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2019年01月30日06:05

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日常的な空気感に説得力があるDVサスペンス劇。グザヴィエ・ルグラン監督「ジュリアン」(2017)。

まず映し出されるのが夫婦間の調停手続きです。妻ミリアム(レア・ドリュッケール、写真3)の側から、夫アントワーヌ(ドゥニ・メノーシェ)の家庭内暴力に対して息子ジュリアン(トマ・ジオリア)の陳述書が出されますが、夫側がDVの事実はないと主張します。この淡々とした調停場面がいい感じでした。第三者というものは、実情に対しては疎くなるものだという雰囲気がよく伝わります。

案の定、夫は2週間に一度、週末をジュリアンと過ごす権利を得ます。いちおう夫との別居は認められたので、夫の実家で会う形を取る。この映画の字幕には、“離婚は申請しない”と出たはずですが、オフィシャル・ページには“離婚した両親の…”と記述があります。別居しただけだと思いますが、違ったのか?

つまり僕は、“なんでこんな奴と離婚せえへんねん”とずっと不審に思ってました。さらに妻の妹レティシア(サブリナ・ラルデレ)が、姉の移転先を簡単に夫に伝えるのも不思議です。もしかしたら、アントワーヌが細かい策を使っているのかもしれないけど、そのあたりは説明したくないという作り方なのかも。←“俺はバカじゃない”と繰り返すシーンがあります。

ジュリアンがアントワーヌに預けられ、アントワーヌの父母の家で食事していると、アントワーヌが切れます。それに対して父親が似たような切れ方をする。この親にしてこの子ありという雰囲気で、なかなか説得力がありました。とはいえ、家庭不和はあんまり見たくないけどね。

この映画のポイントは、とことん明確な危険が及ばないと警察などは動かないということであり、それに対してどのように自分を守るかということでした。それ以前に話し合いで解決しようとしていたでしょうが、話にならないと妻が決断したのなら、さっさと夫のDVを実証する方法を取りなさい、と諭している気がします。

僕が妻の弁護士なら息子に録音機を持たせるとか、まず実証する方向へ動きますね。そして僕が調停員だったら、夫の未練たらたらの雰囲気を察知しないといけないと思う。妻はとっくに夫からは“切れて”いるという実情を見抜かなくちゃ。←このあたり経済的事情を優先したと僕は考えました。昨今の政治情勢から、弱者(一般人)への締め付けばかり目立つ世界各国ですが、政府機関としては目先の経済事情を重視する方が具体的“救済”につながるわけですし。

ラストが単純なハッピーエンドではないというところが、それまでの陰鬱なDV野郎とのドラマを、さらに苦い後味としています。世の中は甘くないということを痛感するわけで、映画で楽しい夢を見たい人にはお勧めできません。とはいえ、新しい才能(長編デビュー作だとか)を確認したい映画ファンなら、見ておくべきでしょう。

少し不満を言うなら、18歳の姉を演じるマチルド・オヌヴーが、どう見ても二十歳以上に思えたこと。でもパーティーで“プラウド・メアリー”を歌うのは絶妙な選曲に思えました(CCRは好きじゃないけど)。それとフランスの中学1年生は日本で言う小学6年生ということなんですね(中学が4年間)。←高校2年生を1年生と呼ぶらしい(“あと1年”という意味か)。つまり姉は18歳だから3年生でTerminale(最終学年)か。
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