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2021年03月06日00:46

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カタログから仄見える欧州ヤリスと本国のヤリスとの違い

■トヨタ「ヤリス」、欧州カー・オブ・ザ・イヤーに
(朝日新聞デジタル - 03月02日 18:40)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=168&from=diary&id=6431248

■どんな家でも三代で滅びるを実践してしまったヴィッツ■

ヴィッツとヤリスはとてもペットネームで苦労したクルマだった。初代ヴィッツの初期のカタログの表紙はヴィッツ(ヤリス)と書かれている。トヨタとしてはホンネではヤリスにしたかったに違いない。

ゆとり世代の若い人には分からないだろうが、デヴューした平成11(1999)年当時「ヤリマン」という言葉が流行った。免許取りたての若い女性が乗る可能性の高いクルマで、ヤリマンという言葉を想起させる言葉は好ましくないという判断で、ヴィッツという車名が選ばれた。

ならば欧米仕様のヤリスはなぜヴィッツにならなかったのかといえば、これはこれで問題があった。韓国のヒョンデ(現代自動車)にゲッツ(日本名TB)というヴィッツと真っ向から被るBセグメントのクルマがあった。

ヴィッツとゲッツ、発音は確かに似ている。たかがそんなことで、と思うかもしれないが、欧州ではトヨタといえどもこのセグメントは非常に厳しい。群雄割拠の強敵揃い。そこで万全を期してトヨタらしく、ネガを潰して商戦に臨む為、ヤリスになった経緯がある。

結果は見事に日・欧でカー・オブ・ザ・イヤーをダブル受賞。

初代ヤリスとヴィッツは売れに売れ、ホンダ・フィットの登場まではカローラを脅かすほどにまでなった。トヨタとしては優遇税制の軽自動車の牙城を突き崩したかったようだ。価格も1Lでパワステ、エアバックつきで当時94万円(税込)と今では考えられないぐらい廉価で売られていたのである。

二代目はクオリティをぐんと上げ、初代の遺産を引き継いだ。収納の多さは今でも驚愕モノだ。ただハンドリングは正直言って、初代との関連性は余りない。どちらかというと、車格は一つ上になるが、プジョー306のようなハンドリングで、フランス車のそれを範としているのではないか。

三代目はトヨタが最も元気のない時期に開発された事もあり、完成度は高いが新味が全くない、そんなクルマだった。新しい提案といえばシングルワイパーであることしか印象に残っていない。ただそれでも約10年保ったのはトヨタらしい営業力と、顔を変えただけではない、薄紙を重ねるようなカイゼンで命脈を保った。

しかしそれでも三代で終わった。初代スターレットは昭和48(1973)年だから、26年。ヴィッツもそこまでは長くないが、20年で終えた。

※スターレットはアフリカ、インドではスズキ・バレーノのOEMとして復活しています。
但しエンジンはスズキの1Lターボ、111馬力のエンジンではなく、トヨタ製の1.4L92馬力のNAですが。

ヴィッツといえども3代で終えた。どんな家でも三代で没落するという格言を見事に実践してしまったのである。

■欧州ヤリスは日本のヤリスよりジェンダーフリー■

三代目ヤリスの時も一度は欧州カー・オブ・ザ・イヤーにノミネートされた。但しこのノミネートされたのは、日本にはないディーゼルターボのヤリスだった。クルマに不勉強なマスコミはトヨタの事を頻りに

「ハイブリッドのトヨタ」

と評しているが、日本未導入のディーゼルターボ車も欧米では高い評価を獲得していた。
嘗てはMINIもヤリスに搭載のディーゼルターボを載せていたほどだ。スペックだが、1.4L、90馬力、トルクは20.2キロとマツダ2のディーゼルターボほどパワフルではないものの、0-100km/hで10.4秒をマークしている。トヨタは実は色々とトライしているのである。但し日本では「ハイブリッドのトヨタ」と誤解されていた方がハイブリッドを売りやすいから、ヴィッツには頑強にディーゼルターボを載せなかったのだろう。

なるほど、不勉強なマスコミの報道に乗ったふりをするトヨタはなかなか強かだ。

今回、アメリカのバイデン政権が環境問題に大きく舵を切った事で、欧米各国もそれに倣い、それまではディーゼルターボがなければ欧米では商売にならなかったのが、EV、ハイブリッド、燃料電池車に力を入れるようになった。

