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日記一覧
- 本棚146『イザベラ·バードの「日本奥地紀行」を読む』宮本常一(平凡社ライブラリー)
- 2019年05月03日20:49
明治の黎明期に東北、更には蝦夷地まで旅をしたイザベラ·バードは、冷静で客観的な眼と、愛情を持った温かな眼で、当時の日本人、日本文化を書き記した。 本書では、日本列島津々浦々をくまなく歩き尽くした民俗学者宮本常一の該博な生きた知識によっ
- 本棚145『夏の砦』辻邦生(文春文庫)
- 2019年05月01日23:16
織物工芸を学ぶため北欧にやってきた支倉冬子は、北の海の孤島へヨット周航に出たまま消息を絶ってしまう。 語り手である「私」が冬子が遺した手紙や日記を整理するなか、自身の過去に対峙し、生や美を考え抜こうとする支倉冬子という一つの精神の遍歴が次
- 本棚144『現代語訳 徒然草』嵐山光三郎(岩波現代文庫)
- 2019年04月30日06:55
名誉や利益などの俗事に惑わされずに、「心しずかな暇」を楽しむ兼好法師に相応しい、肩肘張らない柔らかな語り口の現代語訳。それぞれの訳の後に、「かげの声」という兼好の本音、心の声のような補足が付いているのが面白い。 全体を通して徒然草を読むと
- 本棚143『古典を楽しむ 私の日本文学』ドナルド·キーン(朝日新聞社)
- 2019年04月28日09:33
俳句の翻訳の難しさや工夫、『おくのほそ道』の虚構性と魅力、世界文学のなかの近松門左衛門など、ドナルド·キーン氏が日本各地で行った日本の古典文学の講演集。 どのテーマでも外国の文学との比較の視点を盛り込み、余情の文学、本歌取りの思想
- 本棚142『螢川』宮本輝(角川文庫)
- 2019年04月24日09:46
「降るのよ、螢が。見たことなかろう？螢の群れよ。群れっちゅうより、塊りっちゅうほうがええがや。···大雪みたいに、右に左に螢が降るがや。」 四月の大雪に出逢った年は、雪のように舞う絢爛たる螢の乱舞に出会えるという。 立山連峰を
- 本棚141『本のなかの旅』湯川豊(文藝春秋)
- 2019年04月22日00:20
内田百�痢�開高健、ヘミングウェイ、イザベラ·バードなど、国内外の18人の旅にまつわる本をとりあげている。 長年文藝春秋で編集者を務めた著者だけあって、それぞれの本の背景や全体像をコンパクトにまとめつつ、本の肝、読みどころを的確な引用とと
- 本棚140『二つの母国に生きて』ドナルド·キーン(朝日文庫)
- 2019年04月20日19:29
自分が生まれた国と自分を精神的に育ててくれた国。 卓抜した日本文学研究者にして、東日本大震災後に日本国籍を取得し、今年の2月に永眠したドナルド·キーン氏は「二つの母国」を生き抜いた。このエッセイ集では、海外での日本研究、日本での暮らし
- 本棚139『愛、生きる喜び』辻邦生(海竜社)
- 2019年04月16日00:20
辻邦生の小説やエッセイの断章からなるアンソロジー。愛、読書、人間の豊かさ、人生の時間といったテーマ毎に分けられた文章の連なりに触れると、「人間とは何か」、「人間は何のために生きるか」という問いかけが、作者が生涯を通じて追い求めた主題だった
- 本棚138『いいひと。』�々盒兇靴�(小学館)
- 2019年04月15日00:26
人生を決めた本、というと大げさだけれど、大きな影響を受けたのは間違いない。 北海道の大学で長距離走をしていた主人公北野優二は、大手スポーツメーカー「ライテックス」に入社する。「私の周りの人の幸せが、私自身の幸せ」と面接で言い、困っている
- 本棚137『幻の女』ウイリアム·アイリッシュ(ハヤカワ文庫)
- 2019年04月12日20:35
「夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった」という冒頭の一節から、物語の世界、黄昏時のニューヨークへと引き込まれる。 妻と口論になり街に繰り出した主人公は、偶然にバーで出会った女とレストランや観劇に行く。そして、家
