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2019年03月17日19:13

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【バレエ】東京バレエ団「海賊」(16日)

世は諸行無常、バレエ団もまた同様で、
悪い時もあれば良い時もある。
というわけで、新国に続き東バの現状確認観覧をしてきた。
「海賊」好きだし。(笑)

東バが「海賊」の全幕を上演するのは、今回が初めてである。
ここ向きな作品なだけに、とても意外な気がする。

版はオリジナルではなくホームズ版。
後述のように、
ユカリューシャさんには別の版で挑戦してもらいたかった。
真偽はともかく、
スカラ座から舞台装置を借りたとか共同制作したとか、
いろいろ聞こえてくるが、いずれにせよ、
オペラを招聘するNBSの意向が大きく関与しているのは、
間違いないだろう。

ホームズ版「海賊」と言えば、
昨今はプレミアムシアターのスカラ座回や、
ENBでご覧になった方も多いと思うが、
長年バレエを観ている人には、
やはりABTの反則映像だろう。(笑)
あのディスクは一見の価値がある。

ホームズさんはあまり手を入れない人のようで、
演出面ではどれも大差はなく、しかも今回の東バの版では、
冒頭メドーラの登場シーンは、なぜかABT版に戻されている。

ちなみにENBの時はこんなこともあったが、
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1961624830&owner_id=3210641
今回の公式サイトやプログラムには、
正しいあらすじが載っている。

先日の新国「バヤ」ではオケが良い仕事をしてくれたが、
今回の演奏は残念ながら良い出来とは言えなかった。
そもそも編曲がABTやENBのものとも異なる、
ランチベリー似の劣化版で、オケも演奏し辛そうだった。
しかもホームズ版には、
コンラッドやトルコ軍のテーマもないし。(怒)

3日間あるうちなぜ中日を選んだかと言うと、
それはもう、秋元くんと池本くんがいたからに他ならない。
これであと木村さんがいれば言うことなかったのだが。
彼のパシャ、観たかったなあ。

沖さん(メドーラ)は予想より良い動きをしていたが、
伝田さん(ギュリナーラ)のプロフェッショナルな踊りの方が
印象的だった。
沖さんはボヤルチコフ版のギュリナーラを演じた方が、
彼女の持ち味を生かせるだろう。

秋元コンラッドは海賊の頭領としての迫力も出ていたが、
2幕のトロワでは、
池本アリの拍手の凄さに気負ってしまったのか、
踊りが乱れてしまった。
彼が東バに移籍した直後に観た時があんな感じだった。
その後は冷静になり、昨今の美しい動きに戻ってはいたが。

この作品ではアリが注目されるのは仕方がないとはいえ、
池本くんは期待通りに舞台の全てを持って行ってしまった。
いやあ、眼福眼福。(笑)

宮川ランケデム、井福ビルバントは、
歯切れの良い踊りは見応えがあり、
初演ということを加味すると頑張っていたと思う。
ただ、「バヤ」同様、
「海賊」もダンサーに演技力を要求する作品なので、
役としての色気を出すにはさらなる修行が必要のようだ。

海賊の男性群舞、スタイルは良いが、
まだ員数合わせ程度でしかなかった。
それと比べるとオダリスクをはじめとする女性群舞は、
新国の群舞と比べると踊り方が立体的で色気もある。

私の周囲にはホームズ版の演出に不満を抱く人が何人もいて、
理由は簡単、ホームズ版より出来の良い版を、
何度も観ていたからだ。(笑)

ホームズ版は、
踊りのパートと物語のパートの配置バランスが悪い。
解説には3幕のオダリスクの踊りを1幕に持ってきて、
男女の踊りの均質化を図ったとあるが、
それは余計なお世話というもの。

それ以外にも踊りのパートが、
物語の流れを堰き止めてしまう場面がままあり、
本来は軽快なはずのストーリーが滞ってしまう。
演出家は男女の踊りの均質化などという瑣末なことより、
全幕作品では物語をスムーズに流すことに注力すべきだ。

バレエの踊りは感情表現のツールであるとともに、
物語に膨らみを持たせる彩りでもある。
両者はけして分離独立させるものではない。
マールイのグーセフ/ボヤルチコフ版やKの熊版は、
そのあたりのさじ加減が見事なので、
物語は淀みなく流れていく。

加えて今回は初演のため、
ダンサーたちの演技や踊りにもこなれ感がないから、
歯切れの悪さが余計に目立ってしまった。

見終わった後のもやもやは、
メドーラとギュリナーラの関係性がすっきりしないこと、
ハッピーエンドと見せかけた、
後味の悪いエンディングも影響しているが、
これはバイロンの物語を意識しすぎて、
とっちらかってしまったからだろう。

パリオペ版では、
登場人物たちの関係性が明瞭で物語も整合性が取れており、
原典は参考程度にとどめストーリーの簡易化に努めた、
ボヤルチコフ版や熊版もわかりやすく楽しい。
(熊版のラストはいただけないが)

これから「海賊」にチャレンジしてみようというバレエ団は、
ホームズ版のことは忘れて、
グーセフ版やボヤルチコフ版を参考にすべきであろう。
「有名=良質」と言えないケースは、
世の中にはたくさんある。

余談だが、東バの観客は、
新国の観客と比べるとおとなしいが、
応援の仕方は節度があって好ましかった。
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