散歩途上の拾い物

　午後3時ちょっと前、ラズリと散歩に出る。本日2回目。
　1月も半ばを過ぎたというのに、「鎌倉七福神」のビニール袋を下げて歩いている観光客が多い。うちの近所には7つのうちの4社がある。20年くらい前までは「七福神」信仰なんてごく限られた一部の「マニア」以外知らなかったような気もする。
　だらだらと風の向くまま歩いていると、カメラを首からぶら下げる様子が際立つ20数名の集団とすれ違った。老年者が多いことと、カメラは高価そうなデジタル一眼であることが見て取れることから、写真サークルのかたがただろう。
　集団とすれ違って数秒後、「あら〜、いいじゃない！」「ホントホント！」という嬌声が聞こえた。ラズリが立ち止まって道端の雑草の臭いを嗅いでいたので、しばしその場に立ち止まっていると、「東京じゃ葉っぱがくしゃっと萎れているのよね」「鎌倉は温暖だからこんなにきれいな落葉になる」という会話が聞こえた。カシャ、カシャっとシャッター音もする。振り返って見てみると、数人がカメラを手のひらに包んで道の隅っこを撮影していた。
　1分ほどで集団は去って行ったので、引き返して撮影していた被写体を見てみた。
　落葉したもみじだった。確かに縮まっていない紅葉で、東京のカメラサークルの人たちは（年寄りのくせに）目がいいなぁ、と感心した。私は下を向いて毎日このあたりを歩いているのに、まったく目に入らなかった。落葉を手に取ってみると、これがすこぶる美しい。なので、折れ曲がらないよう細心の注意を払って、ジャケットのポケットに入れ、散歩から帰ってすぐにそっと取り出し、テーブルの上に置いた。
　しばらくの間、もみじの葉っぱをカフェテーブルの上に置いたままにしておこう。励みになる。