- 本棚136『〈問い〉の読書術』大澤真幸(朝日新書)
- 2019年04月08日01:23
人が一生で読める本に限りがあるなか、著者は本を深く読むこと、「世界への〈問い〉が開かれ、思考が触発される」ことを重視する。 本書は歴史、経済、現代社会、科学等の多様な分野の25冊の書評集で、どの本も解答ではなく〈問い〉を与える点で共通する。
- 本棚135『不死身の特攻兵』鴻上尚史(講談社現代新書)
- 2019年04月05日21:00
十死零生と言われる特攻に9回出撃し、9回生き延びた特攻隊員の佐々木友次。 本書は92歳で亡くなる数カ月前に行った本人へのインタビューを含め、特攻の現場で何が起き、特攻に臨む若者が何を思っていたのかをリアルに描きあげている。 帰還する度に面罵
- 本棚134『中国名文選』興膳宏(岩波新書)
- 2019年04月03日09:06
「流罪という不幸も、人生の流れの中では絶対的な意味を持つものではない。幸福といい不幸といっても、所詮は相対的な価値観に過ぎず、角度を変えて眺めれば、おのずと違った意味がそこから見えてくるものだ。「赤壁の賦」から読みとれるこうした楽観精神は
- 本棚133『仰臥漫録』正岡子規(岩波文庫)
- 2019年03月31日23:25
「九月十二日···朝飯 ぬく飯三椀 佃煮 梅干 牛乳五勺紅茶入 ねじパン形菓子パン一つ 午飯 いも粥三碗 かつおのさしみ 芋 梨一つ 林檎一つ 煎餅三枚 間食···夕飯 飯一碗半 鰻の蒲焼七串 酢牡蠣 キヤベツ 梨
- 本棚132『図説 近代日本土木史』土木学会土木史研究委員会編(鹿島出版会)
- 2019年03月24日22:54
深山に威容を誇る黒部ダムを見た時、ちっぽけな人間が、こんな巨大な建造物を作り上げたことに感動を覚えたのを思い出す。 本書では、ダムや鉄道、道路、港湾、水道、都市計画など様々なインフラについて、開国後の西洋の最新土木技術を一心に取り込んでい
- 本棚131『コルシア書店の仲間たち』須賀敦子(文春文庫)
- 2019年03月23日17:56
「私のミラノは、たしかに狭かったけれども、そのなかのどの道も、だれか友人の思い出に、なにかの出来事の記憶に、しっかりと結びついている。通りの名を聞いただけで、だれかの笑い声を思い出したり、だれかの泣きそうな顔が目に浮かんだりする。」 イ
- 本棚130『アメリカ文学のレッスン』柴田元幸(講談社現代新書)
- 2019年03月20日21:14
「名前」「食べる」「勤労」などの10個のキーワードと、それにまつわる作品を紹介することで、アメリカ文学の全体像を浮かび上がらせる。 例えば、「ラジオ」というキーワード。ある作品ではラジオが、1950·60年代のアメリカという国が自信に満ちて
- 本棚129『永遠の書架にたちて』辻邦生(新潮社)
- 2019年03月16日23:09
『美しい人生の階段』『幸福までの長い距離』『美しい夏の行方』『微光の道』のように、著者の随筆のタイトルは、どれもみな芳醇な魅力を持っているけれど、この『永遠の書架にたちて』は表題の通り、本への愛情、読書の愉しみに満ちている。トーマス·
- 本棚128『続 羊の歌』加藤周一(岩波新書)
- 2019年03月14日08:57
著者の自叙伝であり、魂の遍歴である。終戦直後の焼け跡の描写は、当時の日本社会とそこに生きる人びとを活写していて、その熱量が伝わってくる。 「焼け跡の東京には、見せかけの代りに、真実があり、とりつくろった体裁の代りに、生地のままの人間の欲望
- 本棚127『幻影の明治』渡辺京二(平凡社ライブラリー)
- 2019年03月12日23:09
「歴史:ヒストリー」（history）と、「物語:ストーリー」（story）ーえてして前者は実証的ではあるが無味乾燥になり、後者は感興をそそるが正確さに欠ける。 著者の本は、「批評性を持ち、文学にも通じるような、物語的な歴史」を描きたいという言葉のとお
