2時間42分〜44分あたり)、「『き』は『た』の代用品」などとは言えないことはすっきりとよくわかった。

一昨年11月の記事にて、故・酒井佑子さんがある歌会(たぶん「短歌人」の東京歌会あるいは青の会[@横浜]だったと思う)に出された一首について「最近はこの歌のように『た』の代用として『き』を使っている歌が多くて、かつてはいちいち文句を言っていましたが今はもうあきらめました」と言われていたことを記して、「あきらめましたと言われながらあきらめてはいないから、そんなふうに言われたのだろう」と書いたのだった。

先日の記事(***)でも記したように、酒井さんは若き日に短歌の作法を「アララギ」で叩き込まれた方で、その後独自の文体を獲得された歌人なのだが、文法や仮名遣いに関しては「アララギ」の流儀をそのまま保持されていたのではないかと思う。仮名遣いに関して言えば、例えば名詞の「向こう」の旧仮名は「向かふ」ではなく「向かう」でなければならぬ、というのが「アララギ」流で、実は両表記にはそれぞれ根拠のある説があるのだが(****)、この件に関しては東京歌会で故・蒔田さくら子さんが「向かう」説を譲らず、議論になったこともあった。

(***)https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1986760165&owner_id=20556102
(****)https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1954716942&owner_id=20556102

「た」の代用として「き」を使うことへの疑義を提起してくださるような先達の方がおられる歌会の場はやはり貴重だと思う。酒井さんが逝かれて、われわれは貴重な先達の方を失ってしまった……、というようなことも改めて思ったのだった。


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