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2019年06月03日14:10

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【バレエ】Kバレエ「シンデレラ」(6月2日)

観覧後のお師匠さまとの食事感想会では、前菜としてブリヤート・バレエ団の芸監、岩田さんの動向が話題になった。

ご存知の通り彼は少し前、自身のブログに大きな転機を迎えると綴っていた。彼の立ち位置を考えると、芸監の辞任は真っ先に思い浮かんだが、振付家でもある彼にとって自作を自由に上演できる芸監職は魅力的なはずだし、比較的最近、奥さんをペテルブルクから呼び寄せてバレエ教室を始めてもいたから、素人には予想できない別の可能性も捨てきれなかった。

その後しばらくしてブログが更新され、芸監辞任が明らかになったが、理由や今後の動向については何も記述がなかったので、2人でいろいろ憶測してみた。

帰宅後、寝支度をしていると、お師匠さまからメールが。

「ぱろの予想、大当たり!」

私は何年か前にブリヤート・バレエ団の日本公演を河口湖まで観に行ったが、我が師は都合がつかなかったので、単に情報量の違いでしかないのだが、敬愛する師に褒められるのはやはり嬉しい。

それはともかく、ロシアのバレエ団と言ってもピンキリで、このバレエ団を世界に通用するまでに育てるのは大変だろうなあ、いったい何年かかるだろう、との感想を抱いた。

世界最高のバレエ団で働いていた彼の目からしたら、残念ながらブリヤートのバレエはまだ稚児のお遊戯同然、ダンサーたちの意識や心構えにもプロとアマほどの違いがあるであろうことは想像に難くない。

加えて彼のキャリアと実力、ボリショイとのパイプを考えれば、芸監やバレエ・マスターとして彼を欲しがるバレエ団は他にもあるはず、と予想したところ、それを匂わせる内容が更新されたブログに記されていたという。

ロシア国内の別のバレエ団へ移ることは、その後マイミクさんが教えてくれた記事に明記されていたので、そうなると次に気になるのは、どこへ、である。

奥さんの教室の事を考えると、マリインスキーのウラジオストク支部?あたりがちょうど良い気がする。

あそこもウラルから東の人材が基本となるはずだし、西の果てにあるマリインスキーが東の果て「極東」にどのくらい興味を持っているかによるが、マリインスキーの名を戴く以上、相応のレベルだと信じたいし、メッセレルさんがミハイロフスキーで働いていた例もあるから、モスクワ出身の人間がマリインスキーと関わるのは前代未聞というわけでもないだろう。ブリヤートからも比較的近いし。(笑)

もちろん、再び単身赴任の可能性もある。果たして彼はどこで再スタートを切るのだろうか。興味は尽きない。


時々お邪魔しているバレエ好きで情報収集にも熱心なブロガーさんも昨日のK公演を観ていたようで、その出来栄えにはとても満足したようだ。

ただしその人は欧米かぶれの気があるため、Kのことを話題にするようになったのは最近のことだから、以前からKの実力を指摘してきた者としては、その大絶賛ぶりには何か悪いものでも拾って食べたのだろうかと、つい訝しんでしまうほどのいまさら感があるが(笑)、発信力のある人がKを讃えてくれるのはやはり嬉しい。

では実際の舞台はどうだったかというと、7回目となる(東京)楽日にしてはいまひとつだったから、ここのベスト公演を観た日には、くだんのブロガーさんは悶絶死するに違いない。(笑)

まずオケ、終盤は帳尻を合わせていたが、前半と中盤は細かいミスがままあり、王子のヴァリでは崩壊しかける場面もあった。前日はマチソワだったから、まだ寝ぼけていたのだろうか。

また主役のパートナーシップが、終演後3時間くらい説教されたのでは、というほどの出来だった。熊さんとしては、様々な組み合わせを試している最中なのかもしれないが、それはバレエ団の都合であって、舞台の完成度を重視するのであれば、今、小林さんと組ませるのなら、やはり山本くんであろう。今回のチョイスは、熊さんらしくない、観客を置き去りにした悪手であった。