- 本棚126『交通政策入門』衛藤卓也他(同文舘出版)
- 2019年03月09日20:30
経済学の視点を中心に、交通政策の背景や主体、手段、事例などが万遍なくまとめられている。特に、バスやタクシー、航空といった乗り物毎に規制緩和の歴史や課題が丁寧に整理されていて参考になる。 交通とまちづくりを一体的に進め、暮らしやすいまちの実
- 本棚125『快楽としての読書 海外篇』丸谷才一(ちくま文庫)
- 2019年03月07日00:43
毎日新聞の書評欄を改革し、イギリスのような重厚な書評文化を日本に根付かせた著者の書評集だけあって、紹介されるどの本も手にしたい心持ちになる。 書評114選の前に置かれた、「イギリス書評の藝と風格について」では、著者の書評観が、コンパクトに
- 本棚124『加藤周一自選集10 1999-2008』鷲巣力編(岩波書店)
- 2019年03月05日00:09
加藤周一は、「知の巨人」という言葉が相応しいと思う。東大医学部で医学を修めた後、文学や芸術、社会の評論への道に進む。「非専門化を専門とすることにした」と自身で言うように、論ずる射程は、文学をはじめとして、絵画、映画、音楽、政治·社会時
- 本棚123『水のなまえ』高橋順子(白水社)
- 2019年03月01日20:04
「あめゆじゆとてちてけんじや」（あめ雪取ってきてください）。宮沢賢治は「永訣の朝」の詩の中で、死の床にある妹トシが求める霙を取りに庭に駆け出す。 イヌイットの人びとは、様々な様子の雪を表す豊かな語彙を持つと聞くけれど、水に恵まれた日本に
- 本棚122『アイヌ神謡集』知里幸恵(岩波文庫)
- 2019年03月01日19:51
「銀の滴降る降るまわりに、金の滴降る降るまわりに」というロマンチックなリフレインが耳に残る冒頭の話が印象的だったからか、久しぶりに読み返してみて、グリム童話のように一見残酷とも見える話も多いことに少し驚いた。 しかしそれは、動物、自然と人
- 本棚121『白鯨 アメリカン・スタディーズ 』巽孝之(みすず書房)
- 2019年02月24日01:40
多様な解釈を可能とするから、古典は永く人を惹きつける。 『白鯨』は、単なる冒険譚、復讐譚ではなく、アメリカの文学や文化、社会を読み解く鍵となる。小説の中で、「白さ」は高貴な神々しさと、邪悪な禍々しさを持つ両義的な象徴として表される。それ
- 本棚120『季語の風景�供抻該蠅靴音丗�(東方出版)
- 2019年02月20日21:36
夏怒涛、豊の秋、冬曙、朝桜ー燦めくような美しい季語と、それに相応しい郷愁をかき立てる近畿一円の風景写真。「風」が印象的で、夏野を海原を桜花を吹き抜ける爽やかな風が頬に感じられるよう。 そっと添えられた文章も、その土地の歴史や縁のある
- 本棚119『つまみぐい文学食堂』柴田元幸(角川書店)
- 2019年02月19日08:39
海外小説に登場する種々の食べ物を採り上げたエッセイ集。 小説の中で食事は、単なる端役ではなく、登場人物の心情、時には物語の全景までをも表すような重要な役割を果たす。 例えば、『白鯨』の鯨ステーキ。「海上で鯨に群がる鮫たちのふるまいと、船
- 本棚118『散るぞ悲しき―硫黄島総指揮官・栗林忠道 』梯久美子(新潮文庫)
- 2019年02月14日23:01
太平洋戦争末期の硫黄島はまさに「生き地獄」だった。水も食料も弾薬も欠乏し、勝つためではなく、いかに相手を食い止め時間を稼ぐかという絶望的な状況のなか、総指揮官の栗林忠道中将は2万人の兵の命を預かった。 兵たちを一人の人間として思いやり、
- 本棚117『遥かな町へ』谷口ジロー(ビッグコミックススペシャル)
- 2019年02月13日12:45
「自分には、他にもっと違う生き方があるんやないか、思うてな···」 中年の主人公はタイムスリップで、14歳の頃の世界に迷い込み、その年の夏の終わりに家族を置いて失踪した父を止めようと画策する。 夜の鳥取の小さな駅。去ろうとす
