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2007年02月05日13:03

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【バレエ】マールイ「バヤデルカ」

ボヤルチコフ版の「くるみ」「白鳥」はいまひとつだが,
「眠り」と「バヤ」は面白い,というのが師匠と私の共通印象。
われわれのマールイ祭06-07は,
その「バヤ」初日で終わりの予定だったが,
つい,楽日の当日券を求めてしまった。f^_^;
というわけで,両日を比較しつつの感想です。

まず,オケ。
ジゼル,バヤ初日の演奏はいささか迫力に欠け,
アニハーノフさんと一緒に主要メンバーも
帰国してしまったのかな? と思っていたら,
楽日は気迫のこもった演奏だった。
終演とともにオケピからも拍手と歓声があがる。
今日で終わりだ,気合いいれてくぞ〜! というのは万国共通?
お疲れさま!
次もまた,素敵な演奏を聴かせてくださいね。(^^)

群舞,脇役陣も良い出来だった。
大僧正役のブレグバーゼさん,
ニキヤの違いに合わせ,自分の演じ方も変えていた。
ペレンさんのニキヤは,一般人が巫女になったという感じで,
大僧正もひとりの男として彼女を求め,
策略が裏目に出た時は半ば諦めているようにも見えた。
一方シェスタコワさんのニキヤは,
天然系の神秘的な雰囲気をまとった巫女で,
悲嘆にくれる大僧正の様は,とんでもないことをしてしまった,
と心から悔いているかのようだった。

群舞とソリストたちの踊りは,
新国ほどではないが充分揃っており,
こうなると技術の基礎がしっかりしているだけに,
やはり見応えがある。
余談だが,彼女たちの余裕が,
一生懸命さを好きな人には「手を抜いている」と見えるようだが,
身内の発表会を見に来ているのではないのだから,
下手の頑張りより,流していても上手い人に,お金は払いたい。

観覧後,師匠と感想を話しているうちに,
去年も同じようなコト言ってたねー,と笑ってしまった。
初日のペレンさん,意外といいね,と思ったら,
シェスタコワさんはさら凄かった。

2人の違いを端的に示す例として,
1幕1場,苦行僧に水をあげるシーンがある。
ペレンさんの水瓶は,ただの小道具。
縦のものを横にするだけ。それじゃ飲めないでしょ,
と心の中で突っ込みつつ,でも踊りの中の演技だから
こんなものか,と思って見ていた。
ところが昨夜のシェスタコワさん,
あたかも本当に水が入っているかのように瓶を扱い,
苦行僧も美味しそうに飲んでいた。

とはいえペレンさん,海賊の時よりも良かった。
役造りに連続性ができている。
3幕のPDDこそ踊りで手一杯,ルジさんとの一体感はなかったが,
昨年から今年にかけて,かなり鍛えているように感じた。
来年か再来年が,もしかしたら楽しみかもしれない。(^^)

シェスタコワさん,やはり不安定なところが散見されたが,
それでも充分,素晴らしい舞台だった。
オーソドックスなニキヤ像ではあるが,
くるくる変わる喜怒哀楽の表情,丁寧な踊り,
そしてジゼルの2幕にも通ずる,感情を抑えつつも,
秘めたる想いを見え隠れさせつつ,
相方との一体感を失わない表現力は大したもの。
まだネームバリューがないだけで,
ダンサーとしての実力はすでに世界レベルにあるだろう。
ここで満足してしまうのか,
それともさらに先を目指してくれるのか。

ルジさんソロルは,
最初から最後まで苦悩する誠実な戦士。
1幕2場,ガムザを紹介されるシーンでも,
心を動かされる様子はなく,ひたすら当惑していた。
(2日目は明確に断っていた)
直後のニキヤの踊りでも,
立場を捨てきれない自分を恥ずかしく思うのか,
彼女が近寄ってくると目をそむけるものの,
それ以外の時はいとおしそうにニキヤの踊りを見つめていた。
婚約式のシーンでは終始憮然とした態度をとり続け,
ニキヤが倒れると駆け寄り抱きしめる。

