たとえば20世紀最高の喜劇王と謳われたチャールズ・チャップリン。第二次世界大戦後にアメリカ全土で吹き荒れたいわゆるレッド・パージの逆風を食らって、ハリウッドだけでなくアメリカ本土から彼は永久追放を受けた。
それもこれも多年にわたる10代の少女たちとの淫行が原因だと当局は本人に通達した。しかし事はそう単純ではなく、当時のアメリカ政府にとって都合の悪い映画を制作したり政治発言をされるのを潔しとされなかった事もある。
さもなければ、エロール・フリンのように日常生活で強姦事件を起こして告発された映画スターでも追放されかねない。事実前者は当局から睨まれ、後者はお咎めなしとなった。二人とも10代の少女にちょっかいを出したのにこの差はなんなのか。
思うにスキャンダルというものは、真実か単なる噂話か流す側にしてみればどっちでもいいという側面もある。問題は特定の人物や集団の評判を落としめるためには、でっち上げも敢えて辞さない可能性もあるということだ。
本書で取り上げた古今東西の醜聞は、決して広めた側が仕組んだものばかりではない。ただある日を境に、権力の中枢にいた大物が追い落とされたり、人気者がその地位から転げ落ちたりする背景には、そのような一面も十二分にあり得るということだ。妙な噂話にはご注意が必要というところである。
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