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2023年04月13日20:37

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予定通り、なーんもしない一日

 旅の宿の一日目はよく眠れなかった。睡眠薬が一向に効かず寝付いたのは午前3時過ぎだった。朝食は午前7時から8時半までなので7時半に起き出し、目を醒ませるために大浴場で身体を温めたあとバイキング会場へ。たぶん私が最後の入場客だったように思う。
 かけつけ2杯の珈琲を飮んでから、9つに仕切られたバイキング皿を取った。
 野菜サラダ、ウインナー、揚げ茄子のポン酢和え、オムレツ、厚焼き卵、鰺の干物(小)、肉団子、きんぴらごぼう、ししゃも、ジャーマンポテト。これにコーンスープ、デザート代わりにプレーンヨーグルト。寝てない割にしっかり食えた(笑)。
 ふたたび大浴場へ。ホテルが高台にある上、最上階の7階にあるものだから、温泉街や海が一望できる。十分に身体が温まったところで部屋に戻った。
 なあんも予定はない。当初の計画では、温泉街を散策し、海岸に出て、ホテルに戻るという雑なプランだ。お腹が空いたら温泉街の店で何か食べてよし、食べたくならなかったらホテルに戻って昨日買った大ぶりのデニッシュパンと珈琲で質素に済ませるつもり。
 山間の温泉場が時代とともに廃れていき、廃業した土産物屋や旅館が目立つことが増えてきた。熱川温泉は海に近いことや、関東一園から多くの観光客が来る伊豆半島に立地しているので、痛ましさを覚えるほどにさびれてはいなかったが、それでも営業を終えた昭和な土産物店や大型リゾートホテルがいくつも目に付いた。東京や神奈川は人口が多いため隠蔽されているが、地方というのはリゾートエリアに限らずどこも櫛の歯が欠けたような街並みになっている。もはや政治の力でどうにかなるものでもなかろう。
 温泉街を縦横無尽に歩き回ったあと、海岸まで出てみた。夏には海水浴場になる砂浜はひとっこ一人いなかった。
 海に面して「熱川ほっとぱぁーく足湯の公園」があった。ここにも誰もいない。
 わざわざ靴下を脱いで足湯に浸かるほどでもなかったのだが、どこかカフェにでも落ち着いて白石一文の小説を読む気持ちがあったものだから、足湯をしながらの読書でもしてみようか。重病で入院して死期を悟ったとき、旅の思い出を思い起こそうとしたら、案外と足湯で白石一文を読んだ、という記憶が甦ってくるかもな。
 それにしてもどうしてこうもネクラで破滅的な男を好きこのんで書くのかな。まだ大学にすら受かっていない高校時代から転落願望があった自分にとって、白石が繰り返しモチーフにしている人物造詣は親近感を覚える。足湯に浸って50ページを読んだところで汗が出るくらいに身体が火照ってきたので、やめた。
 駅に引き返し、そのままぐるっと遠回りしてホテルに戻ろう。午後1時くらいに着くだろうから、ホテルの部屋でパンと珈琲の軽いランチでいい。
 熱川駅の西口(?)近くに古そうな土産物屋が開いていて、店頭に朝市で売っていそうな野菜とかイチゴが並んでいた。ちょっとその前に佇み、70歳くらいの男と75歳くらいに見える土産物店の女将の会話を聞くともなく聞いていたら、ものの数分で男が「じゃあまた来る」と別れの挨拶をして店を出た。
 別にこの男をつけ回すつもりはなかったのだが、ホテルへ戻るべく結果的に彼の20メートルくらい後ろを歩くはめになった。スーパーのビニール袋を手に提げているので、どうやら地元民らしい。
 300メートルほどで男は少し派手な賃貸マンションの建物へと消えた。
 自分がその賃貸に住む、ということを想像してみた。家賃はいくらだろう? いちばん近い図書館はどこにある? ブックオフはあるのか? 大型スーパーって徒歩圏にあるの? 
 Googleに教えてもらうまでもなく、ここで暮らすのにはクルマが要る。いまならまったく問題などなく暮らせそうだが、それでも散歩がてらチーズとクロワッサンを買いがてら街まで、というような暮らしが成立しないところは結構しんどいかもしれない。
 ホテルに戻る道はいきなり登り坂になり、期せずして先ほどの賃貸マンションを見渡せるところに出てしまった。デジカメでマンションを撮った。うむ、悪くない住環境だ、と思うが、鎌倉のような甘やかされた街に30年以上もいるとつらくなるかもなあ。
 ホテルに午後1時過ぎ着。予定通りの軽食で済ませ、部屋から見える風景をデジカメで撮影したりしていると、今度は正面にそびえ建っている大型マンションのことが気になり始めた。ネットで調べてみると、「シーアイヴィラ伊豆熱川」という築35年のマンションで(https://www.civilla-atagawa.com/)、最低300万円程度から売り出されていた。今度は「このマンションに住んでみる、というのはどうだ?」と問いかけてみたが、「そう言われても、熱川温泉に住む必然性がないし」などと腰が退けてしまった。結構意気地がない俺。年を取ると功利的、効率優先になるもんだ。
 夕方までに白石一文の長編、読了。大浴場で心行くまで温泉も堪能した。
 夕食バイキングは昨日とほぼ同じだったが、鶏の手羽先を揚げて焼いた料理と筍の土佐煮とローストポークが新たにあったので食べてみた。デザートには小学生が好んで食べるようなミルクバーを1本。童心に返った3分間だ。
 夜11時、大浴場の露天風呂に浸かってから、無料の足裏マッサージ器を使った。いた気持ちいい。誰も来なかったので10分以上、独占した。天国だ。
 しかしこのあと暗転、今宵も睡眠薬がぜんぜん効いてくれず、落ち込んだのだった。

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