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2020年09月08日06:02

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犬を主役にしたこんなファンタジーに、手もなくひねられるアホな自分を嘆きつつ、一方で誇らしく思う。サイモン・カーティス監督「エンツォ レーサーになりたかった犬とある家族の物語」(2019)。

はい、トップビリングの俳優名はケビン・コスナーです。でも、彼は画面に現れません。レーサーのデニー(マイロ・ヴェンティミグリア)の愛犬エンツォの声を担当します。そして、そのエンツォがオスなのに、足を上げずに小便をすることから、僕は“?”となり、ずっと牝犬じゃないのか?と思ってましたが、そんなの関係ないというファミリー・ドラマでした。

エンツォという名前を犬につけるということは、フェラーリが好きなのだなと分かるわけで、そこが分からない方はこの映画に関心を持たなくてもいいんじゃないでしょうか。そして原題が「The Art of Racing in the Rain(雨天レースの芸術)」で、デニーが1984年のF1モナコGPレースのテレビ番組を見ていることだけで、僕はこの映画を見続けることを決めました。

1984年のモナコGPのビデオを、先日家族で楽しんだ直後だったんです。F1に参戦したばかりのセナがロータスに移籍し、ジョン・プレイヤー・スペシャルの黒地に金色のカラーリング車を駆って、初の年間チャンピオンをめざす先輩(そして宿敵)のプロストに挑んだ、伝説的なレースです。

このレースは雨のために中断、チェッカーフラッグを受けたのはセナでしたが、規則により一周前にトップだったプロストが1位になります。しかしレース時間が規定を越えていなかったので獲得ポイントは通常レースの半分となり、その結果プロストは、0.5点の差で年間チャンピオンをニキ・ラウダに奪われます。

つまり、あと何周かレースを続けていたらモナコの順位が2位でも得点が6点となり、半分の4.5点より1.5点多くなったはずなので、年間チャンピオンはプロストだったわけです。それを知っていたらプロストはレースを続けたかもしれない。←終盤にラウダが連続1位を獲るなんて誰も思わなかったでしょうけどね。

そんな伝説のレースを見ているデニーは、雨天レースでも果敢に勝負を挑んでいるレーサーだと印象付けられます。そのデニーが子犬を手に入れてエンツォと名付け、将来F1でフェラーリに乗ることを夢みる話です。しかし、恋人(アマンダ・セイフライド)ができて結婚、娘ができて、と家族劇が中心になります。

冒頭のシーンが、晩年のエンツォだということを明確に認識していれば、もっと乗れた話かもしれないけど、僕にはオスメス問題が浮上してそれどころではありませんでした。さらに、アマンダ・セイフライド扮する妻の実家が、“レーサーなんて危険な職業”とステロタイプな敵役なので、いささかげんなりしました。でも母親がキャシー・ベイカーだから、展開は読めますけどね。

デニーは、さらにF1のテレビ番組を見続けるわけです。僕にとってはリモート出勤の息子と、86年までのF1レジェンド番組を見終わったところというタイムリーさもありました。アメリカ人のレーサーがF1で活躍した例は少ないと知っていても、そしてデイトナなどでくすぶっている子持ちのデニーにフェラーリからのオファーなんかないだろという現実的な考えは健在ですが、犬の声がコスナーやねんで、ええやんかそれぐらい、と見続けました。

そしたら娘の養育権問題の前後に、うまくセナの事故死の物語を使うじゃありませんか。レーサーの妻役が“セイフライド”なのも、よくできた冗談だと思う。←この表記を使い続けてきたかいがありました。そしてそして、セイフライド扮するイヴがモンゴルの言い伝えをエンツォに語るのです。モンゴルで犬が死ぬと、人間に生まれ変わるのだと。

次の段落からはネタバレになりますから、未見の方は読まないでください。
とはいえ知らずに見ていても、すんなり理解する人は少ないと思うけど。

つまりその言い伝えがラストでうまく使われます。実際にレーサーとして出てくるのではありません。フェラーリのレーサーとなったデニーに、レーサーを目指すエンツォ少年が逢いに来るわけです。そしてデニーは、“エンツォという親友がいたんだ”と語る。ええ話やないですか。雨の中のセナのレース運びを堪能している僕に、とてもタイムリーな内容でした。

さらに、その少年を連れてくる父親役が、なんとジャンカルロ・フィジケラ(写真3に今昔写真)で、エンドクレジットで“ヒムセルフ”と出ます。実際のフィジケラには2人の息子がいて、エンツォという名前ではありませんが、本物のF1レーサーで最後はフェラーリのドライバーだったフィジケラが画面に出てくるところが、なんともうれしいわけです。

ということで、この甘々な家族ドラマに手もなくひねられてしまいました。サイモン・カーティスなんていう知らん監督の映画ですけど、この映画は僕にとって大事な作品となりました。何?エリザベス・マクガヴァンの旦那? おもろないなぁ。知らん監督のくせにけっこうな女優をつかまえやがって。とりあえず、この映画に免じて僕の暗殺リストに入れるのは勘弁しといたるわ。

ということで、F1やアイルトン・セナの雨天レースに思い入れの少ない方には向きませんが、僕にとっては忘れられない作品となりました。うちの息子にも見せたいけど、F1シーンだけならレースビデオを見てるから、こんな劇映画は見んやろなぁ。←どうでもええ話ですけど。
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