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2022年12月26日01:18

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南極という未知の世界の美しい姿に驚くとともに、環境破壊というものの現実にも直面しました。BS世界のドキュメンタリーで放送した、リリアン・ヘス監督「南緯65度での観測」(2021)。

ベルギーとドイツの科学者たち9名が、20数メートルのヨットに乗って南極大陸を探検するドキュメンタリーです。imdbによると上映時間は68分ですが、NHKBS1では50分枠で放送しました。彼らが上陸した地点は、南米大陸に最も近い南極大陸の半島近くで、アルゼンチンとチリ、そしてイギリスが領有権を主張しているようです。

大きな砕氷船でなくヨットを使用したのは、その機動性を活用することで短期間でいろいろな成果を上げることが出来ると考えたから。9人のクルーには女性シェフが一人いるから、科学者は8名のようでした。みんなが口々に“食事が楽しみ”と言っているのが面白い。

南極探検の歴史は大航海時代に始まるようですが、いちおう19世紀末からが探検という学術的な方向で行われたとされているそうです。そしてベルギーという国は、その初期から参加しています。そんな背景があることを全く知らずに見ました。まさか南極の特定の場所に対して、領有権を主張している国があるなんて考えもしませんでした。

とにかく2021年の作品ですから、ドローンによるハイビジョン撮影がすばらしい。今まで見たこともない風景が(僕だけ?)、圧倒的な存在感を持って迫ります。よくCGIアクション映画が、“誰も見たことがない映像”などと宣っていますが、それが虚しい宣伝文句だと実感できるほど圧倒的にアクチュアルでした。

細かな科学的事実にも驚きます。たとえばある魚を捉えて内蔵を取り出すのですが、血にヘモグロビンが含まれていないとのことで赤くないのです。南極大陸の低温海域では、酸素が大量に水に含まれているからヘモグロビンは必要ないのだとか。そう言われてもピンときませんけどね。

僕が最も驚いたのは、彼らが昔の探検隊の“置き土産”(つまりゴミです)を発見した場面。たしかに命の危険を感じた場合には、持ち物をすべて捨ててでも生きるべきですが、リップクリームやチューブ入りの薬品などを大量に捨てていったのなら、なんとかしてそれを回収するべきでしょう。領有権を主張するイギリスの探検隊が残していったもののようでした。

彼らは40キロ以上のゴミを回収しますが、そればかりやっていられないから“後は英国に任せたい”と言ってました。このドキュメンタリーを見てもゴミ回収に動かない国があったら、そういう国が領有権など主張できないと僕は思いました。国家としてゴミを処分しないなら、今後南極探検を諦めるべきです。とはいえ、日本もタローやジローを置き去りにしましたよね。

ことほど左様に、生態系の破壊というものが行われてしまいます。現在では南米のチリやアルゼンチンから、南極観光旅行というものも企てられているらしい。まだまだ僅かな人数だから問題にならないかもしれないけれど、こういう方向性は考え直すべきですね。僕は寒いのが嫌いだから、まず行く気にならないので簡単に言い切ってますが。

とりあえず50分程度であれ、このドキュメンタリーを見ることが出来て僕は満足です。しかし、なぜ放送枠を拡大しないんでしょうかね。民放のようにスポンサーの意向を優先しなくてもいいNHKが、貴重なドキュメンタリーを短縮してしかオンエアしないというのはいかがなものか?

そこまで費用対効果とか、資本の論理が優先していたら、それこそ人類は滅びへまっしぐらだと言う他ありません。いいかげんに目を覚ましましてほしいと思います。
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