中世末期、イギリスでは残虐で趣味の悪いギャンブルが大流行していた。
荒ぶる熊を半身、頑丈な綱で大木に縛り付けておく。猛犬をけしかけ、動けない熊を噛みつかせる。
ひと噛みふた噛みし、犬が無事に帰ってきた→犬に賭けた方が勝ち。
熊が束縛を破り、犬を叩き殺した→熊に賭けた方が勝ち。
しかしながら、縛り方が甘く、時には熊が縄を引きちぎり、犬だけでなく、賭けをした人を食い殺すこともあった。
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大変不謹慎な喩えになるかもしれないが、この熊がロシア、犬がウクライナ、けしかけているのが、賭けをしている人で、彼らこそ米欧直接のウクライナ・ロシア戦争の当事国に見えて仕方がない。
■一線を越えてしまった「熊いじめ」の行方■
8月18日深夜、ウクライナ第二の都市・ハルキウ(ハリコフ)北方に位置するロシア軍の一大補給基地のベルゴロドでも大爆発、炎上を起こしている。
今まではさしものウクライナ軍もロシア本土の、それも基地に直接攻撃をしたという報道は無かった。しかしながら本土のこの地域としてはロシアの一大補給基地に攻撃した(中央の写真)。
▲良かったらカーソルを動かしてみて下さい。下方にハルキウ(ハリコフ)が出て来ます。
クリミアの爆発も、ベラルーシの空港での爆発も、そしてベルゴロドでの炎上も長距離打撃兵器が使用された可能性は濃厚である。
しかしながらウクライナには確かにアメリカからハイマースは供与されているものの、こちらは流石に100kmには満たない。射程距離約300kmのエイタクムスは供与が見送られた経緯がある。ウクライナ軍が現在保有する長距離打撃兵器で代表的なものはハープーンミサイルで、こちらはデンマークなどから供与されたものだ。射程距離は300kmだが、対艦ミサイルである。
アメリカの戦争研究所(ISW)などによれば、どうもウクライナ軍はこのハープーンミサイルを改造した可能性があると指摘している。
ウクライナ・ロシア戦争で今回のロシア本土の本格的な高価値目標への長距離打撃兵器による攻撃で、一線を越えてしまった可能性はある。
「それならば戦術核兵器ぐらいならば使用しても良いか。」
とプーチン大統領が考え始めても全く不思議ではない。
これが唯一の被爆国である日本からすると非常に怖い。
■核兵器被害へのお手軽なアメリカの認識■
更に「熊いじめ」をけしかけているアメリカは上の方であっても、核兵器の被害に対し、お手軽な認識しかない。アメリカ人は広島・長崎の原爆の被害予測についても浅薄な認識しかない。1947年にアメリカのLIFE誌が、
「核戦争の被害をどう食い止めるか」
という特集を組んだ。その時に実例として引き合いに出された広島・長崎原爆がなぜあれだけ被害が広がったのかという箇所について、家屋が燃えやすかったからだと書かれていた。爆心地の高熱も爆風の激しさも同じようなものだという論調で進めている。更に不見識なことに、ろくに放射能被曝による被害については言及されていない。
原爆が投下された翌々年の1947年ですら、この程度の認識だったのである。
幸いにして(?)米軍がその後核兵器を実戦で使う事はなかった(注・イラク戦争で劣化ウラン弾や気化爆弾を使用したという疑いはある)。とはいえ、原爆の被害について、アメリカの上の方の人達のお手軽な認識しかないところが本当に怖い。
プーチン大統領は以前メディアから
「大統領閣下。貴殿は暗殺を恐れていらっしゃるとのことですが?」
と衝かれると、彼は
「我が国では縛り首になる者は自ら溺れ死んだりはしないものです。」
と答えている。この真意は大物に殺されるために、命を大事にしているのだという意味なのだろう。
解せないのは、今まではTwitterでウクライナの政府高官、軍の高官が戦果について不敵で勝ち誇った呟きが多かったのに、ここへ来てなぜ公式発表がないのか。士気軒昂につながる場合の方が多いのではないか。それどころか、烏ロ両国ともに互いがあいつがやったと言い合っているところすら見受けられる。
このあたりに「熊いじめ」が終わっては困る連中の意図が隠されているような気がしてならない。
ロシア本土攻撃は「熊いじめ」のひと噛みになったのは間違いないだろう。
■日々強まっていくゼレンスキー政権の自己矛盾■
日本は米・欧のNATO諸国と異なり、直接の当事国ではない。これは当のウクライナ人も認めている。だからマスコミが挙って煽動している反ロヒステリーに染まる必要は全くない。経済制裁には加わっているものの、直接の当事国ではないからこそ、冷静に考えることが出来る事が出来るはずだ。
歴史を紐解けば、何一つ悪いことはせず、平和に暮らしていたウクライナ人にロシア軍が一方的に襲い掛かった。攻められてかわいそうとは単純には言い切れない部分もある。
特に2014年のマイダン暴動では2010年に選挙で大統領になったヤヌコヴィッチ政権をアメリカ国務省、CIAの特殊部隊(アカデミなど)、ウクライナのネオナチ勢力を利用して打倒し、ゼレンスキー政権が発足した。
ゼレンスキー政権はドネツク、ルガンスク州で非戦闘員を虐殺した。犠牲になった人達は1万人とも1万5千人とも2万人も云われる。ドネツク州では人口の75%、ルガンスク州では69%がロシア語を話す。ところがこの政権はウクライナ語を公用語とし、もともとその地域で使われていた言語を1ランク下の地方語として残したものの、何とロシア語は地方語扱いにもしなかったのである。
それだけではない。日本のマスコミは殆ど報じないが、実は未だに首都のキーウ(キエフ)ですら、ロシア系住民は住民税を30%増しで徴収されているのだ。
これでは暮らしていけない、という事でドネツク州とルガンスク州が独立し、それをロシアが支援し、ウクライナに攻め込んだというのが今回の戦争の流れである。或る意味、五族共和を唱え、満州国を建国して支援し、大陸に侵攻した日本と構図は驚くほど似ている。
プーチン政権が一貫して停戦協定の最低条件として提示している、東部二州の非武装化はウクライナにとって、到底認められるものではないだろう。しかし長引けば長引くほど、自国の領土と強弁を弄している東部二州の住民にやったことが次第に炙り出されて来るはずだし、国外への避難民も増えるので、持久戦を避けたいのではないか。現にギリシャ、イスラエル、南アフリカなどではゼレンスキー政権をネオナチ政権と見做している。停戦するまでこうした国は増え続けるだろう。
場合によっては対ロ制裁に参加した国からも出るかもしれない。
だがアメリカ(とイギリス)は先ず停戦を許さない。
こうなって来ると、熊そのものよりも、熊いじめを続けたくて仕方がなく、犬を煽ってけしかけているやつが最も悪いという事になる。
特に東欧やウクライナ情勢をロシア以上に不安定化させたアメリカの責は大きいのではないだろうか。
(了)
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