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2007年08月25日07:55

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【バレエ】ルグリ「白鳥」(18日)

冷静な師匠の感想です。
拝読していると、観たくなるんですよね〜。(^^)

それにしても、細かいところまでよくご覧になっていて、
しかもちゃんと覚えているのがすごいなぁ。


○1幕

わかってはいるのに、毎回幕が開けると、
その衣装に軽く衝撃を受ける。
男性陣のあの絵本の中の小人さんみたいな衣装は、
子供の発表会だったら可愛らしいかもしれないけど。
…まぁ、衣装と美術に関しては言っても仕方がない、
と諦めつつ、でも、やっぱり言いたくなる。f^_^;

道化は松下さん。
「頑張り」が見えてしまうのは役柄として辛いところ。
オネエ系の大嶋さん、ほのぼの系の古川さんの
自然な道化に続け〜。

ルグリさんのジークフリートは、
全方位どこから見ても王位継承が近いに違いない王子。
エレガントという言葉が動いているみたい。
トロワの貴族の女性たちの手に恭しくキスする様も堂に入ってる。

トロワは小出さん、古川さん、長谷川さん。
やっぱり小出さんの柔らかい踊りが好きだなぁ。
ルグリさんと組んでもしっくりくる。

でも足音が静かなのは長谷川さん。
この人はベジャールとかで見る方が好みかな。
現代的な踊りをする人かと思えば、
「おかる(ザ・カブキ)」などでは繊細でしっとり見える。
ただし古典だと、私の好みよりちょっと元気な踊り。

古川さんは足音が静かになったけど、
慎重になってるのか盛上がりに欠けるかな。
育ちの良いボンボン貴族のような朗らかさ。


○2幕

「白鳥」って難しいんだなぁ、と改めて思った。
ジルベールさんは好きなダンサーだけど、
まだオデットを踊れるレベルではないのかも。
表情などはいいのに、繊細さと優雅さが足りない。
ポジションは綺麗なのに、入り方がビシッと音がしそうな感じ。

アダージョで後ろから抱きすくめられるところでは、
最初は「イヤー―ッ!」って感じの表情と腕の払い除け方。
そこまで拒絶しなくてもいいのに。(^_^;)
「ダメです…。」くらいでいいんじゃないかな〜、と思ってたら、
後半は拒絶がやわらいでた。メリハリつけてたのかな。

所々いい表情を見せるのに、
その雰囲気のまま次のポジションへ移るのではなく、
素早く真顔に切り替わるとシュタッと決めるので、
余韻がない。アダージョにドラマがない。
ルグリさんも「支えてるから大丈夫だよ。やってごらん。」
という雰囲気になってしまい、物語に入るのが難しかった。

オデットのソロは、ジークフリートと一緒に出て来る振付で、
王子が下手前方でずっと見守っている様子も、
「何かあったら(って何がだ?)助けに(フォローに)いくぞ!」
という風に見えた。ルグリ先生…。

心を通じ合わせたようには見えなかったけど、
別れ際の嘆きは激しかったかな。
いつの間にそんな仲になったんだって感じだよ。(^O^)


○3幕

1幕で免疫が復活したので、
3幕の衣装と美術には驚かずに観ることができた。(^_^;)
マズルカは何で兜と鎧を装着してるんだ?
とツッコミたくはなるけど。

チャルダッシュに大嶋さんが!
でも、この人の良さが活かせているのかなあ。
前半の憂いのあるメロディには、
どこか影のある雰囲気が合うのだけど、
後半アップテンポになると弾けきれない感じ。
後ろにいる小笠原さんの手の返し、
見栄の切り方が好みで注目してしまう。

ナポリは高村さん。音とりが好き。
あの見事な長いおみあしを活かす衣装でないのが残念。
マズルカのいい踊りをしていた人の名前と顔が一致しない。
ごめん!