バレエ団の将来のため、経験値確保としてどうしても試しておきたいというのであれば、不完全な舞台を提供する以上、チケット代を下げるくらいしないと、日頃の矜持はなんだったのか、と言いたくなる。

苦情の後は、良かったところ。(笑)

まず、終盤の演出が変わっていたのと、柔軟なその姿勢。

Kの「シンデレラ」は3年ぶり5回目だが、前回は終盤にちびデレラの回想シーンを挿入するなど手が加えられていた。

ところが前半の上野公演(成田さんの日)もご覧になった我が師によれば、そのちびデレラ場面がなくなって元に戻され、さらに東京楽日公演では従来のパターンとも異なる新しい演出(プログラムのあらすじとも違う)が採用されていた。

従来のKの「シンデレラ」は、嘘をついた継母を王子が怒って処罰しようとすると、思わず駆け寄ったシンデレラがぶつかった拍子に手にしたガラスの靴を落とすというパターンで、シンデレラのエプロンのポケットに靴が入っている、よく見かける演出ならともかく、Kのシンデレラはガラスの靴をお父さんの形見のスーツケースにしまっているから矛盾が生ずる。そこが以前から気になり、仙女さまが魔法でテレポートしてくれたのだろうと、脳内で無理矢理こじつけていた。(笑)

ところがこの日(回)は、駆け寄るシンデレラは靴を持っておらず、王子はシンデレラの顔を見てもしやあなたは? と期待を抱き、同行していた道化がスーツケースからガラスの靴を出してくると、舞踏会の彼女だと確信する、という自然な流れ。

もっともこれだと、道化は何故ガラスの靴のありかを知っていたのかという別の疑問がわくが、下手席の我々がセンターのやり取りに注目していた時、道化は好奇心からスーツケースを物色していたのでは? と推測する。というのも、以前は下手にある暖炉の陰に隠されていたスーツケースが、この回では暖炉の前、目立つ場所に置き去りにされていたからだ。

ここまで大きな変更だと、仮に言い出しっぺが主役の小林さんだとしても、彼女ひとりのアドリブでこなすには無理があるから、バレエ団総意での変更と思われるが(公演期間中、回によって演出を変えるのは、他のバレエ団では観たことがある)、誰の発案にせよ、より良い舞台を目指す姿勢と、それに柔軟に対応できる体制は評価に値する。

小林さんは、演劇面でも進化していた。清楚で儚い印象の成田さんは、現在のKの主役陣の誰とも被らないキャラだから居場所はあるし、見事ないじめられっぷりだったそうだが、水をかけられた後や、ろうそくの精の頭に触ってあちちとやる仕草、眠りから覚め、薔薇の花やティーカップに「ねえ、どうして動いてくれないの?」と声をかけるシンデレラの切ない想いは、小林さんからの方が自然に伝わってきたという。そしてスーツケースにガラスの靴を見つけた時の安堵と喜びの表現には、良かったねえ、本当にあったことなんだよ? と、思わず一緒になってうるうるしてしまった。

強いて小林さんに改善をリクエストするとしたら、メイクの仕方だろう。元々顔のパーツがはっきりした欧米人たちは、照明の技術が進歩したこともあり、ナチュラルメイクが主流になっているが、日本ではまだ、オペラグラスで見るとギョッとする、クラシカルなメイクをしている人が多く、小林さんも目の下のアイラインや口紅を強調した古風なメイクを多用している。

今回はシンデレラが自宅にいる時と宮殿ではメイクを変えているようで、チュチュ姿の時はより目鼻立ちを強調しているように思えたが、彼女は顔のパーツが他の人よりもはっきりしているから、自宅にいる時のやや抑えたメイクの方が自然で綺麗に見える。

