mixiユーザー(id:2391655)

2020年10月16日00:01

32 view

来たぜ、東北〜5〜涙はまだ早い

福島商のエースナンバー1を付けた浅倉君は試合終了の挨拶時、ユニフォームの袖口で目をぬぐった。それは汗ではなかったとボクはその時確信した。

夏は8回、春は3回の甲子園出場を誇る福島県屈指の伝統校である県立福島商。福島大会では東日本国際大昌平に敗れたが福島2位校としてこの東北大会に出場してきた。伝統校らしいFCを左胸にあしらったユニフォームはシンプルでありながらも洒落ている。しかし今の福島県には君臨する私学がある。今年は中止になったが昨年の夏の大会まで13年連続出場の聖光学院。磐城高校や福島商などの公立は今やいかんともしがたい厚い壁であると同時に福島において私学の草分けでもある学法石川や日大東北にとっても同じだ。

しかし、この大会にはその聖光学院の名はない。福島1位校は東日本国際大昌平、2位が福島商、そして3位校が学法石川だ。昨年の春も中止にはなったが聖光学院は出場を逃しており21世紀枠で磐城が選ばれていた。

名門復活をかける福島商。古いOBもこの試合には駆け付けた。

その相手はこれも県立の八戸西。甲子園出場はないためボクにはなじみはないが、今年の駒澤大の2枚看板は八戸学院光星の福山君と八戸西の竹本君の両4年生だ。東北の試合を観ること自体が初めてのボクにとっては八戸西は馴染みこそないが、竹本君を通じて親しみは持っていた。だが見るのは今日が初めて。

八戸のHを西のYの間に挟んだマーク。そしてピンストライブのユニフォーム。まるでニューヨークヤンキースのようだ。日本で言えば常葉菊川もこれと同じタイプ。

応援スタンドにいる人たちが来ているジャンパーもヤンキースのロゴが入った市販品かと思ったがすべてオリジナルのものだった。青森ももちろんかつては公立が主流だったが青森山田が力をつけると光星や聖愛などの私学が幅を利かせるようになった。そこに立ち向かおうとするのが八戸西だ。

この両校の対戦が今日の第2試合だった。

同じ県立でも伝統校と新進気鋭のチームという違いはある。先攻は福島商。身長186センチの長身右腕福島君が投げ下ろす投球に福島商打線が挑むが初回は三者凡退。対する福島商のエース浅倉君は168センチと小柄な投手だ。だが体重は66キロと福島君よりも重い。というより福島君が62キロと痩せすぎなのだが・・・・

その浅倉君は初回、先頭打者にセンター前にはじき返され送りバントで2塁を奪われるが後続を断つ。そして福島商は2回、1死から2塁打と三振振り逃げでチャンスを作ると熊坂君の3塁打で2点を先制。

八戸西はその裏安打とエラーで無死1・3塁から主将の宮崎君のスクイズ成功で1点を返し、更に犠打で1死3塁から再びスクイズ。だがこれはフライになって併殺となった。2回を終わって2−1。

3回の福島商は先頭の小室君が右中間を破る3塁打。これを田中君の2塁打で返して1点追加。福島商は2回3回で4安打。それはともに2塁打と3塁打が2本ずつである。堂々と打って取った得点だった。八戸西のようにスクイズの得点ではない。しかも2度もスクイズを敢行し2度目は併殺になっている。福島商は行けると踏んだはずだ。だが八戸西の福島君は徐々に調子を取り戻す。

3回裏に八戸西が四球の走者を盗塁と外野フライタッチアップで3塁まで進めると犠飛で得点。無安打での得点で3−2と粘り強く展開すると、5回についに爆発する。安打とエラー、四球で満塁とし福島君が走者一掃の2塁打で3点。さらに桐山君の安打と西谷君の3塁打で合計5点を挙げ7−3と逆転に成功する。

福島商の浅倉君は苦しい投球を強いられたが、ブルペンでは誰も投球練習をすることなくこのエース浅倉君に試合は託されたようだった。八戸西は5回にも1点を加えた。またしても宮崎君のスクイズだった。

走者を3塁において宮崎君はとんでもなく高いボールを空振りした。ボクは八戸西サイドの席にいたが、熱心に応援している人からは失笑が漏れた。なんであんなボール球を振るんだと。味方の応援団ですらわからないのかとボクは思ったのだ。次はスクイズだ。2回にもスクイズを決めている。スクイズの布石として打ち気満々の空振りを演じたのだと感じた。そして見事にスクイズを決めた。彼の今日の成績はスクイズ、ショートゴロエラー、スクイズで1打数無安打2打点である。7番を打つ主将として最高の成績ではないか。

福島商は6回に無死から連打でチャンスを作ったが無得点。そして7回の裏、八戸西は無死から死球で走者を出し、これまで3打数3安打の廣田君がレフトスタンドに叩き込んで劇的なサヨナラコールドとなった。

浅倉君は最初から完投が使命だったのだろうか。最後まで福島商のブルペンでは誰も投げることがなかった。スコアは10−3で福島商のコールド負けだがエラーが絡んでいるため浅倉君の自責点は6である。同じ県立校ではあるが、これまで何度も甲子園出場を誇る伝統校とこれから打倒私学を目指し甲子園初出場を狙う新鋭校の違いはあるだろう。

試合が終わって球場の外に出ると福島商の監督のもとに古いOBが集まって声を掛けていた。あわよくばセンバツという夢は断たれた。

伝統校のプレッシャーを感じながらも最後まで投げ抜いた浅倉君が流した涙。だが、まだ夏がある。聖光学院の壁は厚い、東日本国際大昌平や学法石川の壁もある。だが、まだ終わってはいない。

そうだ、彼が試合終了時に拭ったのはやっぱり涙ではない。絶対に汗だ。浅倉君は必ず一冬越してたくましく戻ってくるとボクは信じている。

打倒私学。この挑戦はまだ終わっていない。



2020年10月15日 第73回秋季東北地区高校野球大会 2回戦(於 石巻市民球場)
福島商
012 000 0 = 3
011 510 2x = 10
八戸西

0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2020年10月>
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031