3幕でも,空から現われた花とベールを手に,
「図ったな!」とパシャ親子に詰め寄り,
崩れる寺院の下,再度掲げる誓いのポーズは,
自分の気持ちがニキヤにあることを再宣告すると同時に,
己の優柔不断な態度が彼女を死に追いやってしまったと,
悔やみ慟哭しているかのようだった。

なお,ここの寺院崩壊のきっかけは,
ソロルとガムザの誓約ではなく,
ソロルがパシャ親子を弾劾したあと,
天上の神がニキヤの亡霊の姿を借り,
天罰を下すというもの。

この作品が面白くなるか否かは,
ガムザッティの配役に大きく左右される。
そういう意味でも,ここの「バヤ」は面白い。

団のトップダンサーが主役以外を演じる,
ということからして期待感が高まるが,
初日シェスタコワさんのガムザは,
もうすこし主役のペレンさんを立ててあげれば?
と思えるほど存在感がある。
登場シーンでは可憐で気品のあるお嬢様,
刃傷シーンでは感情の変化を繊細に演じ,
ニキヤ暗殺シーンでは,
目力だけでルジ・ソロルを制圧していた。
3幕の宣誓では有無をいわさずソロルの腕を引き寄せる。
終始その場を支配するのは父親ではなく彼女だった。

楽日のガムザは,エフセーエワさん。
昨年はまだ演技が板についてなかったが,
彼女はこの1年で急速に力を伸ばしてきた。
1幕2場も良かったが,
2幕はニキヤの踊りに顔を向けつつ,
視線はエフセーエワさんとの間を往復していた。

シェスタコワさんのガムザは,
娘というよりも怒れる女王だったが,
エフセーエワさんの描くガムザは,
まだあどけなさの残る,悪役になりきれないお嬢さんで,
見終えた後,少々同情してしまう。

花籠の踊りが始まる前からすでに落ち着かない様子で,
父親に暗殺を思いとどまらせようとまでする。
ソロルに愛想をふりまくのは,ニキヤに見せつけるためではなく,
(この時,彼女の頭にあるのは殺害計画のことだけ)
いま,ソロルが自分に振り向いてくれれば,
暗殺を止めさせることができる,
しかし,それを口にすることはできないという葛藤。

それでも心を開かないソロルに,
これでニキヤが死んだらあなた(ソロル)のせいよ,
とばかり泣きそうな表情をうかべ,
ニキヤが倒れれば,おもわず駆け寄ろうとまでする。
そしてソロルの冷たい視線に気付くと,
泣き顔のまま父親にしがみつく。
う〜む,ちょっと萌え〜,かな? (^^;)

冷ややかな笑みを浮かべ,
平然と構えるシェスタコワさんとはまた違う人物像。
ないはずのセリフが聞こえてくるかのような名演だった。

ここの全員が順調に育っているわけではない。
ルダチェンコさんは相変わらずだし,
コシェレワさんは昨年の方が良かったような気がする。
期待していたロマチェンコワさんも,
思っていたほど伸びていなかった。

その代わり,大きく成長したシェミウノフ君は,
脇役の時も舞台の袖で小芝居を積極的に続け,
舞台を盛り上げようとし(やこさん,海賊の時は
楽しそうに舵をぶんぶん回していたそうです。(^O^)),
マスロボエフ君の躍進は予想していなかっただけに嬉しい。
数年前までは息も絶え絶えだった太鼓チーム,
昨夜は余裕で拍手に応えていた。
マールイの弱点とまで言われていた男性陣も,
着実に力を付けつつあるようだ。

マールイのみんな、
この冬も素敵な舞台をありがとう。
また元気に日本へ来てください。
楽しみに待ってるよ〜。(^^)/
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