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2026年09月19日07:38

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映画「八つ墓村」(2026年)

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リメイクされると知った時から全く期待していなかった。映画史に残る大傑作、松竹版『八つ墓村』(1977年)に匹敵できるはずもなく、ただ、どんな作品に仕上がったのか興味があったに過ぎない。期待せずに劇場に行けば、どんな凡作でもがっかりせずに済むだろう。しかし、その読みは甘すぎた。まさか、キャッチコピーの「ようこそ、最高の悪夢へ」を本当に体験することになるとは思いもしなかった。「最高の悪夢」が、劇場で私を待っていた・・・。


【物語】 深夜、八つ墓村の全景を見渡せる滝の上。女がひとり、多治見家の大きな屋敷が燃えている光景を眺めていた。そして、女は崖から身を投げ、滝に呑み込まれる。数日後の朝、就職活動を続けるも軒並み不採用となっている大学生・井川辰弥(奥智哉)のもとに調布西警察署から男女の刑事ふたりが訪ねて来る。「お母さんのことで確認していただきたいことがあります」と用件を切り出した刑事に辰弥は「ぼくは小さい頃、お母さんと生き別れになっていて、もう長いこと会ったことがありません。何も答えられませんよ」不愉快に答えた。彼は「母親に棄てられた」との思いが強かったのだ。刑事は「お母さんは亡くなりました。お母さんかどうか、身元をご確認いただきたいのです」 辰弥は驚いて、声を失った。

 警察署の遺体安置室で辰弥は母と対面する。それは幼い頃の記憶のままの母・鶴子だった。「お母さんだと思います」 やはり、母は死んでいた。「お願いです。母が亡くなった場所を教えてください」辰弥は刑事に懇願し、場所を教えてもらった。

 岡山県の山中。辰弥は母の亡くなった場所を探して、滝の上にやって来た。ここから飛び降りたのではとうてい助からない。辰弥は崖の縁から滝つぼを恐々覗き込み、息を呑んだ。母はなぜここから身投げしたのだろう。

 山から下り、バス停に向かうが、寸でのところでバスは発車してしまう。辰弥は乗り遅れてしまった。次のバスがやって来るのはかなり先になる。辰弥は諦めて、バスが走り去った道路を歩いて行く。遠くにさっきのバスが停まっているのが見え、彼は走り出した。バスの脇で運転手がおかしな風体の男(尾上松也)に文句を言っている。「あんた、お金もないのにどうしてバスに乗ったんだ! こんな場所で停めさせるなんて、ふざけるにもほどがある」 運転手に怒鳴られている男は「バス代はあとで必ずお支払いしますから」「あとって、いつだ! お金はどうすんだ!」 辰弥は見かねて、千円札を出し、「これで足りますか?」と運転手に見せると、おかしな男はそれをひったくり、「これで二人乗れますよね?」とバスに乗り込んでしまった。

 バスの車中、おかしな男は親しげに辰弥に話しかける。「助かりました。私は私立探偵の金田一耕助と言います。このお金は必ずお返ししますから」 辰弥は「お金はいいです。差し上げますので」と迷惑そうに言って前の席に移動した。金田一と名乗る男は辰弥を追って隣の席に座ると、「そういうわけにはいきませんよ、井川辰弥さん」 自分の名前を言われ、辰弥は驚いて金田一の顔を見た。「依頼があって、あなたを探していたんです」

 ふたりがバス停で降りると、いきなり小柄な女が何か叫びながら、辰弥につかみかかって来た。「おまえのせいだ、なぜ、帰って来たんだ!」 辰弥はびっくりして逃げようとする。その時、「おやめなさい! こちらは多治見家にお迎えする方々ですよ!」と若い女性が声をかけて女を制止すると、女はあきらめて辰弥の前を離れる。「ごめんなさいね。あの人はちょっと変わっているんです。私は森美也子(堀田真由)です。お迎えに来ました」 彼女の車に乗って、多治見家に向かう道中、辰弥が車窓から村の様子を眺めていると、村人達の誰もがこちらを見ている。「なんだか、みんなに見られているような気がしますね」 辰弥は森美也子に告げた。家の前や畑、道路脇にたくさんのお面が飾られているのに気がついた金田一が「あのお面はいったい何ですか?」と森美也子に尋ねると「・・・あれはこの村の厄除けみたいなものなんです」と教えてくれた。やがて、小高い丘に立つ城塞のような建物が見えて来た。「あれは?」と辰弥。森美也子はハンドルを握りながら、「あれが多治見家です」 辰弥は巨大な屋敷を見つめている。あそこで母が暮らしていたのだろうか。その時、彼は悪夢のような出来事が待っていることをまだ知らなかった・・・・。



 この先、ネタバレです。未見の方はご注意ください。







 本当に「ネタバレ」ですよ。大丈夫ですか?







