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2023年12月12日20:55

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12/7 もうひとつの19世紀―ブーグロー、ミレイとアカデミーの画家たち@国立西洋美術館版画素描展示室

西洋絵画鑑賞に目覚めたのは、小学〜中学生の頃だった。印象派である。だから当然それ以前の旧然たるアカデミズム作品には興味がなかった。高校大学時代は、カッコつけたかったのか、逆に印象派なんて〜とキレイな絵を否定して、フォービズムなどに走った。そして、今。十分に歳をとり、少しは丸くなって(?)、美しい絵、可愛い絵が好き、と臆面なく言えるようになった(笑)

https://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2023painters.html
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19世紀後半のフランスおよびイギリス美術と聞いて、みなさんが思い描くのは一体どんな絵画でしょうか。フランスにおけるレアリスムや印象派、あるいはイギリスのラファエル前派や唯美主義による作品が浮かんだ方も少なくないでしょう。しかし、今日エポックメーカーとして俎上にあがる芸術運動と画家たちの背後には、常にアカデミー画家たちがおり、彼らこそが当時の画壇の主流を占め、美術における規範を体現していました。
かれらは、それぞれの国において最も権威ある美術教育の殿堂であったアカデミー――1648年、フランスで創立された王立絵画彫刻アカデミーと1768年にイギリスで誕生したロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ――に属し、古典主義的な芸術様式を遵守した画家たちです。
しかしアカデミーの権威と伝統は、社会の急速な近代化によって揺らぎ、19世紀後半になるとアカデミスムは衰退の危機をむかえます。そんななか、アカデミーで地歩を固めた画家たちは時代の変容や新たな画派の登場に決して無関心ではありませんでした。むしろ変化に富んだ時代において、需要に応じて主題や様式、媒体を変容し制作を行いながら、アカデミーの支柱としてその伝統と歴史を後世に継承しようと努めたのです。本小企画展では、ウィリアム・アドルフ・ブーグロー(1825-1905)やジョン・エヴァレット・ミレイ(1829-1896)をはじめとする両国のアカデミー画家たちのキャリアを辿り、多様化した主題やモティーフ、モデルに焦点をあてることで、その柔軟かつ戦略的な姿勢と彼らが率いた「もうひとつの19世紀」を浮き彫りにします。


第1章 多様化する主題と活動ー古代と近代のあわいで

ウイリアム・アドレフ・ブーグロー《クピトの懲罰》《音楽》《武器の返却を懇願するクピド》
1850年ローマ賞受賞したブーグローはローマへ留学。帰国後描いたこれらは、個人邸宅の装飾に請け負ったものである。硬質で静的な人物像は、古代ローマの絵画の影響を受けたものか。
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ウイリアム・アドレフ・ブーグロー《純潔》
聖母子像を想起させるが、宗教的要素を排除している。「ファンタジー・ペインティング」に属する作例。甘美♡
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ラファエル・コラン《詩》《楽》
黒田清輝がいかに忠実に師コランに学んだか、そう思えるような作品。アカデミックな表現方法から脱した、日本で「外光派」と呼ばれる明るい色彩、粗めのタッチ。
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第2章 肖像画ー私的で親密な記憶

レオン・ボナ《ド・ラ・パヌーズ子爵夫人の肖像》
初期のスペイン画派の影響がみられるこの作品を目に前にして、やはり品格ある肖像画はアカデミズム画家が勝るなぁ、とも思う。
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エミール=オーギュスト・カロリュス=デュラン《母と子(フェドー夫人と子供たち)
常設展でもいつもうっとりする作品。ちょっと思索的な様子のお姉ちゃんとママに甘える弟くんの対比が微笑ましく、親密な感じの肖像画。画風に、レアリスムや印象派を取り入れている、と。
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第3章 ブーグローとミレイー子どもへのまなざし

