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2023年08月12日02:21

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この斬新なドキュメンタリーは、ドキュメンタリーの本質を大きく変えるかもしれない。ブレント・ウィルソン監督「ブライアン・ウィルソン 約束の旅路」(2021)。

手法として僕があまり好きではないノーナレーションのドキュメンタリーであり、ビーチボーイズの音楽にあまり親しんでいない僕だという部分から考えると、思った以上の“衝撃”を受けたと考えます。それはこのドキュメンタリーが、ビーチボーイズの音楽を支え続け、半世紀以上に渡って50曲以上のヒット曲を世に出し続けてきたブライアン・ウィルソンに密着取材していたからです。

僕はサーフィンに興味がないし、ビーチボーイズのヒット曲にあまり関心をいだきませんでした。とはいえ“グッド・バイブレーション”という曲は面白いと思ったものです。だからビーチボーイズの数々のヒット曲を作曲し、その中心人物だったブライアン・ウィルソンのドキュメンタリーということで、劇場ではパスしていました。

そういえばビル・ポーラッド監督「ラブ&マーシー 終わらないメロディー」(2015)を見ていたのだと、ミクシィの日記を検索して気づきました。あれは現在の奥さんメリンダとの出会いを描いていたのでした。そのあたりの話をすべて忘れていたけれど、今回の密着取材の異質な感覚がとても強烈でした。

つまりブライアン・ウィルソンは統合失調症ということで10年近く治療を受けており、そのとき頼った医師との個人契約から、その医師が作曲活動にまで関与していたそうです。それほどの関係だったのに、ブライアン・ウィルソンは医師が亡くなっていたことを知らされておらず、現在の友人でありこのドキュメンタリーのインタビューアーであるジェイソン・ファインから初めて知るのでした。その場面は特に強烈。

というように、音楽活動から考えるとエルトン・ジョンやブルース・スプリングスティーンたちの話からその天才ぶりが讃えられるブライアン・ウィルソンですが、現在もまだ対人関係に不安だそうで、ジェイソン・ファインとなら親しく話せるということから、今回のドキュメンタリーが成立したようです。

ジェイソン・ファインは「ローリング・ストーン」誌の記者であり、編集者も勤めたようです。ブライアン・ウィルソンは“君となら話ができる”と、ジェイソン・ファインと行動をともにします。彼らが車でブライアンの思い出の地を巡る、それがこのドキュメンタリーの柱なのでした。

それにしても彼の母校ホーソーン高校の現校長がブライアンに対し、“うちの教師がFを付けたようだけど、私がAに変えてあげるわ”などと発言するのはいかがなものか。←これは特典映像だけの収録?←“削除シーン”が15分ほどありました。←かまへんかまへん、暴露してまえ。学校というものは権威に弱いのである、ということですわ。

とはいえ、“グッド・バイブレーション”を1曲収録するだけなのに4つのスタジオを使ったとか、ブライアンが“ビートルズの「ラバーソウル」を越えたい”と述べているなど、僕程度の知識と経験ではとても太刀打ちできない内容なのでした。音楽業界におった意味がない。面目ないですわ。

しかしながら、密着取材に映し出されたブライアンの素顔から、そしてライブ映像やアーカイブ映像から、音楽活動の雰囲気が伝わります。そして何よりもブライアン・ウィルソンという人物の“人となり”が、ずしんと伝わった気がしました。先述の劇映画だけだと単に“奇妙な音楽人”ですが、ここにはブライアンその人がどっとり描かれています。

せいぜい93分のドキュメンタリーですが、その情報量の多さは半端ない。例えば曲名を言い合うシーンでは、あまりの速さにカタカナ題名が読みきれません。しかしその程度の知識しかない僕でも、現在のブライアン・ウィルソンをここまで映像として提出してくれたら、その人生にかなり感銘を受けました。方法の勝利です。

なお監督のブレント・ウィルソンは、ブライアン・ウィルソンの親族ではないようです。たまたま同姓だったと言うだけのこと。第二次世界大戦のドキュメンタリーから、ロックの殿堂入りコンサート映画まで、幅広い経歴があるようです。写真3が、車から降りてコーヒーハウスで歓談するブライアン(左)とジェイソン・ファイン(右)。
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