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2023年09月18日06:48

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やはり映画は、暗闇に座りスクリーンで見るべきものだと痛感しました。ビリー・ワイルダー監督「地獄の英雄」(1951)。

池島ゆたか監督と行っている私的な鑑賞会“目黒ゆたか会”で、ビリー・ワイルダーの「地獄の英雄」を見直しました。これが実に“当たり!”だったのです。僕はこの作品を、家庭用のテレビでしか見ていません。それもハイビジョン録画ではない素材でした。今回は池島監督が、CS放送からブルーレイ録画した素材です。

実はこのところ、土曜日になると息子が様子見に帰ってきて、アベマTVの将棋を一緒に深夜まで見ています。通常は9時になるとベッドに潜り込むので、このところ日曜は睡眠不足が多い。だから肝心の鑑賞会で舟を漕ぐことが多くなるので、なんとか少しでも仮眠して鑑賞会に備えていたのですが、今回はそれもかなわず臨んでしまいました。

てなわけで、池島監督の旧作については少し舟を漕いだのですが、そのおかげか「地獄の英雄」は全編ワンカットも漏らさず鑑賞できました。前回テレビ画面で見ていたときには“ワイルダーとしては普通の出来”という程度にしか感じていませんでしたが、今回は圧倒的に面白かったなぁ。池島監督も“スクリーンで見ると違うねぇ”と喜んでくださいました。

CS放送時の画面サイズはテレビ用の4:3ですが、imdbによると本来1:1.37のアカデミー・アパチャーなので、ほぼ同じ画角だと言えるでしょう。いわゆるスタンダード画面の持つ奥行き感がとてもいい。←撮影はチャールズ・ラング。「シャレード」が印象的ですが、「西部開拓史」も担当してたのね。

imdbのトリビアによると、公開時の興行的失敗でパラマウントは損失を被り、ワイルダーに対して「第17捕虜収容所」のヒットから損失分を取り戻そうとしたようです。ワイルダーはそれを認めたけれど、“この映画は私の作品の中で最高作の一つだ”と公言していたらしい。

砂漠の真ん中にあるガソリンスタンドというと、僕は「バグダッド・カフェ」(1987)を思い出しますが、パーシー・アドロンはこの「地獄の英雄」を意識していたんでしょうね。もっともクリスティーネ。カウフマンよりジャン・スターリングの方が、圧倒的に“アメリカン”ですけど(あたり前田のクラッカー)。

それにしてもカーク・ダグラスという俳優さんは、こういう偏執狂的な役をやらせるとすごみがあります。コミカルなアクション映画(主に西部劇)もいいですが、アクの強い役だと凄みが増します。ニューヨーカーのはずですが、実は“ヨギ・ベラって一体何者だ?”と秘書に尋ねたらしい。彼の秘書は“捕手よ”と教えたらしいけど、ダグラスは野球には無関心だったのか?

それにしてもアルバカーキの地方新聞社の雰囲気がいいですねぇ。“真実を語れ”という文字を刺繍して車内に掲示してあるのがいい(写真3)。それに敬意を払いつつバカにして我が道を行く落ちぶれ記者を、1年も食わしてくれているあたり最高です。ビリー・ワイルダーは、わざわざワーナー専属だったカーク・ダグラスを借り受けてこの映画を作ったわけですね。

つまり「ニノチカ」など、しゃれた内容ながら皮肉を利かせた映画で売り出し、「サンセット大通り」などでオスカー監督となったビリー・ワイルダーが、“製作・監督”と自分の名をもっとも大きくタイトルに出している映画ですから、今見直すと彼の作品系譜を並べ替えて考え直したほうがいいように思えます。

つまり僕は同時代的に、「アパートの鍵貸します」以降のビリー・ワイルダーしか知らなかったのですが、「深夜の告白」や「熱砂の秘密」、そしてこの「地獄lの英雄」という50年代初期のワイルダーをきちんと勉強し直したいと思うしだいです。話術が巧みな監督というだけではなく、この映画の仮題を「The Human Interest Story(人の気を引く物語)」としていた、彼の皮肉な視点を学び直したいと思いました。

いやはや、いくつ何十になっても学ぶことはいろいろあるものですねぇ。
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