2018年7月末に来日し、日光に観光に訪れた、フランス人教諭のティフェンヌ・ヴェロンさんが失踪し、3年が経過した。栃木県警も懸命の捜索を試みるが、遺留品ひとつ見つからず、県警も頭を抱えている難事件のひとつだ。
その1で事件概要を御覧頂いたが、今回は蓋然性の追及を試みたい。
■実行されなかった旅行計画■
知れば知るほど、ヴェロンさんは学校の先生らしく、几帳面な旅行計画を立てていることが判明した。
彼女の旅行計画を不自然に思った一つ目は、7月27日夜に訪日は致し方ないとしても、翌28日14時(注・拙稿では全て時制は24Hで表記致します)に東武日光駅着という遅さである。彼女の旅行のメモなどを具に見てみると、
2018年7月27日(金)夜 成田空港
成田で一泊
7月28日(土)14時 東武日光駅到着
7月29日(日) 日光などを観光
7月30日(月) 青森県
となっている。皆様も私もそうだが、限られたバカンスであれば、些か強行軍でも多くの場所を回りたいと考えるのが心情ではないだろうか。
彼女の観光リストは我々日本人でも凝った人でもない限り行かない場所まで、何と25か所もリストアップされていたことが判明した。
リストを和訳してみる。
〜7月28日(土)〜
1.小杉放菴記念日光美術館
2.日光東照宮美術館
3.日光東照宮宝物館
4.不明
5.憾満ヶ淵
6.不明
7.不明
8.不明
9.不明
残念ながら、私のフランス語の語学力ではここまでだ。9か所のうち、自信を持って確実に読み取れたと言い切れるのは4か所のみである。とはいえ、9か所もチェックしているところを見ると、矢張りヴェロンさんも我々同様、限られた時間で出来るだけたくさんの名所を回ろうというスタンスは感じられる。しかも効率が良い。もし私が子どもたちの日光の遠足のプランを頼まれたら、チョイスする名所ばかりだ。
但し、このプランは実行されなかっただろうと考える。到着が余りにも遅く(14時ごろ東武日光駅着)、回り切れるとはちょっと考えにくい。
14時という異例なほど遅い到着についてワイドショーなどでは全く報道はされていない。
報道されていないということは、東武鉄道に列車の運行の遅延はほぼ無かったと見るべきだろう。
恐らくだが、ヴェロンさんは行き先を間違えたか、乗り継ぎに失敗したのではないだろうか。東武線は乗り慣れていないと行き先が様々なので、乗り間違えることはままある。親類は直通サービスが始まる以前、葬儀の際、本来であれば東武宇都宮線に乗るところを東武伊勢崎線に乗り、群馬まで行ってしまったこともある。ましてや今では東武鉄道でも直通サービスの乗り入れはある。更に彼女は外国人である。ないとは言い切れない。
或いは想像を逞しくすれば、持病のてんかんの発作が起き、途中駅で下車したのかもしれない。これが埼玉県内であればまだ本数もそこそこあるが、栃木県内に入ってからだと親類の実家が栃木県なので分かるが、本数は限られてしまう。
せめて彼女が持参したてんかんの常備薬の数と降車した電車が特急なのか、準急・各駅停車なのか分かればと思う。もし各駅・準急であれば、途中で発作が起きてしまった可能性が濃厚である。各駅・準急に外国人観光客が乗車するとはちょっと考えにくい。
なお、東武鉄道は以前は「快速」が最もコスパが高かったが、SLと直通サービスを優先したため、今はない。宇都宮の手前までで良く、コスパを重視するのであれば、JR東の上野東京ライン/湘南新宿ラインをチョイスした方が廉価の場合も出て来た。
話を戻そう。
7月のこれらの美術館、宝物館の開館時間は17時までなので、6〜9の場所はもっと遅くまでオープンしている、或いは入場時間に制限がない名所であることは容易に想像がつく。
宿での行動はどうか。
宿のチェックインは16時からだったと考えられる。
ヴェロンさんとフランス本国にいる家族のメールのやり取りでは不安、不平を示すコメントはない。それどころか、
▼7月28日(土)23時33分:宿の人は親切で良い人で、建物がとってもかわいい色をしているわ。コーラルオレンジよ。
(cf.その1の写真)
▼29日0時15分:ちょっと休んで、夕食を摂るわ。ホテルの立地は最高。街探索には便利。
もう絶賛と云っても良いほどだ。
因みにパリと東京とでは時差が7時間ある。フランス本国は夕暮れ時。夕飯の支度の合間にメールしたことを想起させる。