子どもの絵というと2014年にみた森アーツセンターギャラリーの「こども展〜名画にみるこどもと画家の絆」展を思い出す。それまで、子どもは「小さな大人」という捉え方をしていたが、特有の考え方や感性を持つ存在であるとして、画題として取り上げられるようになった、という話であった。

ブーグローは「ファンタジー・ペインティング」や牧歌的な作品の中で、ミレイは「ファンシー・ピクチャー」で、それぞれ愛らしい子供を描いている。こうした作品は、市場価値も高かったようで、画家も大いにそれを意識して制作している。

ウイリアム・アドレフ・ブーグロー《姉弟》
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ウイリアム・アドレフ・ブーグロー《小川のほとり》
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ウイリアム・アドレフ・ブーグロー《少女》
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ジョン・エヴァレット・ミレイ《あひるの子》
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ジョン・エヴァレット・ミレイ《狼の巣穴》
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これら作品は常設展で人気。ブーグローはばりばりアカデミズムの画家で、ミレイはラファエル前派から生活のため肖像画やファンシーピクチャーに転向。
印象派から始まった絵画革命を起こした画家たちはもちろん美術史上大いなる評価をうけているが、こうした市場に敏感だった画家も、その卓抜した技量があったればこそ、なのだ。甘美なものは見ていて気持ち良い。

2024年2月12日まで

アルバムあります
https://photo.mixi.jp/view_album.pl?album_id=500000121004846&owner_id=2083345

常設展で気になった作品を少しご紹介

スケッジャ(1406年ー1486年)《スザンナ伝》
いつも面白いなと思ってみていた作品、これまでご紹介していなかったので。
旧約聖書に登場するヘブライ人の人妻スザンナの話。ここでは「長老たちから言い寄られ不倫の濡れ衣を着せられたスザンナは、法廷で自らの無実を証明し、嘘をついた長老たちは連行され石打ちの刑に処されている」図。
日本の絵巻物と同様「異時同図」になっている。
これはカッソーネという、嫁入り道具の長持ちの前面を飾る装飾画。つまりは、貞操の見本のようなスザンナの話を嫁入り道具に込めたわけね。
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レアンドロ・バッサーノ《最後の審判》1595年ー96年ごろ
これもいつも見入ってしまう絵。額縁もすごいんだが、悪魔と地獄に落ちる人もすごい。悪魔が口から吐き出しているのは火?やまと絵展で地獄草紙をみたばかりなので、今回はここに目がいく。
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フランシスコ・デ・スルバラン《聖ドミニクス》1626−27年
新収蔵品として披露された時から気になっていた。松明を咥える犬の牙が凶暴なのと首輪がパンク風。
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ギュスターヴ・ドレ《ラ・シエスタ、スペインの思い出》1868年頃
貧しいロマの人々と子供たち。1840年代からフランスでスペイン趣味の流行が始まったらしい。
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ギュスターヴ・ドレ《松の木々》1850年
そのドレの新収蔵作品
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ホアキン・ソローリャ《水飲み壺》1904年
新収蔵作品。スペインの国民的画家。明るい光、粗いタッチ、愛らしい光景が素敵。水飲み壺は、素焼きの陶器なので、揮発により中の水が冷たく保たれる。ゴクゴクと喉の音が聞こえてきそう。
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アリスティード・マイヨール《花の冠》1889年
初展示作品。マイヨールといえば彫刻の方を思い浮かべる。静謐で平面的な作品は近代日本画のよう。
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アウグスト・ストリンドベリ《インフェルノ(地獄)》1901年
新収蔵作品。前回見た時もとても不穏で怖い絵だと思った。「洞窟らしき開口部の奥には嵐が混沌と吹き荒れている」そうだ。制作当時、画家自身結婚生活破綻の危機にあったらしい。
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パブロ・ピカソ《小さな丸帽子を被って座る女性》1942年
初展示作品。モデルは、ドラ・マールかしら。この作品にも「井内コレクションより委託」とある。
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