花嫁候補も足音がする人としない人、きれいに踊る人がいたけど、
実は王子と王妃のやりとりに注目していたので、
あまり観られなかった。

王子は入ってきた途端に花嫁候補達に気付いて、
不安を覚えて王妃へたずねる。

「あの方々は…。」
「あなたの花嫁になる姫君たちですよ。綺麗なお嬢さん達でしょう?」
「いや、私は…。」
「あなたが好きな方を選びなさい。」
「私には…。」
「早く母を安心させておくれ。どの方を選ぶのか楽しみだわ。」
「…(溜め息)。」

迷うとか悩むというより、苦悩するルグリ王子。
あまりに風格、気品、威厳が有り過ぎて、
王妃が結婚をすすめる世話焼きおばさんに見えてしまう…。(失礼)

そこへオディール、ロットバルト、スペイン軍団が登場!
かっこいい〜!
前回スペイン初役でアッサリしていた平野さん、
濃いスペインになってる。
爪先もきれいで、木村さんのポジションを担ってる感じがした。
井脇さんのスペインは絶品!

オディールは勢いがあって、ビシビシと技を決める踊りが、
若さと美貌に自信のある、小気味いい悪女を際立たせる。
目力もなかなか見事で、主犯格のオディール。

ロットバルトはパリオペ・ヌレエフ版の衣装。
ビュヨンさんは背が高く迫力があるのに、マント捌きがイマイチ。
ウルサイと感じる人もいるらしいマントのバサッという音は、
威嚇の演出だと思うのだけど、捌いた後に必ず手で直してるので、
そのモサモサした動きが気になり、威嚇効果を損なっていた。
若くて顔立ちも人も良さそうなので、
親子というよりは兄妹関係のロットバルト&オディール。
しかも妹にそそのかされた兄貴に見えた。

今回はロットバルトのソロもある、
パリオペ仕様のトロワになっていた。
長身で逞しい上半身に小さめの腰、
真直ぐな長い脚と恵まれた体格なのに、
踊りが小さく見えてしまうのは本当に惜しい。
立ち姿が素敵なので余計に残念。

ルグリ王子はというと、
1幕のソロは不安定で調子が悪いのかと心配になったのだけど、
3幕では一転溌剌とした踊りで素晴らしかった。
オディールとのPDDでは喜びが優雅に溢れてたよ。
幸せそうで、とても若々しかった。

コーダに至っては、観ていてドキドキするくらいの盛上がり。
ショーストップ状態。
レベランスの途中でジルベールさんと向い合ってお辞儀。
その表情は素に戻っていて、
「ルグリ先生、ありがとうございました。先生のおかげです!」
「良く頑張った。このまま最後まで大丈夫だ。」
と、嬉しそう。

その後のお決まりの場面も盛上がり、
スペイン軍団と共に指差して高笑いするオディール、
下品にならないのが印象的。
あくまでも美しい悪女で、後味が悪くない。
後悔する王子が王妃にすがる姿も美しく、
しかも直前の王のような雰囲気は消え、
若い王子になっていた。


○4幕

2幕では足音の目立つ群舞、1幕や4幕では気にならない。
やっぱり、あの振付が原因なんだろうな。
でも羽ばたくような振付で舞台を横切るのだから、
観れば観るほど羽ばたき音なんだと思う。

初めて(東バの「白鳥」の2幕を)観た時は、
「二度と観ないかも。」と大嘘ついて、
3幕以降の面白さで手のひらを返したように撤回した経験から、
(東バの「白鳥」を)苦手とする人が多いのも理解できるけどね。

本題に戻ると、
群舞の中にいるオデットを見つけたジークフリートは、
白鳥の「女王」への敬意とともに謝罪。
「誠に申し訳ございませんでした。
私の不徳と致すところでございます。」
と、膝まづいて深々と頭を下げる。

「この人は、人生で初めて、他人に頭を下げたんだ」
この時の姿には、そう思わせるものがあった。
裏切ったのだから謝るのは当然、と思ってたけど、
立場上、ものすごい葛藤を経ての謝罪なんだ、
と今更ながら気づかされた。

