今回で142回を迎えた中山大障害。有馬記念前の土曜日の名物レースにはそれを分かったファンが多く訪れる。
2連覇を果たし昨年は3連覇より有馬を選んだオジュウチョウサンは今年春の中山グランドジャンプを制しながらもこの秋はアルゼンチン共和国杯やステイヤーズSに挑戦し、この大レースには出走しない。それを主戦ジョッキーの石神はどう思っていただろうか。
昨年のオジュウチョウサンのいないこの中山大障害では3番人気の二ホンピロバロンを優勝に導き自身3連覇を成し遂げている。そして今年の騎乗馬は1番人気のシンキングダンサー。
今年の中山大障害はどの馬が勝ってもジャンプG1初制覇。だが、騎手は違う。本当はオジュウチョウサンで4連覇をしたかったであろう石神騎手。
パドックではG1競走らしく騎乗合図がかかる前からジョッキーはパドックに入り馬主関係者らと記念撮影をしたり談笑したりしている。石神騎手もパドックを回る愛馬を見ながら関係者と挨拶をしていた。
障害レース独特のファンファーレが鳴るとスタンドからは手拍子と大きな歓声が上がる。場内アナウンスでは各馬の紹介とともに「どうか全馬、無事にゴールして拍手を浴びることを願う」という気持ちのこもった言葉でスタートを待った。
明らかに普通のレースとは違うという空気が流れる。マラソンや駅伝と一緒だ。応援する選手もいる。ごひいきのチームもある。だが、参加選手たちにはみんな頑張ってほしい。ほかのレースでは見られない独特の観客の空気だ。
レースは3番人気のディライトフルが終始リードしながら進んだ。大竹柵障害、大生垣障害、中山大障害独特の名物障害を全馬飛越し終えるとスタンドから大きな拍手がわく。この雰囲気がとても好きだ。
最後の向こう正面で勝負を仕掛けたシングンマイケルが一気に先頭を伺うとダートコースを横切るところではもうぶっちぎり体制にはいる。
シングンマイケルがトップでゴールした。騎手として4連覇を目指した石神騎手のシンキングダンサーはメイショウダッサイに鼻差及ばず4着に敗れた。そして最下位のスリーコーズラインがゴールした。シングンマイケルがゴールしてからすでに11秒が経過していたが、場内アナウンスの全馬完走ですという力強い言葉とともに大きな拍手が沸き起こった。
開業23年目の高市厩舎は障害G1初制覇、金子騎手もジャンプG1初制覇だと場内アナウンスは伝えた。この日の場内実況アナウンスは中山大障害への愛着が溢れていた。
ボクはシンキングダンサーからルペールノエルとメドウラークに流していたが4着5着6着と並んでゴールし馬券は外れた。それでも悔しさ以上に素晴らしいレースに立ち会えたという満足感の方が大きい。
年末の名物レース、有馬記念とはまた一味違う。暖かい空気に包まれて全馬完走に拍手を送るこのレースはギャンブルとはかけ離れたスポーツしてのレースの魅力を持っている。
格差社会が叫ばれる今の日本。しかし優勝馬も最下位の馬にも同じように拍手を送るような来年になってほしいと思う。
2019年12月21日 第142回中山大障害(於 中山競馬場)
シングンマイケル(金子光希)
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