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2020年05月16日20:46

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どこか遠くへ行きたい

 今日はほぼ終日、雨。
 ラズリにかりんとうを2個あげたら、あまりの美味しさで唾が口から溢れ、床に5滴ほど落てしまい、唾液が盛り上がっている。汚ねえなぁ、と思いつつ、いい機会だから床のワックス掛けを30分ほどやった。かれこれ40年近く同じ屋根の下で動物と共生していると、フットワークが軽くなる。オシッコが漏れているのを見たら、すぐに水雑巾で拭き取り、消臭効果のあるアルコールをシュシュッと掛けるとか、部屋の隅に毛玉が見つかったら拾って捨てるとか、目やにがあったら顔を拭いてやるとか、暇そうにしてたら上からのしかかってやるとか。私がやや健康なのは犬のおかげかもしれない。
 昼前、YouTubeに毎日あげられているジャズピアニストの自宅ライブを流しながら、2カ月以上前に買っていた『漂うままに島に着き』(内澤旬子著)を読んだ。こういう体験エッセイは頭をあまり使わなくても理解できるから「ながら読書」向き。
 昼ごはんをはさんで、作家の日記に手を加えたり削ったりの作業。約2時間。
 雨が降っているので、傘をさしてラズリの散歩に出かける。5分くらいで大小を済ませてくれたので、早々に引き返した。それでも約15分くらいは戸外にいたので、濡れたラズリをバスタオルで拭いてやる。メス犬に快感を与える、という点に於いて、私は稀代のテクニシャンだと自負している。

 何日か前から、旅に出たい気分が募ってきた。外出自粛要請が解けたら山梨県立文学館に最低4〜5日間は詰めて資料漁りをしなければいけないのだが、その前にどこか遠くへ行ってみたい。2月にサンライズ出雲に乗って松江へ行ったら思いの外、衰える一方だった知的好奇心がわきあがったので、自分を高める意図はないもののふたたびの旅へ、と希求する自分がいる。
 沢木耕太郎のエッセイで、「旅に出ると、予期しないことに出くわし、楽しい思いをしたり、逆にがっかりするような目に遇ったりする。それを金運や結婚運のように旅運と言うとすると……(中略)どちらかと言えば、私は旅運のいい方だと思うが、それも、旅先で予期しないことが起きたとき、むしろ楽しむことができるからではないか(後略)」という一節があった。それを「面白がる精神」と沢木は指摘している。
 このエッセイ集は沢木が過去、旅で経験したことが多く引っぱり出されている。
 その影響を受け、読んでいる間、「もし今、旅に出るとしたらどこへ行きたいか」という自問と「旅先で予期せぬ経験は数あれど」という思い出し笑いを同時にしてた。
 昨日、日記を書いたあと、「二股温泉大和館」でのハプニングが懐かしくなって、ネットで同館の検索をしてみた。
 1990年代、つげ義春の『貧困旅行記』や『旅日記』に出てくるボロ宿旅を延々、やっていた。多い年は年12回、つげさんの「追っかけ」体験をしていたのだった。
 二股温泉は新白河駅からバスで2時間ほど山の中に分け入った温泉郷で、つげさんは「湯小屋温泉」というボロ宿に泊まられた。私はその頃、小遣いに不足がなかったこともあって、湯小屋温泉の隣にある大型旅館『大和館』に泊まった。たぶん宿泊料は1万円くらいだったと思う。「大和館」は親切な宿で、たった一人の客のために新白河駅まで迎えに来てくれた。
 宿の従業員がドライバー役で「今日の宿泊客はお客さん一人だから送迎バスじゃなくて自家用車で来ました」などと彼は言い、「明日は?」と問うと「明日も予約は入っていないので、お客さんは今日明日と全館貸し切りですよ」と答えた。
 印象に残っているのは「お客さんの宿代の1日分は館内の一日分の電気代と同じです」という維持費だった。
 まあそんなことは置いといて、翌日、つげさんが泊まった「湯小屋温泉」に行って、つげさんご投宿の部屋を見せてもらったり、これ以上粗末な露天風呂はないだろうというくらい生活感溢れる露天風呂に浸かったりした。そして、大和館を挟んでその向こうにある高級旅館「大丸あすなろ荘」を訪ね、割と贅沢なランチを摂った。そのまま、雑誌でしばしば紹介されている足元から湧いて出る温泉にも入って、午後1時くらいに大和館に戻った。
 玄関に入るなり、従業員のおじさんが「お疲れ様でございました。ハイキングでもされていたのですか? お腹が減ったことでしょう。賄い飯ですが、お部屋にカレーを用意してあります。旅館からのサービスですからお召し上がりください」と声を掛けてきた。
 まさか大丸あすなろ荘でランチを食べてきた、とも言えず、私は少し冷えてしまったカレーを食べることにした。ちなみに、私は当時からどちらかと言えば小食のほうだった。
 旅先でご厚意を受けることがしばしばある。これはありがた迷惑だから不運に分類されるのか? 違うと思う。なぜなら私は、このカレーに限らず、ずっと最上のおもてなしを受けていて、感動していたからだ。それを思うと、カレーの一皿分くらいどうってことはない。
 私は旅運に限らず、人生運がきわめていい。実力がやや伴っていないのと、手前勝手な性格が災いし、運を活かしきっていないだけである。
 で、話は戻るのだが、残念ながら大和館は2014年に休館したまま、いまも営業再開はしていない模様。二股温泉を次の旅行候補地に、というワケではなかったのだが、ひどく残念な気分になった。
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