ボロ負けだった。昨年の雪辱を果たすべく臨んだ2年連続でのファイナル。それは無残に打ち砕かれた。
前半は流経が試合を支配した。ボール保持も流経が圧倒。そしてコーナーキックからの関川君のヘッドで先制。流経にとっては想定通りの展開だった。大応援団を繰り出してきた流経柏側のスタンドは大いに盛り上がる。
今日は12時半にさいたまスタジアムに着いた。これまで来た高校サッカーの決勝では一番早い。それでもいつも座るバックスタンドの自由席は流経の応援団で埋め尽くされていた。席を探す間にもう13時を過ぎた。ゴールラインの外ながらなんとか席を確保した。2階席もどんどん埋まっている。これから移動しても無駄だと判断してそこを観戦場所に決めた。
試合後半の途中で発表された観客数は54194人だった。甲子園ですら4万5千は入らない。国立でやっていた時にはこれを超える観客数を記録したことはあるが、ボクが見る高校サッカーではもちろんこの人数は最高記録。
流経側のゴール外のバックスタンドも流経の先制に期待が高まる。観衆も流経を後押しする。そして山田は反則が多い。流経の連続攻撃にどうしても反則をしてしまう。もう流経の流れだと多くの人が思っただろう。
だが、浅いディフェンスラインを敷く流経に対して山田はドリブルに長け、キープをしてからのスルーパスを狙っていた。右サイドへオフサイドぎりぎりで出されたボールを受けたワントップの佐々木君がゴールキーバーと1対1。しかししっかり左サイドをフリーで駆け込んでいた檀崎君へパスを送りゴールへ流し込まれた。
同点、そして後半へ・・・
試合はがらりと変わった。組織の流経に対して山田は個人技で勝負してきた。ボールを持つとドリブルで勝負を仕掛ける。ポジションを取っていてもドリブルで抜かれるとスペースが生まれる。そして圧巻はバスケス選手のドリブルだった。右サイドを抜けた彼は2人のDFを相手に3度の切り返しで振り切るとマイナスのクロスを繰り出す。
相手DFの股を抜いたグラウンダーのクロスは流経センターバックが執念で差し出した脚も届かず檀崎君のもとへ・・・・
右足で巻いたボールはゴール右に突き刺さった。
だが、もうこの段階から流経はセカンドボールをほとんど拾えずチャンスはまったくつくれなかった。クリアするのが精一杯。ほとんどのボールをキープされた。
そこで流経はパワープレーに出た。DFの関川君をトップに張らせた。前に放り込んでキープ。
関川君が前線で受けて相手DFに当ててゴールラインを割った。コーナーキックだ。関川君は右手で小さくガッツポーズを作った。
そして、先制点と同じようにフォアサイドから頭で狙ったが若干タイミングが合わずゴールの上を超えていった。
そして、途中出場の小松君が3点目を入れて試合は決まった。前係になる流経の守備をあざ笑うようにオフサイドぎりぎりのバスが出ると小松君はゴールキーバーと1対1の状況から落ち着いて決めた。完全に流経の守備は崩壊した。
2年連続の準優勝だった。試合が終わると勝った山田の選手が膝から崩れ落ちた。勝った流経はみんなが立っていた。山田にとってはそれほど流経は脅威だったのだろう。山田は死力を尽くしすべてを出しきっての優勝だった。
それでもこの大会で一番目立った選手は流経の関川君だと思う。セットプレーからは確実に頭で狙ってくる。この日も山田の守備陣は当然マークしていた。カメラのファインダーから覗くとボール前のポジション取りの競り合いは相当に厳しかった。それでもシュートまで持ち込むのは彼の力だけではない。キッカーとの息が合っていないとできない話だ。
基本的に彼はゴールから離れていく動きでボールを受け頭に合わせるというパターンが多かったように思う。キッカーの確実なアシストとそれに応える高いジャンプ力からのシュート。もちろんそれはDFとしても有能だ。
だが、今日の山田はドリブルで仕掛けグラウンダーのパスを多用した。簡単にボールを放り込んでくる戦術ではなかった。したがって関川君のDFとしての力を半減させた。
昨年4位の札幌に入団する檀崎君。3位の鹿島に入る関川君。彼らはこれからも戦い続けるはずだ。試合こそ完敗だった地元柏の流経。しかしこれからのサッカー界を背負う二人の対決にボクは心が躍った。
2019年1月14日 第97回全国高校サッカー 決勝(於 さいたまスタジアム2002)
青森山田3−1流通経済大付柏(2年ぶり2回目の優勝)
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