mixiユーザー(id:6327611)

2023年08月15日00:17

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リュック・ベッソンが噛んでるからパスする気でいた潜水艦映画ですが、いろいろ感じる部分がありました。トマス・ヴィンターベア監督「潜水艦クルスクの生存者たち」(2018)。

はい、レア・セドゥつながりで見る気になったのですが、ロシアの原潜が沈没事故を起こした事件が描かれます。僕は事件があったことは覚えていますが、国を越えての救助活動についてはその結果を含め何も知りませんでした。そしたらこの作品は、スコープサイズの画面にビスタサイズの枠を設けるという、変な映像から始まります。

そしてクルスク号が出港し、潜水するシーンを遠景で見せたところから画面がスコープに広がり、ラスト近くに英国軍の救助艇が出動したあたりから、再びビスタサイズになりました。これは、“スコープサイズの部分はフィクションですよ”という意味だったのです。まあ乗員118人全員が死亡しているのですから当然といえば当然ですが、なんか説明的で嫌だな。

そしてこの映画には、プーチン大統領が一切出てきません。事故当時プーチンは静養地ソチにいて、軍部が“全力を上げて救出中”という情報を信じ込んでいたそうな。そのため乗員の家族たちの不満が大衆に伝播し、“プーチン不信”の状況を作り出したようです。それなのにプーチンの関与を映画に出さないというあたり、やはり商売熱心なリュック・ベッ損の意図らしい。

僕はこの映画のいちばんの見所を、ロシア軍の責任者の建前だけの報告会で切実な質問を行うアヴラン第7区画司令官夫人(レア・セドゥ)の言葉だと思いますが、ベッ損氏には潜水艦内のサスペンスのほうが重要だったらしい。しかし100メートル余の海底に置き去りにされた潜水艦内部に、サスペンスもクソもない気がしますけどねぇ。

むしろロシア軍が財政難で、3台あった救助艇のうち1台は“タイタニック観光”のための会社に売り払ってしまったそうです。そのため“万全の救助体制”が取れなかったらしい。タイタニック号を見るために海中に潜ったあと連絡が途絶えた潜水艇の悲劇は、まだ記憶に新しい訳ですが、その潜水艇と売り払われた救助艇は別物なのでしょうね?

つまり僕は、こういう政治の介入による悲劇を、なんとか世論として非難していきたいと考えているのですが、そういう方向性は商売の敵なのでしょうか。そんなことはないな。逆に、そのあたりを焦点ボケにしてしまえば興行的に成功するか? それなのに物語の変更に横槍を入れる必要はないと思います。やはり別の損を背負い込んだだけです。

とはいえ目当てのレア・セドゥさんは、第二子妊娠のお腹を強調しながら(もちろんメイクですよ)、やんちゃ盛りの長男に手を焼いています。なのに亭主(マティアス・スーナールツ)は、見て見ぬふり。せやから艦内に閉じ込められて死んでしまったんじゃないかな。軍司令官(マックス・フォン・シドウ!)との握手を拒否したと、父親の仲間から褒められた息子も納得できんよね。

そもそも、世間の誰もが納得できない悲劇なわけですが、誰が責任を取るべきかと言うと当時の政府のトップでしょう。1年後、プーチンは「私はおそらくモスクワへ帰ってくるべきだったのだろうが、事態は何も変わらなかっただろう。ソチにいてもモスクワにいても私は同程度の情報を得ただろうが、宣伝的観点から言えば私は帰ろうとする特別な熱情を示すこともできただろう」と語った(by Wiki)そうです。発言の前にまず、責任を取れと思います。

ということで、やはり別損が絡んだ映画は敬遠するのが正解なようで。皆様も甘言と映画の宣伝は真に受けないようにしましょうね。
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