なお報道ではコンビニ(7-11)で彼女が防犯カメラに写っている姿が公開されている。0時15分のメールで夕食を摂っていないと書かれているので、その直後にコンビニで食料を調達しに来たことは想像がつく。ただ入口付近でコンビニの商品を持っている姿はてんかんという持病を抱えているものの、にこやかである(cf.写真)。
翌日も彼女はプランをしたためているので、見てみよう。
〜7月29日(日)〜
1. 別所跡
2. 影向石
3. 小杉放菴記念日光美術館
4. 書き込みなし(不明)
5. 東照宮美術館
6. 不明
7. 東照宮宝物殿
こちらは比較的読み取れた。
何らかの事情で行きそびれた7月28日(土)のプランを挽回しているのは窺える。不明の部分が100%は解読出来ていないので、絶対とは言い切れないものの、7月29日のプランで憾満ヶ淵が出てきていないところを見ると、彼女は28日の夕方近くに訪れた可能性が濃厚である。
しかしながら、である。朝食の際、居合わせたフランス人、ドイツ人カップルと今日は憾満ヶ淵に行くの、とヴェロンさんが話していたのを警察も確認している。
28日に私は行ったと考えているし、仮に行かなかったとしても、29日に限られた時間で行くほど魅力的なところなのだろうか。実際、彼女は学校の先生らしく、効率的にコースを組んでいる。憾満ヶ淵だけが離れているのだ。
まだある。
このカップルたちはヴェロンさんは中禅寺湖、東照宮に行くとも言っていたと証言しているが、嘘ではないものの、勘違いではないか。実際28日は何らかの事情で14時に東武日光駅に着いてしまった。最早限られたところしか行けないとなると、日光東照宮を差し置いて、日光東照宮の宝物館を訪れるのだろうか。いの一番に東照宮は訪れたはずだ。
或いはヴェロンさんのご兄弟の証言では彼女は用心深いとのことだ。このカップルたちに何か違和感を覚え、当たり障りのない無難な名所を喋ったのかもしれない。
そもそも中禅寺湖はホテルから直線距離でも20km近くある。彼女がいの一番に行くところではないだろう。
■不審な「ガイドおじさん」■
調べてみると不審者情報が全くない訳ではない。その人物が出没しているのは、瀧尾神社である。そう、彼女が29日に訪れた可能性が高いスポットのひとつなのだ。こちらの神社自体は心霊スポットではない。祈願していた際、影向石という岩の上に女神が現れたとされる、パワースポットである。
問題はこの神社の入口にある一枚の張り紙だ。
名所を案内するという口実で、若い女性に必要以上につきまとい、身体に触りたがる60代ぐらいの男がいる、神社側としては決してガイドを雇った覚えがないので、ご注意下さいという趣旨だ。
実際、他のSNSでも以前からこの手の人物が出没し、身体を触られ、嫌な思いをしたという女性からの書き込みがあった。
地元の方々の話ではその男の乗るクルマが青いクルマだったというのである。
ヴェロンさんの兄はインスタグラムで、観光リストにあった、大谷川(だいやがわ)の渓谷にある、憾満ヶ淵で問題の青いクルマの写真を発見。残念ながらナンバー、具体的な車種、更に乗っている人物は映っていなかった。しかしこの写真の撮影日が彼女の失踪直後らしい。更に県警が要所要所にヴェロンさん失踪の張り紙を設置したものの、神社とこの淵は剝がされていたとのことである。
また地元の方々によると、何と青いクルマから降りて来た男がヴェロンさん失踪事件の貼り紙を剥がしていたという情報もあった。
■事故か、拉致か■
栃木県警は大谷川の下流域まで捜索し、更にダイバー、ドローンまで用いた懸命の捜索を試みるも、見つかっていない。
この点、渓谷で行方不明になった、小倉美咲ちゃんの事例よりもずっと親身になって捜索していると感じざるを得ない。
★小倉美咲ちゃんの場合は拉致の可能性が濃厚だと考えているが、最近事故の可能性も捨てきれないと思うようになった。ではなぜ見つからないのか。その理由についてはまたの機会にしたい。★
話をヴェロンさんの件に戻すと、見つからないのは、事故ではないからだ。
となると矢張り拉致であろう。実際、日光では安倍政権の「インバウンド政策」で、日本人にはカネを使わせないようにする一方、外国人にはカネを落として貰うといった、途上国レベルの景気対策をやった「おかげ」で、外国人目当ての犯罪が観光地では増えるようになった。
字数もだいぶ増して来たので、現在得られた情報だけでという話になるが、失踪のシナリオを次回に蓋然性の追及という見地から考察してみたい。
最後まで御覧頂きまして、ありがとうございました。
(続く)
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