我が師がご覧になったもうひとりのシンデレラ成田さんは、ユニバーサルに在籍していたのは予想していたよりも短期間だったようだ。それもあってか、以前の小林さんのように踊りのスタイルが矯正されてしまい、残念ながらロシアっぽさが影を潜めてしまったという。

ただし実力はありそうで、彼女の回の妖精たちは毛利、戸田、矢内、小林という反則チームだったにもかかわらず(笑)、流石に主役として突出した存在感は出せなかったものの、この面子を相手にしても埋もれなかったのはさすが、と感心されていた。

小林さんの相手、王子役の蓮くんは、ビジュアル的には少女漫画に登場しそうな絵に描いたような王子で、後半のソロでは肩の力が抜けたのか本来の動きを取り戻していたが、前半はソロですらいつもの彼らしくない縮こまった踊り。しかもPDDでは何度も小林さんの足を引っ張ってしまった。

にもかかわらず、何もなかったかのように平然と踊り続ける小林さんの様子を観ていると、慣れてない人を慣れた人と組み合わせたくなる首脳陣の気持ちもわからなくはないが、一観客としては、やはり山本くんと組んだときの見事なパートナーシップを観たかった。

矢内さんと組んだ新人・高橋さんを観た知人もいたが、お師匠さまへの感想メールには、矢内さん良かったよ、としかなかったという。まだ初見でインパクトのある踊りをする人ではなかったようだ。

仙女は成田さんの日が浅野さん、小林さんの日が井上さんで、井上さんは踊りは大きく大人の仙女だが、あのウィッグを着けると見た目が可愛くなる。

シンデレラの姉たちは、これまでは前田さん、湊さん、山田さん、岩渕さんで、前回から辻さんが登場したが、今回は辻さんと河合さん、成田さんの日は河合さんと杉山さんだった。

辻さんは3年前よりパワーアップ、「くるみ」ではクララを務める可憐な河合さんの意外なキャラに驚き(笑)、杉山さんも壊れっぷりは歴代の姉たちに負けていないという。

継母はヘイドンさん。いつも通りのおっかない無慈悲な継母だったが、王子の護衛に捕まるとそれまでの強気が一転、弱々しい仕草に。彼の見るたびに変化をつける奥の深い演技はロシアの踊り手を彷彿とさせる。キャシディさんの式典長ともども、この作品には欠かせない配役だ。

キャシディさんの継母との絡みや、終盤シンデレラ家での演技には、わかっていてもつい笑ってしまう。

4人の妖精は佐伯さん、戸田さん、高橋さん、新入りの平野さん。この面子だと戸田さんの身長が目立ち、さながら日本最大のトンボ、オニヤンマ(笑)。みな悪くはなかったが、成田さんの日の面子でも観たかったし、観せたかった、と、お師匠さま。

雄鹿と王子の友人は、山本、堀内、益子、ランシエの4名で、この面子だとランシエさんはまだ未熟さが目立ってしまう。外国人らしく肩幅もあり、見た目に不都合はないが、力量的にはこれからの人。年齢はいくつなのだろう。

2000万の高級車(笑)の御者はユニコーンで、無駄に美しい彼は誰? と評判になった杉野くんの逸話はいまだに語られるが、今回の御者も目を引く美形くん。その素性が気になる。(配役表にはまだ名前が出ない)

その杉野くんはオレンジマンで、海月のような踊りには観客席から思わず笑いが出る。

道化や大小の騎士、オレンジガールも芸達者で踊りにキレがあり、群舞共々やはりKのダンサーたちはみな上手いなあ、としみじみ思った。

いまのKは、少し前から比べるとダンサー層の厚みがやや薄く、ファーストとセカンドの差が明瞭になってしまい、主役の力量が不足すると周囲に主役経験者を投入して補強しなければならないが、長い目で見ればバレエ団のレベルに波は付き物、いまの若手が育てば再びどの日を観ても満足できるようになるだろうし、今現在でも総合力はKバレエが日本一であることに変わりはない。
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