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2019年08月02日08:57

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小山明子+高橋治+ウィリアム・アイリッシュとくれば、こりゃ見ないといけませんねぇ。高橋治監督「死者との結婚」(1960)。

ラピュタ阿佐ヶ谷でやっている小山明子特集の招待券をいただいたので(マイミクさんありがとうございました)、さて何を見ようかとチラシを眺めていたら、高橋治監督「死者との結婚」が目に留まりました。高橋治監督の映画は見たことがありませんが、小津安二郎について書いた「絢爛たる影絵 小津安二郎」が面白かったので、いつか見たいと思っており絶好のチャンスです。

このラピュタの女優シリーズ“昭和の銀幕に輝くヒロイン”は92回目だそうで、小山明子まで91人いたことになります。僕の好みの女優さんを数え上げても、小山明子は20指には入らない。しかし、僕の人生を変えた日本映画のひとつ「日本の夜と霧」に出ています。それどころかその監督大島渚の奥さんでした。ということで「日本の夜と霧」を35ミリで見直すというのも魅力的ですが、高橋治監督ということ、その原作がウィリアム・アイリッシュだということで、「死者との結婚」に決めました。←お金払って見ようとしないケチでスイマセン。

とはいえ僕は、ウィリアム・アイリッシュとコーネル・ウールリッチが同一人物だとは知っていますが、どう使い分けているのかすら知らない、とてもミステリー・ファンなどと言えない人間です。←D・E・ウェストレイクとリチャード・スタークなら分かるけどね。「死者との結婚」はハヤカワ・ミステリで持っていたはずなのにこの体たらくですわ。

そもそも「死者との結婚」と聞いて僕は、トリュフォーの「暗くなるまでこの恋を」と同じ原作だと思ってました。ちゃいますがな。今までハリウッドで何度か映画化されてますが、劇場公開は少ないようです。今回は列車事故を船に変えての展開。でも宇高連絡船が沈没するか?と突っ込んでしまいました。ま、讃岐長岡市というものが架空なので、連絡船も架空ということで(笑)。

渡辺文雄が、死んだ兄嫁にひかれるという展開も、その後のやくざ映画で鶴田浩二ら主役たちを裏切った渡辺文雄を知っているだけに、どうも親身になれませんでした。後追いすると、こういう変な齟齬が生まれてしまうので困る。

主人公の小山明子が、たまたま同乗していた新婚夫婦の妻から指輪を預かっていたことで、妻と間違われてしまうわけです。そのあたりの展開は原作どおりでした。実は本筋よりも、たとえば映画館の看板が映って、そこにオットー・プレミンジャーの「カルメン」があり、隣に「バナナ」と読めます。調べたら渋谷実の「バナナ」が、「カルメン」と同じ日に公開されてました。そんなトリビアが楽しい。

ほかにも、保科家の亡き夫の部屋にポータブルテレビがあるとか、スーツケースのファスナーが1つしかなく、鞄を閉めるのにぐるっと手を廻す場面があるなど、あの時代を思い出させる細かい描写が、僕の記憶装置を次々と刺激しました。前田憲男による音楽も、当時のヌーベルバーグ作品を模してジャズっぽい。

あるいは、海岸の砂防用の柵だと思うのですが、それが大島渚の「帰ってきたヨッパライ」の冒頭シーンに酷似していました。こんな柵は「ジョーズ」にも出てきたので同じ場所だとは言えないけど、なんかうれしい。←「ヨッパライ」のこのシーンは、繰り返し現れたのでよく覚えています。

あの時代を知っている人なら、“僕の選んだ人を見てください”という婚約宣言のセリフにはニヤリとするはず。しかし僕と同年代かそれ以上の当日の観客は、皆さんおとなしく鑑賞しておられました。一人で笑ってごめんなさいね。
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