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2016年01月01日01:30

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夜中のデン・ハーグHS駅



駅というのはそこから出発したり、そこに着いたり、また乗り換えたりするのに使う通過点であり、だから駅はその機能に見合った形に作られる。 我々は自分の目的に至る為にそこに行き、着き、漫然と、若しくはせかせかとそこを通過するのだが時には待ち時間中に列車が来るまでそこにいなければならないことになる。 そんな折に眺め廻していると面白いことに気付くことがある。 それもあまり大したことではないのだが、長年住んでいるこの国のあちこちでそんな無聊をかこっている間に漫然と眺めていて今までに観た様々な景色を思い出しそれらとも比べて、へえ、とかなるほど、と納得したことがある。 

12月5日に午後からハーグに出て夜中に帰ることになった。 ハーグには2つ駅があって、それはハーグ中央駅とホランドスポーと呼ばれるデン・ハーグHS駅の2つだ。 2つの駅の間は2kmもないほどで二つは繋がっているので乗ってもほんの2,3分でしかない。 ホランドスポー駅はパリ北駅から来る電車がアムステルダム駅まで行く途中の通過駅で、建物には1888年と浮き彫りにされた石が埋められているのでこれは明治の建物である。 こんな明治の建物の駅をいろいろあちこち見て来て同じような時代には同じような建築スタイルだと分かるようになるけれどそれでも少しづつ違っていて面白いのだが、同じ時代の建物でも何か決定的に違うと漠然と思っていたことがあった。 それはスタイルでもなく何かその雰囲気の違いだ。 それがここに来てその謎が解けた。

ハーグに2つ駅があると書いたが古さで言えばホランドスポー駅の方が古く中央駅の方が新しい。 大体が古い建物のほうが新しいスタイルのものより落ち着くのだがどうもあちこちの駅をいろいろと経験しているとそれがあながちそうではないように感じていたものがここにきて、その落ち着く、落ち着かないの謎が解けた。 

ヨーロッパで産業革命が勢いを見せ、鉄は国家なりと言われ始めた頃、鉄道が敷かれ、大量輸送の需要に応えるため鉄でで巨大な枠組みをつくり天井を載せプラットホーム内にレンガの待合所なり事務所の建物をたてる形式は当時のものだ。 40年ほど前に慌ただしく東京駅を一度だけ通過したことがあるけれど、あの建物もアムステルダム中央駅を模したものだと言われているものの今では駅自体が当時に比べて巨大なもとのなっているので当時の建物は駅の顔としての部分だけを残してあとはモダンなものに全く様変わりしているのではないか。 けれどスケールの小さいベルギーやオランダの駅ではまだ当時の面影を残しているものがある。

ウィキペディア; デン・ハーグHS駅の項

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%82%B0HS%E9%A7%85 


夜中にこの駅のプラットホームをうろうろしていてふと分かったのは、始発・終着駅と通過駅の違いがそう感じさせるのだと分かった。 始発駅なら駅に来て、さて乗るぞと駅舎を通ってプラットホームに入り、終着駅ならああやっと着いたとプラットホームに降りたちそこから駅舎に入るということになるのだが、始発・終着駅でなければ駅舎に来ても両側に線路が分かれているのでそこでどちらに行くか選ぶことになりそうなると注意が左右に向かう、ということになるのだが、そこに気分的な差がでるのだろうと思った。 そこでは古く落ち着いた建物であっても多少のゆったり感は起こってもけれどどこか落ち着かない感が漂うだろう。 だからこれがここデン・ハーグHS駅で感じることなのだと分かった。 それが近代的な建物で始まり終わるハーグ中央駅で感じる高揚感との違いなのだろう。

マルセーユ、パリの各始発駅、ロンドン、ミラノ、イスタンブールやプラハなどいろいろなそういう駅を経験しているけれど印象に残るのはベルギーのアントワープ駅だ。 駅舎の雰囲気が巨大でもなくそこそこで飾りがクラシックで落ち着く風だ。 けれど自分には幼少の頃から今でも特別な感慨を催させるのは南海本線難波駅なのだろうと思う。 田舎からワクワクしながら大きな町に来た高揚感とともにホームに降り立ちぞろぞろと改札口に向かう人に混ざり歩いたり、一日の終わりには疲れとともに改札口を通り車止めに向かいそこで息を一つついては発車点検の車掌を横目に通り越し、ホームをゆっくり歩いて今の時期暖房でむっとした車内に入る。 ターミナル駅にはそんな感慨が沈殿している。

大晦日の宵あちこちで花火が上がっている一年の終わり際してそんなとりとめもないことを想ったのだった。
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