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2008年07月23日10:15

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【音楽】Mahler: Sym#1@Gergiev/LSO

LSO Liveのちょっと前の新譜からゲルのマラ1。マラ6と同時に届いたものだ。

http://www.hmv.co.jp/product/detail/2725240

・マーラー:交響曲第1番ニ長調『巨人』

 ロンドン交響楽団
 ワレリー・ゲルギエフ(指揮)

今までの誰のマラ1よりも筋肉質で新しい解釈と言って良い。一楽章冒頭のフラジオレットがあまりにも冷涼で、これから始まるであろう超スペクタクルを否が応でも予感させられる。必要以上に過度にコントロールされた弦セクションは従来のゲルの解釈法には全く見られなかったストイックなもの。

二楽章のショート・スケルツォは一転してポップであり、今までの緊張感を一気に緩解するゆったりした趣向で演奏される。しかしゲルの明瞭なコントロールが隅々に効いていて実は規律正しい解釈。

三楽章のコンバスはユニゾンで提示され、この低音楽器に対し際立ったハイライトを当てている。これは新しい試みであって重層的に描かれる物憂さが堪らないシーンだ。Vn、Va、Vcによる第二主題は例を見ないほどの統制が効いており、律動する鮮やかさと美しさを演出している。ここでも強力な統制が効いており、決して破綻することのなく持続する過度の緊張感が背景にある。

そして怒濤のフィナーレは異常な緊張感が漲る驚異的な展開だ。ブラスの咆哮は一糸乱れず、またパラグラフ境界で打ち鳴らされるデュアル・ティンパニはドライにしてハイスピード、そしてそのボリューム感に圧倒され続ける。一転して中間部での緩徐な律速は新しいゲルの演奏スタイルを提示している。ここでも弦の統率は素晴らしく一糸乱れることはない。幾つかの転調を経て第一主題および一楽章の主題を断片的に再現させつつ、強烈なアチェレランドを伴い予言めいたコーダへと向かう。この爽快な疾駆感は堪らないもので、この録音の全てを物語っていると言って良い。

とにかく凄いの一言だ。このハイスピードにして筋肉質の「巨人」は歴史に残る名演ではないだろうか。いまや誰のマラ1を聴いてもダルで弛緩した印象は拭えず、私の耳はこれしか受け付けなくなってしまった。

(録音評)
LSO Liveレーベル、LSO0663、SACDハイブリッド。録音は2008年1月13日、ロンドン、バービカンホール(ライヴ)とある。制作担当はマラ6と同様、クラシック・サウンド・リミテッド社(プロデューサー:ジェイムズ・マリンソン、エンジニア:ジョナサン・ストークス&ニール・ハッチンソン)。

マラ6は割と分かりやすい階調の超高音質盤であったが、この盤は極めて深い漆黒の闇に鮮烈な音絵巻が描かれるという趣向の超高音質盤だ。どちらも甲乙付けがたいほどの超高音質なのだが、楽器音の純度と音場空間の深さという点ではマラ6を僅かに凌駕する。

CDレイヤーも超高音質であるが録音レベルは割と高めに揃っており、再生は困難ではないだろう。しかしSACDレイヤーの聴感上の録音レベルは極めて低く、ローレベルにおけるディテール部の再生はかなり難しい部類だ。そして強奏部における音量はただものではなく、極めて広いダイナミックレンジの扱いに難儀しそうだ。失敗すると楽器の数が明らかに減少し、ステージの寸法が矮小化されることであろう。DSD録音の美点を遺憾なく生かした素晴らしい録音であってこれを凌ぐオーケストラ録音は当面出現しないのではないだろうか。
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