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2022年08月24日20:10

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『マロニエ洋菓子店』の「くるみ第三楽章」

 午前10時半、スマホに着信があった。液晶画面には尊敬する老作家の名があった。
 ご無沙汰しているのでなんとも嬉しい。
「お久しぶりでございます」と彼女は口を開き、老齢ゆえの無精を詫びていた。緑内障の悪化によって片眼が見えなくなり、耳も片耳は聞こえない。身体を動かすのも大儀だし、おまけに帯状疱疹が顔にも出て外出がままならない、と。しかし、声は以前と変わりなくお元気そうで、しかも話の最後には、「わたくし、遺書という意味合いも含んだ童話を書き上げました。が、出すあてもないでしょう」などと、その身体でも日々精一杯生きていらっしゃる様子を垣間見ることが出来た。
 私にお元気なのですか? と尋ねられた時、「そうですねぇ、○○さんが私の年代の頃、国内国外を問わず旅に出掛け、毎週のようにクルマを駆ってJazz喫茶に通い……という生活に較べれば40パーセントくらいの元気、と言えます」と応えたら、大きな声で笑われた。
 せめて52パーセントくらいの元気を目指しなさい、と。
 電話を切った後、先週から気になっていたある洋菓子店に、とびっきりの洋菓子を注文しようと思った。それは以前、彼女が懇意にしていた旗の台の「マロニエ洋菓子店」で、その店の「くるみ第三楽章」を私に送ってくださったのだった。一口食べて、びっくりするほど美味しかった。あまりの豊かな甘さとほろ苦さに感動した私は、恩師(たぶん老作家と同年齢)に送ったくらいだ。
 今度は私が老作家に「くるみ第三楽章」を送って差し上げよう。
 ネットで電話番号を調べたら、2021年で閉店していた。ああ、ちょっと遅かった。パティシエも歳には勝てなかったのか。くるみ第三楽章は菓子職人が作り上げた銘菓以上の銘菓だけに、がっかりした。これと同じくらいに美味しい洋菓子をなんとか探し出して、老作家に送ってあげよう。しかし、私という人間は、美味しいものの知識がとりわけ乏しい。
 
 昼からは、詩人の遺稿をどう並べていくか、うんうん唸りながら構成を考えた。
 途中、iPhoneでメルカリアプリを開いたら、コメントに対する回答があり、その商品を買うかどうか、かなり迷った。
 うちに2脚の肘付き椅子がある。キャスターも付いているので、身体を動かしやすい。25年前に買い求めた椅子なのだが、猫が爪を立て、犬が囓ったりして、(ぼくと同様)ポンコツになっている。それと同じ椅子がしかも2脚、メルカリで見つかったので(同じ出品者)、買うかどうか迷った末、値段交渉と状態について尋ねていたのだった。
 相手は折れなかったので値下げ交渉は決裂したのだが、買うことにした。少なくとも自分ちの椅子よりは綺麗な状態だろうから。こうなったらお金の問題で折れたくない。
 そうこうしているうちにラズリの散歩時間となる。昨日ほどではなかったが、暑かった。
 家に着いた時点で、戦争展の代表から電話がかかってきた。昨夜、韓国の新聞で取り上げられた紹介記事をメンバー全員にccメール添付で送ってきて、「誰か翻訳してくれませんか? Google翻訳だと意味がよくわからなかったので」と書いていたので、韓国系サイトで試しに翻訳をしてそれをリライトしたものを返したのだった。
 よく出来た翻訳文だと言ってくれたので、「これからもぼくに任せてください」などと調子こいてる俺。まあ、ひとの役に立つことを一日一個くらいはやりたいので、くるみ第三楽章は失敗に帰したが、よかったよかった。
 晩ごはん前、2013年8月末に亡くなった友に宛ててはがきを書く。住所は彼の奥さんだが、宛名はあくまで友人名である。彼に向いて出すのだから。
 書き終わって郵便局まで散歩がてら投函しに行った。
 今年も夏の終わりが近づいた。
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