自分の貧弱な感性と語彙力では、詩を書く気になれない。
ワカメを拾いに行ったときに一瞬、違和感を覚える光景があった。しかし、話を聞いて納得するとともに、微笑んだ。その微笑みはいまも続いている。海岸に注ぐ光の照度が倍にも3倍にもはね上がって、イエーツや稲葉真弓さんのような詩を書けるものならどんなに素適なのに、と思ったのだった。
由比ヶ浜にはレジカゴを持った7、8人の少年少女がいて、腰をかがめては海藻を拾い上げてカゴに収めていた。初めは自分の目的と同様にワカメ採りか、と思っていた。遠目からしばらく様子を見ていると、片っ端から拾っているように見えた。
近づいて行くうちに、彼ら彼女らの顔がはっきりしてきた。
ちょうど真ん中あたりに20歳代の優しそうな女性が立っていたので、訊いてみた。
「食べられそうにないような海藻をなぜ拾い上げているのですか。海岸清掃でしょうか」
きっと同じような質問を受けることが多いのだろう。彼女はやや面倒臭そうな表情をしながら即座に答えた。
「海藻で豚を育てているのです。鎌倉海藻ポークというブランド豚で、循環の取り組みの一つです」
無数に打ち上がる海藻というゴミで養豚?
あの子たちは障害者施設の子どもたちだったのか?
彼女の短くて的確な返答で疑問は氷解した。
その瞬間、眩しいような光の下で楽しそうに海藻を拾う子たちの姿に打たれた。
村上春樹の『神の子どもたちはみな踊る』は震災後の人々を描いた短編集だが、このタイトルが思い浮かぶ。
今も私はそのときの気持を大事に、卵を温めるように抱いている。
今日、収獲したワカメが乾燥したので取り入れた。
気温が日中、窓越しに20度前後になったので、明日にでも黄金トウガラシの種を播いて苗作りをしなきゃ。
鎌倉海藻ポークの説明はこちら
https://www.nippon-foundation.or.jp/journal/2020/52145
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