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2023年01月03日21:38

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2023年最初の読了本

 三が日が終わろうとしている。
 昨日2日はお寺の例大祭に出席し、檀信徒さんたちと1時間、読経と御祈祷。日蓮宗の祭儀は鈴(りん)と木柾、大太鼓が打ち鳴らされるため、目を閉じて読経を聞いていると信徒さんにあっては法悦、私のような非・信者であっても愉悦と呼べるようなエクスタシーを感じる、御祈祷の際は一人ひとりの参拝者に、僧侶が撰経(せんきょう)という仏具を頭と背に当てて、邪気を払ってくれる。私はほぼほぼ現世利益を求めていないのだけれど、修行され日々読経を務める僧侶が堅い撰経で我が身に触れていただくと、これで今年運が尽きて朽ち果てたとしても仕方ない、というような悟りを少しの間、感じることが出来る。

 紅白もお正月特番も見ないものの、箱根駅伝は5分程度見てはテレビから離れ、1時間後にまた5分程度様子を見ては離れるというパターンが長らく続いている。昨日、テレビを付けてみたら、駒大の監督が伴走車から選手に怒鳴っていた。「ここで男を上げろ!」と叫んでいたのだが、モラハラパワハラセクハラの3つが混合された"呼び掛け”なるものを聞いてすっかり嫌気が差してしまい、それを讃える実況アナも含めて自分との違いを感じさせられた。日本軍の戦場のリアルは知らないが、指揮官が兵に指図する様子をつい想起してしまったのだった。

 夜8時、入浴。浴槽に浸かって、元旦の夜も浴室に持ち込んだ稲葉真弓さんの『ミーのいない朝』(河出文庫)を再び読み始める。元日は70ページ(45分くらい)、2日目はもう少し長く80ページ。そして本日3日、浴槽に浸かりながら読んで読了。
 この文庫は単行本でも持っている。が、稲葉真弓さんのファンゆえ購入しただけでそのまま棚差しにしたままだった。文庫は稲葉さんが亡くなられたあと、まるで追悼でもするかのように刊行されたのだが、書店でその文庫を手に取って表4側の内容説明を見、さらに谷村志穂の解説を読むに至って、悪い印象を抱いてしまった。
<“ミー、さようなら。20年間ありがとう。あなたと一緒に暮らせて、本当に幸せだった。(中略)出逢いと別れを通して、ペットを超えた深い絆を描く感涙のエッセイ!>
 こんな説明文がカバーに刷られていて、谷村の解説は本文を引用しながら中身の美味しいところを示すことに終始している。両者とも高校の現国試験で決まってある「ここに書かれた文章を100字で要約せよ」という質問に対する模範解答例でしかなく、悪く言えばただの”やっつけ仕事”だった。私も勤め人時代はついついこんな感じで仕事をこなしていた。間違わなければそれでいいのだから。
 こんなに浅薄な内容ではなかった。エッセイとあるけれど、とびっきり上等なわたくし小説であって、詩的感性と表現が随所にちりばめられた教養小説とさえ言える作品だったのだ。猫ちゃんを飼い始めて看取るまでの愛猫記、というのは世にごまんとある。説明文も解説も、それ以上でも以下でもなかった。猫好きか、ペットロスの人向け、みたいなエッセイ集では決してない! 稲葉さんが自分自身の文学的世界を真摯に描写した文学作品である。
 2023年、すでに2冊、資料本を飛ばし読みをしたが、ちゃんと読んで最後の最後まで読み終えたのは『ミーのいない朝』が最初となった。いいスタートが切れたと思う。
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