■車名が変更してもちゃんと残っていた■
簡単にペットネームをどんどん消してしまったツケとして、ブランドイメージを損ねつつあるメーカーもあれば、ブランドイメージを大事にするメーカーもある。マツダは前者から後者に移行したメーカーかもしれない。
BMW、メルツェデス、プジョー、シトロエンのように今では車名が番号となっている。
一体「Zoom-Zoomの隠れた名店」とはマツダの何の車種かといえば、マツダ2のMBの事である。
デミオにも勿論MBというモータースポーツ向け寸止めモデルがあった。メーカー各社、スポーツコンパクトがある。MBはモータースポーツベースという意味である。
正直デミオが「マツダ2」と車名を変更し、果たしてMBを残すのかどうか微妙なところだった。何しろデミオのベースグレードの1.3Lは廃され、今では1.5Lのガソリン車とディーゼルターボ車のみとなったからだ。MBも1.5Lの6速マニュアルモデルである。
しかしマツダはMBを残してくれた。しかも総合的な魅力度を上げて。
■ベースモデルの価格は上昇、こちらは最小限■
マツダはブランドイメージを大事にしようと舵を切ったのは良いが、価格も妙に高くなったというご意見は少なくない。そんな中、MBの価格上昇はどうなのか。デミオMBは2016年に発売され、150万1200円(当時)だったのが、165万円である。但し、ハロゲンヘッドライトからLEDヘッドライトに、またヒルホールドアシストが追加となってこのお値段。この間10%の消費増税があった事を思えば、価格上昇は最小限と云えるのではないか。
1.5Lガソリンエンジン車と云いつつ、ベースの1.5L車、110馬力のエンジンとチューンが異なり、こちらは116馬力でハイオク仕様。加速性能は未発表だが、先代デミオMBが0-100km/hで9秒だったので、それに限りなく近いと考えられる。燃費については果たしてこの手のモデルに燃費をどれだけ期待する人がいるのかという疑問もあるが、カタログ上は1.5プロアクティヴやベースの1.5Sが19.8km/Lに対し、ハイオク仕様というのもあるが、20.2km/Lである。ハイオクとレギュラーガソリンの約10円/Lの価格差は兎も角、実燃費のキロベースで殆ど差はないはずだ。
このあたり実際に乗ってみることにしよう。
タイヤは185/60R16&16+5/5Jアルミホイールが吊るしでもついて来る。スポーツ仕立てのモデルにしてはタイヤはなかなかコンフォート志向のサイズとなっている。まあインチアップしたい方の為に、オプションで195/55R16/87Vも選ぶことが出来る。
この手のクルマを購入する人は社外品を買うのを想定しているかのようだが、モータースポーツベース車を謳う割には決して安っぽくないのは良い。
では早速乗ってみることにしよう。
■みんなのスポーツモデル■
※この試乗は2020年9月に行っております。
この日は気温が34℃で蒸し暑い日だった。市街地では太い低速トルクを利して素早く走る性格は予想通り。ヒルホールドアシストは確かに便利。流石にトヨタ・カローラスポーツのようなiMTのような性能はないが、久しぶりにMTに乗る方でも大丈夫だろう。
燃費も東京郊外でリッター24.3km/Lと良好な値を示した。
高速道路に入る。時速100kmで約2300rpm。この数値はベースグレードの1.5Sとほぼ同回転数。燃費性能もかなりの力量である。なお、以前乗っていた初代のトヨタ・ヴィッツRSはこのマツダ2と加速性能は同等だが、かなりローギアードで、時速100kmにして3100rpmだった。このあたり流石に現代のクルマである。
このままお返ししたのでは試乗の意味がないので、山道に持ち込む事にした。折角のMT車だし。
最大トルクの発生が4000rpmだから余り上の方は得意ではないのでは、と思ったが、思いのほかよく粘り、引っ張れる。特に3000rpmから上はホンダのi-VTEC程の激変は無いものの、それまでのジェントルな性格とは別人のように快音となる。特にローからサードまでが程よく疾走感を味わえる。
0-100km/hでは9秒台、0-400mでは16秒半ばと云ったところだが、所詮は116馬力なので、引っ張ったところで大したことはない。しかし乗っている本人を結構その気にさせる面白さがある。
最近スポーツ仕立てのモデルが妙に高くなっている。トヨタ・ヤリスのGRは最廉価のグレードで何と265万円からだ。99%のドライバーは何もサーキットに行く訳ではない。しかしその中には日常のスポーティネスを求めている人もいるだろう。そのようなニーズにマツダMBはとても良く応えたクルマといえる。今や軽自動車とて平均価格は135万円。LEDヘッドライト、15インチアルミだ、HDDナビだ、あれやこれやと調子に乗ってベタベタつけるとあっと云う間に200万円に突入する時代。それを思うとマツダ2 MBの165万円はお買い得だ(但し、ナビはつけられないものの、スマホホルダーはつけられる)。マツダのひとつの見識が伝わって来る。
最後まで御覧頂きまして、ありがとうございました。
尚、総合燃費は19.9km/Lでした。
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