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2023年08月01日04:26

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少女2人の冷たい視線に刺され、しかし2人の強い連帯に感銘を受けました。イライザ・ヒットマン監督「17歳の瞳に映る世界」(2020)。

しかし、しよーもない邦題ですね。まんまやんか。そう感じながら見始めたのに、この映画に登場する少女2人の冷たい視線に恐怖を感じつつ、100分を見終わりました。原題は「Never Rarely Sometimes Always」で、妊娠した少女たちが堕胎を希望したときに、堕胎を実施する組織の問診にイエスかノーかで応える“4択の選択肢”なのでした。

17歳の少女オータム(シドニー・フラニガン、写真2左)が妊娠し、母親に相談できずにニューヨークでの堕胎を決意します。親友で同じバイトのレジ係スカイラー(タリア・ライダー、写真2右)は、一緒にニューヨークへ同行し、オータムにつきそうという展開でした。映画のルックがまさに“17歳の瞳に映る世界”なのですが、あまりにも説明的すぎて僕は嫌です。

とはいえ、2人の少女たちの冷たい視線が強烈でした。今まで“少女が妊娠する”という映画を何度か日記に書きましたが、それぞれ強烈な印象を感じたわけです。参考までに、その題名を並べると次のとおり。

>「のら猫の日記」、「フィッシュタンク〜ミア、15歳の物語」、「Skin」(2008)、「雑音」(監督 上原三由樹)、「プレシャス」、「クリーブランド監禁事件」、「ルーム」、「ユーラ ごみ捨て場の少女」、「エンジェル、見えない恋人」。

まず、オータムが誰と関係して妊娠したのか、それが描かれません。さらに母親が35歳でオータムが17歳という設定でした。この家族で父親らしき男は20代に思えるから義父でしょう。その義父は家の中に居場所がなく、犬とたわむれるしかない。地域のカラオケ大会か何かでオータムが歌っても、それを褒めてやるわけでもない。

そんな冷めきった家庭環境が絶望的なのに、そっちはほとんど描かず、オータムとスカイラーの2人がマンハッタンで堕胎を受けるための旅事情を逐一描く作品でした。この冷めきった視点はとてもすごいと思う。監督は題材の調査中に出会ったシドニー・フラニガンを主役に決めました。100人以上の女優とオーディションしたのに…。

とにかく少女2人の冷たい視線に驚きます。実際に身内がこういう状況に置かれたら、僕自身どうしていいか困ってしまうわけですが、そんな家族の対応を察知して2人でマンハッタンへと旅に出る決断がすごい。←レジからお金を抜くスカイラーの行動が強烈でした。思い詰めた十代は、怖いものです。

ところが、とことん絶望的な事態に直面しても、この2人は親友なのでした。僕はスカイラーと握手するオータムのしぐさ(写真3)に感動しました。この映画に描かれた彼女たちが人生の“秋”に立っていて、これから冬を迎えるのではないことを望みます。←映画の中のマンハッタンは雪景色でしたけど。

この連帯が健在な限り、人生は捨てたものではない。←でも、捨てるしかない人が居るのも現実ですが。

ということで、知っている俳優は皆無で、初耳の監督さんによる映画でしたが、間違いなく今年見た映画のなかで大きな位置を占める“秀作”でした。てなこと言いながら、“少女が妊娠”する映画の大半を思い出せないでいる後期高齢者の意見ですので、お手柔らかに…。←嗤うしかない悲劇ですわ。

写真2は主役2人と監督さん(イライザって、花売り娘から命名?)です。
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