ロットバルトが登場し、
途中に終始3人が手を繋いだまま踊る場面がある。
例えば、オデットはロットバルトにリフトされていても、
片手はジークフリートと繋いでいる…そんな状態。
たしか通常の東バでは、そういう振付では無かったと思うので、
3幕のトロワと同じくパリオペ仕様なのかな、と興味深かった。
(違っていたらごめんね。)

「白鳥」のハッピーエンド版でよく見かける、
ロットバルトの羽根をもぎ取る場面は、
勧善懲悪物的派手さがあると面白いけど、
ルグリさんには似合わないな〜、
悲劇の方がイメージに合うなぁと思ってた。

東バは結構派手にやっているので、どうするのかと思ったら、
ルグリ王子はシリアスに闘って羽根をもぎ取り、
「この汚らわしい物を持って立ち去れ、悪魔め!」
とよろめきつつ羽根を投げ返し、自身も疲れ果てて崩れる。
ロットバルトは羽根を受け止め退場。(のたうちまわらない)

ルグリさんらしく、ハッピーエンドをうまく処理したな〜と思った。
マルティネスさんが客演した時はノリノリで、
派手にのたうちまわる高岸ロットバルトの上から、
勝ち誇ってもぎ取った羽を翻しながら落としてた。

一方マラーホフさんは完全に劣勢で、
「窮鼠猫を噛む」状態で羽根をもぎ取りヨロヨロ。
その脇で高岸ロットバルトが派手に元気よくのたうちまわってた。
こういうキャストによる違いがあるから、
舞台を観るのが面白くて止められない。

脱線した話を舞台に戻すと、
夜が明け横たわっていたオデットが起き上がる。
朝日の中、自分の腕が白鳥の羽根ではなく、
人間の腕であるのを見て、
嬉しそうに愛しそうに両腕を撫でる。

人間に戻る場面だな〜と何気なく見ていたけど、
魔法が解けるという有り得ない奇跡を目の当たりにした驚きと、
一度は裏切り、失望させた愛しい人を救うことができた、
という喜びに溢れたルグリ王子を見て、
観客はそういう驚くべき場面に立ち会っているんだ、
と改めて気付かされた。

この時、白鳥から人間へ変化しているはずの
オデット=ジルベールさんを見ているより、
奇跡を目の当たりにしているルグリさんを見ている方が、
その変化の様子が伝わってくる。
白鳥が空を旋回して降り立ち、
人間へ変容する様を観せてくれるルジマトフさんと一緒だね。


○カテコとチケット価格

カーテンコールでは大きな拍手に包まれ、
ルグリさんもジルベールさんもホッとした表情。
二人が向い合って会釈する時は、
「ありがとうございました!」「よくやった!」
と素の表情が見てとれて微笑ましかった。

ところが、主催者側から花束が贈呈された辺りから
ジルベールさんの表情に変化が見られた。
カーテンコールを繰り返すうちに、
自信と余裕のある主役プリマの表情で、
堂々とレベランスするようになっていった。
ルグリさんは終始変わらず嬉しそう。

この公演はS席15000円。
ルグリさんは素晴らしかったし、1幕ソロ以外は完璧だったと思う。
(あのソロも悪くないけど、あれを「完璧」と言ったら
ルグリさんに失礼だと思う。)
ジルベールさんも、2幕より4幕の方が良かったと思うけど、
個人的には、やはり「白鳥」は王子よりオデット。
4幕より2幕の出来が重要だと思うので、価格は高過ぎ。

ポリーナさん&フォーゲルさんの「白鳥」14000円や、
オーロラ初役の小出さん&ルグリさんの「眠り」と比べると、
12000円くらいが妥当じゃないかな。
降板の末ロットバルトが若手ということもあり、
高くても13000円までの公演内容だったという印象。
観て良かったとは思うけどね。
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