今回のEUヤリスのラインナップもそれに追随している。

日本には1LNA、1.5LNA、1.5Lハイブリッドなのだが、1.5Lハイブリッド以外は国によって異なる(これを業界用語では「仕向け地」という)。先代までラインナップされていたディーゼルターボは無し。

欧州ヤリスと日本との違いは外観上は大きな差がないが、カタログ等を見ると、求めるものの違いに驚かされる。▼

https://www.toyota-europe.com/new-cars/yaris/

日本のカタログでは快適装備、便利な装備などに力点が置かれているように感じられるが、欧州のサイトでは比較的細かくスペックまで書かれている。

まあ、その割にはタイヤのサイズが書かれていなかったりするのだが、上位グレード(プレミアム、スタイルと謳う)には17インチアルミを履く。リアブレーキは全てドラムブレーキとなっている。1.5Lの6MTはディスクの方が良いのではと思うが、それをやると取り回し半径が大きくなるので、諦め、その分タイヤを大きくしているのかもしれない。因みに3代目のヴィッツRSは全輪ディスクブレーキではあるが、何と5.6mもあった。

日本のカタログと異なり、欧州のヤリスの取り回しは直径で記載されている。半分にすれば日本のそれと比較出来る。

燃費は勿論、加速性能まで書かれていたのには驚いた。日本では何度問い合わせても「非公表」だったのに対し、EUヤリスは以下、全てゼロヒャク(ゼロスタートから時速100kmに到達する時間)が明記されている。

●1L5MT:14.6秒

●1.5LハイブリッドCVT:9.7秒

●1.5L6MT:9.0秒

●1.5LCVT:10.2秒

圧縮比も日本では非公開だが、14.0と記載がある。また日本仕様のヤリスの車幅は5ナンバーサイズだが、欧州仕様のヤリスは3ナンバーサイズの1745mmである。日本のヤリスよりも塊感が強く見えるのはそのためか。

女性も買う可能性の高いクルマだが、ここまで当地ではちゃんと公開されていることに驚く。日本ではゼロヒャクだなんて言うとヘタすれば「走り屋か、こいつ」と敬遠される事請け合いだが、現地ではそんなこともないんだと考えさせられる。

ゼロヒャク9.0といえばまだスズキ・スイフトスポーツ(7.7秒前後)には及ばないし、86(8.3〜7.4前後)ほどではない。しかし嘗てのアルテッツア、セリカ、セダンでいえばマークXも簡単には振り切れない程の加速性能である。マツダ2のMB、今は絶版となったホンダ・CR-Zとタメを張るのではないか。

まあ尤も走行距離からして違う。当地では年間2万キロを走る人たちはザラにいる。

日本のユーザーの求めているものと、欧州のユーザーが求めているものの違いを如実に示したカタログ内容だった。

世界ラリー選手権のイメージリーダーにGRヤリスがある。1.6Lのターボも奢れば免許取りたての人だって速く走れるのは当たり前。

ならば初代ヴィッツにあったユーロスポーツエディション、初代のヴィッツRSのように欧州仕様の足を固めたモデルも企画して頂きたいところである。このふたつのヴィッツは当時最新の安全装備に守られつつ、なけなしのパワーを余すところなく使い切って走れる楽しさがあった。

GRヤリスと比べれば、足りない部分はたくさんあろう。だが99%のドライバーはサーキットに行く訳ではない。最新の安全装備に守られつつ、少ないパワーを余すところなく使い切って走れるのは日常的に楽しいし、クルマの「ための」生活よりも、「喪われた30年」を体感している我々日本人はクルマの「ある」生活を志向している人が大多数なのが現状。きっと潜在需要を掘り起こせるはずだ。

実際、スズキ・スイフトの先代もモデル末期に最も売れたのはベースグレードのXGではなく、RSだったという。このRSというグレードは欧州仕様の足を固めたモデルである。5MTしかないから、ビジネス的には不利のはずだが根強い人気があったという。クルマの「ある」生活しか出来ない中でも、走る楽しさを求めている人たちがちゃんと存在することの証左である。

(了)


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