SONY Classicalの年明けくらいの輸入新譜で、個人的に期待している若手女流=バイバ・スクリデのチャイVnコン他から。この輸入盤は一旦は店頭から姿を消していたのだが8月頃にソニー(SME)から国内盤が出たのを契機に再度並んだもの。で、それをすかさず買った。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2691200
チャイコフスキー:
・ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品35
・なつかしい土地の想い出 作品42(グラズノフによる管弦楽伴奏版)全3曲[瞑想曲/スケルツォ/メロディ]
・バレエ音楽「白鳥の湖」作品20より第2幕「オデットと王子のパ・ダクシオン」「ロシアの踊り」
バイバ・スクリデ(ヴァイオリン)
アンドリス・ネルソンズ指揮
バーミンガム市交響楽団(City of Birmingham Symphony Orchestra)
スクリデを初めて聴いたのはショスタコのVnコン
http://musicarena.exblog.jp/7439867 で、切れ味鮮やかな超絶技巧と密度感のある隙のない集中力を見せつけた訳だが、スタンダード・プログラムであるチャイVnコンはどう弾いてくるのかと興味がそそられた。
期待しつつ聴き始めたが、これが呆気にとられるほどサラサラとした冷涼な解釈で、一般によく見られるベタついたフレーズは一切なしであった。但し弓捌きの確かさは唸らされるものがある。この日本音楽財団貸与のとても美しいストラディヴァリウス・ウィルへルミから放たれる旋律はひときわ鋭敏にして精緻なものだ。こういった弾き方もあったのかと感心する。バックのネルソンズCBSOは弦よりも木管隊に重点を置いたこれまた斬新な演奏で、この曲にはオーボエ、ファゴット、フルートたちがこれだけたくさん登場するのか? という新鮮な発見もさせられた。
白眉はオーケストレーション版「なつかしい土地の想い出 作品42」で、Vnコンとは一転、朗々と響き渡る弦のふくよかで太い音色が気持ちよい。感情に押し流されることなくきっちりと律速された温度感の低い丁寧な解釈は好感度が大で、とても理知的なものである。
スクリデのソロは決して音量が大きいわけではないが、彼女のダブルストップは混濁が極めて少なく浸透力が強いためか、大規模で多彩なオケに埋もれることなくその存在感を際立たせている。
このチャイVnコンとなつかしい土地の想い出を同時にフィーチャーしたCDというとユリア・フィッシャーのこれ
http://musicarena.exblog.jp/7439951 を思い出すが、聴き比べてみると面白い。ユリアの方は温度感が高くて動的な解釈、そしてヴィルトゥオーシティの強いエモーショナルな演奏なのだが、対するスクリデは荒涼とした空気感が全体を支配する、静的で内省的な演奏と言える。どちらもチャイの解釈としてはあり得るもので甲乙は付けがたい。
(録音評)
SONY Classicalレーベル、88697214232、通常CD。録音は2007年9月、バーミンガムとある。
このCDは昨今のSONY Classicalとしては異例で、驚くほど音が良い。このレーベルの音は一貫して仄暗くて艶がなくディテールも判然としない古色蒼然としたものだったのだが、何故かこのCDの音質はその延長線上にはなく、突然変異的に良好な空間、音色、ディテール、そして正常な定位を示す。そして、艶がないという決定的な負の特徴もあっさり払拭されており、艶やかなストラディヴァリウスが精密に蘇るのである。
ライナーの片隅に「Balance Engineer: Neil Hutchinson」という小さな文字を見つけた。ん? ハッチンソンと言えば元々はDECCAの名エンジニアで、スピンアウトしてClassic Sound Ltdを立ち上げた創始者の一人ではないか。そう、LSO Liveで超絶録音を連発している人物である。Classic Sound Ltdのクレジットも彼をレンタルした旨のクレジットも謝辞も表示されておらず、なぜSONY BMGグループの録音に名を連ねているのか首を傾げるところである。もし今後、彼が恒常的にSONY BMGのCD制作に関与するとなれば、このレーベルの音質は劇的に向上する可能性が大きい。とにかく不思議な高音質盤なのであった。
※今日は宴会、明日は外出のため今週の音楽日記はこれでおしまい
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