 警告しましたからね。この先は自己責任でお進みください。







 いや、驚いた。まさか、本物の「最高の悪夢」に遭遇することになるとは想像もしていなかった。とにかく、別の意味で「恐ろしい映画」であることは間違いない。いくら「完全新作」とはいえ、横溝正史の原作から、どうしてここまで奇怪で陳腐な物語が生まれたのか全く理解できない。本作のタイトルを恥ずかしくもなく『八つ墓村』とつけた勇気には恐れ入る。期待はしていなかったが、それでも心のどこかに「新たな『八つ墓村』の物語」を楽しみにしている部分があったのだろう。「この先は面白くなるのではないか」「ここから巻き返すのではないか」とかすかな望みを抱いたが、無駄だった。予想をはるかに下回る酷い内容で、完全に冷めた。この20年で一番つまらない映画だった。

 清水崇監督作品を初めて観たことも大きな原因だろう。原作に沿って、ミステリーに仕上げるか、橋本忍脚本に倣ってホラーテイストを踏襲するに違いないと予想した私が無知だったということだ。これこそ自己責任である。ミステリーどころかホラーですらなく、完全にオカルトにふり切っている。「オカルト映画なんだから、何でもあり。理路整然とした物語なんて不要」とでも考えているのか、展開は行き当たりばったりで物語全体を貫く「芯」が感じられない。まるで、お化け屋敷に入って、独立したコーナーをいくつも覗きながら歩いていたら、いつの間にか出口に辿り着いていたような印象だ。脚本に連続性や整合性がまるでない。ツッコミどころが渋滞して列を成している。

 演出も酷い。そもそも、演出しているのかどうかさえ疑いたくなるほど、キャスト達の演技が稚拙だ。多くのシーンが中学か高校の学園祭の演劇レベルにあるといって良い。いや、高校生の方が巧いかも知れない(ちなみに、脚本は中学生レベル)。さらに、井川辰弥を演じた奥智哉に頼るのは間違いだろう。ほとんどのシーンで演技過剰に感じた。普通の会話、当たり前の自然な反応を演じることができないのだから、「狂言回し」としては荷が勝ち過ぎている。金田一耕助を演じた尾上松也は全編、ほぼ出突っ張りで頑張ってはいるが、無惨に空回りしていた。彼がコミカルなパートを担っているので、反対に奥智哉の井川辰弥は展開上、勘が良すぎて、彼の方が探偵らしく見えるのはもはやご愛敬。滝藤賢一が多治見要蔵と久弥の二役、高島礼子が小梅小竹を一人二役を演じることも注目していたが、いずれも不発。ふたりの力演を感じるだけに可哀想だった。磯川警部を演じた小藪千豊はそういう演技を要求されたと理解はするが、「不愛想で感じの悪い刑事」で彼が登場するたび不快に感じた。なぜ、飄々として愛嬌あるキャラにしなかったのか。本当に良かったと思えたのは、唯一、森美也子を演じた堀田真由だけだ。

 肝心要の「尼子義孝ら八人の落ち武者謀殺シーン」も凡庸で、がっかり。ただただ、1977年版『八つ墓村』の奥深さ、おどろおどろしさ、素晴らしさを痛感した。1977年版を100点とすれば、本作は25点。映画どころか、まともなTVドラマクオリティにも達していない。このレベルの映像作品をわざわざ公開初日に観たのだから、これこそが私にとって「本当の悪夢」だ。

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 ※上段左から井川辰弥(奥智哉)、金田一耕助(尾上松也)、森美也子(堀田真由)。下段左から小梅小竹(高島礼子、二役)、多治見久弥(滝藤賢一、要蔵と二役)。映画と言うより、本作は「遊園地のアトラクション」に近い。体験して終わりで、鑑賞後に何も残らないのが哀しい。


◆関連日記 横溝正史『八つ墓村』を読んだ
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1952869208&owner_id=6007866&from=list_diary_search
◆女優・小川真由美さん逝去。
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1992654743&owner_id=6007866&from=list_diary_search
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