知り合いの日記に、相手の知らない事を言うときは、恥じらいを持って言う、と書いてありました。
なるほど納得です。
しかし、これを聞いてピンとくる人と来ない人がいるでしょう。
恥じらいを無くすと人はえげつなくなります。
えげつないと言う本来の言葉の意味も、知らない人が多くなってきました。
えげつないの語源は、漢字で書くと「意気地無い」です。
あれ?っと思ってた人もいると思います、これは「いくじない」ではないかと。
そうなんです、漢字は全く同じなんですが、読み方は、えげつないは「いげちない」と読み、意味も違ってきます。
いげちないが、えげちない、となり、えげつない、となったと言われています。
言い方が変わるように、意味もだんだんと変わってきました。
そして、えげつないは昔から良くない意味で使われていましたが、最近は良い意味にも使われはじめました。
「あいつ、えげつないほど上手いなぁ」
古くは「しあわせ」もそうです。
しあわせは幸せと、仕合せと書く場合があります。
仕合せは、昔は巡り合わせの意味で、良い巡り合わせにも、悪い巡り合わせにも使われていました。
しかし、今は、仕合せは良い巡り合わせの意味でしか使わなくなりました。
また最近では「ヤバい」という言葉があります。
実はのこ言葉、元々は江戸時代から使われていた言葉で、江戸時代の矢場(射的場)では隠れて売春が行われていたため、そこにたまたま居合わせ、役人から目をつけられたら危ないという意味で、「ヤバい(矢場居)」と言われるようになったというのです。
つい最近まではそうゆう意味しかなかったように思えるですが、しかし、最近では「この味、ヤバい」と言えば、ものすごく美味しいと言う意味で使います。
言葉の意味や読み方が変わるのは、人の心が変わって来るからです。
流行歌やテレビCMなど、当時の世の中の流れとセットで感じなければ、違って捉えてしまうことがあります。
森さんの話し方は昔は笑い話だったものが、今はダメとか、とんねるずの貴明さんの補茂田保毛男は、もうギャグとしては通用しないとか。
恩返しという言葉は一般的に残りましたが、恩送りという言葉は死語になりつつあります。
それは、恩送りという考え、感じ方を、人々の心が必要としなくなったからです。
物を送る時、ご笑納下さい、と言って渡すのが一般的だった頃の人々の心と、良いものだからあなたに差し上げる、と言って渡すのとは、あげるほうも、もらうほうも、心が違ってきます。
日本人は恥の文化だ、と言った時の恥を、恥ずかしいと感じるのか、恥じらいと感じるのかで、良いイメージと悪いイメージに別れます。
長所と短所は裏と表の関係なので、どちらに注目するかはその人であり、時代だと思います。
忘れていた事で、かつて、自分の息子に「一番お気に入りのものを差し上げます、どうぞ」と言われたら、二番目を取りなさい、と言ったことがあります。
それをつい最近思い出すきっかけとなるCMをみました。
たしか、ウーバーイーツのCMで、黒柳徹子さんがお相手の女性に盆栽を「一番好きなのを持っていていいわよ」と言って、その女性が「これにします」と言うと「それ、私の一番のお気に入りなの」というCMです。
これを見て、面白いなあ、と思う人と、さっぱり意味がわからない、と感じた人がいると思います。
ただ、これを笑い話として作るということは、既に少しづつ意味が変化している証拠です。
そして、あと数十年、いゃ、数年後には、全ての人が、あのCM、さっぱり意味がわからない、という時が来ると思います。
ちょうど、旬の野菜がわからなくなったように。
浦島太郎は誰もが知っている昔話ですが、浦島太郎の昔話の意味、教訓とは何でしょうか?
亀を助けることで、竜宮城で楽しい思いをする。
いい事をしたら、必ず褒美がもらえる。
それなのに玉手箱を開けたら老人になってしまうのは何故なのか?
開けないで下さい、と言ったのを破って開けたからなのか?
それなら、何故開けられないような玉手箱を渡したのか?
玉手箱を開けて歳をとった浦島太郎には実は後日談があります。
浦島太郎の元になった『御伽草子』には、
浦島太郎が竜宮城で3年を過ごしているうちに、地上では700年の歳月が過ぎていました。
絶望した浦島太郎がかたみの筥(はこ)を開けると、紫の雲が立ちのぼり、太郎は老人の姿になってしまいました。
さらにその後は鶴となり、「蓬莱山」という仙人が住むといわれている理想郷へ飛び立ちました。
同じ頃、竜宮城の女性も亀へと姿を変え、蓬莱山へと向かうのでした。
当時の時代に生きていなければ本当の意味はわかりません。
ただ、この物語に普遍的な真理が隠されているのだとしたら、言葉でわからなくても、その時になれば、心で理解出来ると思います。
老人浦島太郎になった今だからこそ、見た目の玉手箱ではなく、心で感じる玉手箱を開ける準備が整ったのかもしれない。
理解ではなく、感じることが出来るように。
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