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2022年12月24日13:56

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実際の事件を知っている人なら、この映画を“いい映画だ”と言えるかもしれない。ラム・マドヴァニ監督「ニールジャー」(2016)。

この「ニールジャー」を、僕はCS局のムービープラス(240ch)で見ました。インド映画らしいけど現代劇だし、ハイジャック事件を扱っているらしいということだけ、番組情報をから分かりました。いつものようにimdbを調べたら、評価点が7点台なので見ようと決めたわけです。

物語は、客室乗務員として勤務する22歳のニールジャー(ソナム・カプール)が主人公。彼女は数日後に23歳の誕生日を迎えるのですが、今回のフライトでは初めてチーフ・パーサーという役目をもらい、出世が約束されています。勤務するパンナム機(1986年の話です)が、インドから隣国パキスタンのカラチを経由してヨーロッパへ向かうのでした。

まず、仕事で出世が見えたニールジャーが、歌い踊って誕生日の前祝い。それとカットバックして、過激派組織がハイジャックを企てています。ここにニールジャーの結婚が失敗した過去の話が回想シーンとして登場して、僕はがっかりしました。いまおかしんじさんとお会いしたときに、“回想シーンはドラマの流れを止める”と聞いていたのですが、まさにその見本という映画でした。

アメリカ映画なら終盤のハイジャック犯たちとの銃撃戦に向かって、一直線に進むはずです。しかしこちらは余計な回想シーンが入り、サスペンスを阻害してしまう。そういう意味でインド映画の“よくある構成”である歌や踊りと活劇というものが頭をよぎり、勘弁してくれよとなった次第です。

しかし考えてみると、僕は1986年9月のカラチ空港でのハイジャック事件を知らないし、ニールジャーの身の危険を顧みずに乗客たちを助けた行動も知りません。もしかしたらニールジャーという固有名詞だけで、インドの人々にはこの事件を思い出させるのかもしれないと気が付きました。

だから悠長に見える家族関係や、ニールジャーの前夫の横暴な描写などを盛り込むことが、事件を予め知っている観客には“味”なのでしょう。しかし僕にはすべて、サスペンスを阻害する夾雑物でした。回想シーンをカットして、90分にまとめたら、圧倒的に面白くなったと思います。

そういうことを言うと、ニールジャーの英雄的行為をばかにするのかと怒られるかもしれませんが、娯楽映画としては僕の言い分が正論なのです。逆に、“よど号乗っ取り事件”を単なる娯楽映画として作られたら、僕は怒り心頭もしくは完全無視を決め込むでしょう。それが映画というものに対する、それぞれの立場の違いなのです。

とりあえずインド国内では、そこそこ人気となった映画のようで、アメリカの大手映画会社フォックスの系列会社がインド国内でも配給していました。先述したように、立場が違えば“いい映画”ですから、それ以上のことは語る必要はないでしょう。しかし見たあとに気づいたことがあります。それはimdbの得点分布でした。

imdbの得点を投票している人の数が2万3000人ほどいて、そのうち42%が8点以上を投じています。問題は、Top 1000 Votersという常連映画ファンの投票数が80人しかいない上に、彼らの平均が6.6なのでした。もちろんimdbの投票者の多数が、「ショーシャンクの空に」や「ゴッドファーザー」を“史上最高の映画”と考えている人々ですから、そんな得票を信じてはいけませんが、この「ニールジャー」に投票した人々は、そんなimdbの主流からも遠くはなれていたという事実がポイントなのです。

つまり、この映画は僕のような人間にとっては“いい映画”ではなく、“退屈な凡作”なのでした。これからご覧になる方は、そのあたりのことを知っていたほうが時間を無駄にしないと思いますよ。少なくとも主人公が歌う場面は、間違いなく不要だと思いました。
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