mixiユーザー(id:6327611)

2023年03月22日04:56

70 view

歴史は学ぶものではなく、追体験するものだと痛感しました。フランク・マーシャル監督「ビー・ジーズ 栄光の軌跡」(2020)をスター・チャンネルで再見。

劇場公開時はヒューマン・トラスト渋谷で見て、今回は契約中のスター・チャンネルが放送したので再見しました。前者は株主招待券、後者は契約中ということで、新たな出費がほぼ皆無だったということが素晴らしい。←DVD-Rに焼くからその実費がかかりますが、その経費は僕の人生の必要経費に織り込み済みです(笑)。

音楽ドキュメンタリーというものは、それが扱っている音楽に親しみを持っているかどうかで印象が大きく違います。だから僕の場合、ビートルズ関連だと圧倒的に乗り込みやすい。しかし同時に、こちらが乗り込む意欲に水をかける内容だとコテンパンに叩きたくなります。そういう意味でビー・ジーズは、僕にとって適当な距離感がありました。

いちおうレコード会社に籍を置いていた人間ですから、けっこう音楽ドキュメンタリーには目を通していますし、そこそこ他社の音楽にも興味を持っていました。個人的には、ニューロックというものが登場した時期にレコードを集めはじめた人間です。ビー・ジーズの場合は、僕の人生の柱である映画に関わりが大きいので、ただちに再見しました。

初鑑賞時の日記はこちら。
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1983975338&owner_id=6327611

しかし3か月前に見たばかりなのに、バリー・ギブ以外の弟たちがいつ死んでいたかを忘れていました。つまり時系列が定かではない。それどころか、バリー・ギブの直近のインタビュー映像を見て、バリー・ギブだと実感できないので困りました。しかし、歴史を勉強することは年表を記憶することではないから、別にかまわないと思います。

見直して感じたことは、フランク・マーシャルという(僕にとっては)映画製作者である人間が監督しているという印象が大きいのでした。もちろんビー・ジーズの歴史の中で「サタデー・ナイト・フィーバー」が占める意味が最も大きいだろうということは分かります。現在はソング・ライターとして歴史に輝いているのかな。

なにしろギネス記録を塗り替えたLP販売実績です。これは数の力として記憶したい。もちろん販売枚数なんか、本来は利潤を追う会社組織にとってしか意味はありません。売れた歌がいい歌だというセオリーは、あくまでも会社の言葉。最も多くの人間が見た映画が作品としてベストワンではないのと同じです。

ということで唯一人生き残っているバリー・ギブの姿で締めくくるこのドキュメンタリーには、ビー・ジーズの人生が(そしてそれを見て思い出す観客の人生が)濃密に反映されているのでした。これが観客と作り手の結合という、メディアとしてのドキュメンタリーの、ひとつのあるべき姿だと思いました。

そんな意識からNHKの「世界サブカルチャー史 欲望の系譜 日本」という番組の「第3回 逆説の60-90s」を続けて見たのですが、これがおもろない。同じように年代を表記し、その時代時代の風俗映像を並べるのですが、年表に付属して映像を並べただけでした。林真理子の体験談はともかくとして、なんたら言うコメンテーターが、そもそも時代を語れないのがサイテーです。

いわく“時代が変わっていくのに気づかなかった連中がいた”そうです。だったら、どう時代が変わったのかを示してから言えよ。戦後民主主義とそれに対峙した新左翼についても、中身を語れない人間が言葉を発しても意味がないのです。こういうふうに、60年代世代を“乗り越えたと誤解”した人間たちが、判断基準を利潤に求めた結果が今の惨状なのだと僕は思う。

このシリーズって、アメリカ映画についてのシリーズにはそこそこ資料的価値があったけど、この「日本」編は年表の意味もなさないと思いました。そして時代風俗を当時の新聞の見出しの大きさから拾って集めただけという編集には、とても20年から30年の時代を鳥瞰させるという中身が感じられません。時代をとらえた写真集を見たほうがマシだ。

途中に原一男の「ゆきゆきて神軍」の映像が挿入されますが、あのドキュメンタリーの衝撃は皆無でした。というか、取り上げている人間が「ゆきゆきて神軍」をきちんと鑑賞していないのではないか? 少なくとも原一男の「水俣曼荼羅」は見ていないでしょう。あれを見ていたら、ドキュメンタリーを歴史年表にしてしまう愚は避けるはずですから。

というような、ないものねだりをしても始まりませんね。とはいえ、膨大なアーカイヴからこの要約はいただけませんね。そんなことからネット検索していたら、これはEテレで番組として放送したシリーズ「ニッポン戦後 サブカルチャー史」の再編集なのだと分かりました。そりゃ、本気で見ていたらアカンわ。予告編の集大成よりもつまらんはずや。

ということで、賢明なる皆さんは僕のような人生の浪費はなさらないように、してしまった方には謹んでお悔やみ申し上げます。
5 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2023年03月>
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031