今日、ぼくより少しだけ歳上の知人から問われた。
「笹川さん、何で腕時計なんかしてるの? スマホで時刻は見れるじゃない?」と。
「ぼくは小学生のころから腕時計を身につけるのが習慣になってるんです」
しょうがなくぼくはそう答えた。
「・・・ふ〜ん。重くて、鬱陶しいのに」知人はそう言いながら、なおも不服そうにぼくの腕に巻かれた時計を恨めしそうに見ていた。
こんな普通のオッサンには、腕時計を外す時の、あの解放感や安堵感が理解できないんだろうな、と思った。ヤクザ者でも家に帰れば、ただのおとなしい親父に戻ることに似た、あのカタルシスのような瞬間を。
そんなことを考えながら、知人のほうに視線をやり、ぼくは肚の底でせせら嗤っていた。
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