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2023年08月02日03:54

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“これが帝国主義的侵略の実態だ”、と今ごろ言われてもなぁ。シーロ・ゲーラ監督「ウェイティング・バーバリアンズ 帝国の黄昏」(2019)。

原作はJ・M・クッツェーが1980年に上梓した小説「夷狄を待ちながら」で彼はノーベル賞作家だそうですが(by Wiki)、そもそも僕は“夷狄(いてき)”という漢字を読めませんし、意味すら知りません。そしてシーロ・ゲーラという監督さん、まったく知らんけーど。←南米のコロンビア出身の監督さんのようです。そしてこの映画は、ベネチア映画祭で金獅子賞を取ったらしい。

この映画は、実は時代背景を明確にしません。地域としても具体的にどこか明らかではない。ただし兵士たちが馬で移動したり、手にした武器などから19世紀と思われます。そして遊牧民たちを“蛮族”と呼ぶジョル大佐(ジョニー・デップ)が着任し、治安判事(字幕では民政官、演じるのはマーク・ライランス)の意見を無視して“征伐”に出るという展開です。

そもそもimdbの得点が5.9(投票者数14000)程度の映画に手を出した僕が間違いでした。ジョニデとか、マーク・ライランスという“演技派”俳優を中核にすえ、もっともらしく帝国主義的侵略の先鋒を勤めた兵士たちを描きますが、せいぜいイラン国民からの投票数の52%が満点をつけたという程度の映画なのでした。バカバカしくて僕は1点を投じる気にもなりません。

おそらく大きな金額の製作費を投じた映画なのでしょう。画面のタッチが「アラビアのロレンス」を模している部分が多いし、その雰囲気は悪くない。しかし「アラビアのロレンス」が台詞のある女優を登場させなかった(それが可能な時代の映画です)のに対し、民政官がジョル大佐の拷問で痛めつけられた遊牧民の娘にぞっこんとなるあたり、どう考えても描写不足(同時に不要と思われます)でした。唐突に“足フェチ”を出すな、っての。

いちおうグレタ・スカッキが出ていますが、40年ほど前ならお顔を拝むだけでも、と思った時期もありましたが、還暦を迎えられたスカッキさまには、スカくらうだけ。せっかくの凛々しい美少女(年齢不詳)ガーナ・バヤルサイカン(写真3)を起用しながら、この程度の魅力描写では、あきませんのあきません(初期「なんでも鑑定団」のセリフ)でした。

とりあえず上映時間が2時間に満たないという“救い”はありますが、ここまで紋切り型で“帝国主義的侵略”を描かれたら、プーチン大統領がウクライナのゼレンスキー政権をナチスと決めつけるのに近い“不信感”を感じます。お題目だけで歴史を描いた気になるなよ、と言いたい。スローガンが政治を左右する時代ではないのです。

画面のタッチが「アラビアのロレンス」を模していると書きましたが、撮影監督がクリス・メンジースなんですね。「ワールド・アパート」(1987)では監督をして秀作を生み出した人です。彼に監督させたら、もっとすんなりといい映画になったんじゃないかと思いました。

それにしても、ジョニデにしろマーク・ライランスにしろ、俳優さんってこういう“演技”をやってみたいものなのでしょうか? 僕にはとてもついていけません、勘弁勘弁。要するに、「アラビアのロレンス」は流れるような一面の砂を魅力的に描いたけど、遊牧民が暮らすこの地域(ガーナ・バヤルサイカンの母国ならモンゴル?)では、石ころだらけで情感に欠けたということなのか? 知らんけどね。

ということで、御用とお急ぎでないお方はぜひどうぞ。じっくりと僕の言い分をご確認ください。“帝国主義”をこのように教条的にとらえる限り、資本の論理にとことん蝕まれること請け合います。サイナラ、サイナラ、サイナラ。
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