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2020年05月11日20:01

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『旅のつばくろ』

 他人と1.3メートルの距離で話したのは何カ月ぶりだ?
 午前中、駅近くの書籍と文房具を扱う「田舎の昭和な本屋さん」に行った。ボールペンの替え芯を買う目的で、インクが切れたボールペンの他、(出身)大学のロゴが入ったペンとプジョーのディーラーで買ったペンも持参。この店には銀座伊東屋にもいないだろうと思えるほど文具に詳しい女性店員がいる。私と同年代と覚しき容貌のかたなので、話し掛けやすい。半年前にも一度、筆記用具のことで質問をしに行ったことがあった。
 インク切れのボールペンはそもそも東京ガスのノベルティグッズだった。が、本体はパイロットのアクロボール(Acroball)で、書き味が抜群にいいというか、私の字には合っている。弘法筆を選ぶ。
 注文通り、芯を替えてもらったあと、彼女に大学のペンとプジョーのペンを差し出して「アクロボールと同じくらいのなめらかさで書ける芯がありませんか?」と尋ねてみた。彼女はペンから芯を取りだしてまじまじと見てから、「これに合う水性インクやアクロボール的な油性インクはないですねせ」と答えた。どちらも本体が気に入っているだけに残念。
 落胆した私の様子を見た彼女はカウンターを出て、ボールペンのコーナーへと私を導いた。プジョーのペンをふたたび開きながら、「万が一、水性に似た書き味のボールペンの芯と合うかも……」と言って、試してくれた。が、わずかの差で無理だった。
 お手間を掛けてしまって申し訳ない。
 文具売り場はそんなに広くないこともあって、彼女と私はかなり近い距離に立って話をしている。
「もう一つ、質問していいですか。替え芯を買って、たとえば自分で芯の上の部分をナイフでカットして使う、というのは可能なんでしょうか」
 その質問をしたとき、彼女はおっというように目を見開いた。
「可能ですよ。しかしインクが漏れるケースがあるので、脱脂綿で蓋をするように詰めておくのがいい。実は私も家ではそんな加工をやったことがあるのです」
 そう彼女は言って、私に同志的な微笑みを返したのだった。
 結局今日購入したのは替え芯1本110円。
 で、そのあと書籍の売り場へ行って、沢木耕太郎の新刊『旅のつばくろ』を買うべく探してみたのだが、見つけられず。
 そうなるとますます読みたくなってしまい、別の書店に行ってみたら1冊残っていたので買った。
 新聞広告で、沢木耕太郎初の「国内旅エッセイ」という触れ込みを見て、それからずっと買おうと思っていた。が、新型コロナの一件から書店に行く気になれず、今日までずるずると時が経ってしまった。
 昼ごはんをはさんで、すぐに読み始めた。沢木が書く文章は、それがルポであれ小説であれ、私には読みやすい。全体の構成といい話の流れといい、読者に対して行き届いた文章を心がけているひとだと思う。元は新幹線の背もたれ網に収められている「トランヴェール」誌の連載エッセイなので、一話が400字詰め換算5〜6枚くらい。それが41話、収められている。珠玉のエッセイという惹句をよく目にするが、今の私にとって珠玉のネタがたくさんある。数日前から、(次、どこへ行こうかな)、と考え始めたからだ。
 降って湧いたような10万円だ(笑)。あれ買ってこれに使って、と考えると楽しい。旅に出るのもいいだろう。パスポートが切れたので「釜山に行って旨い大衆料理をたらふく食べる」といった海外旅行は、ハードルが高くなった。だからとりあえず、家からちょっと遠い国内のどこか。
『旅のつばくろ』を読み終えたら、久しぶりに地図帳を開いてみよう。
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