消費増税に孕む諸問題と打開策

■消費税１０％まで１年＝軽減税率を初適用−対応迫られる小売り・外食
(時事通信社 - 10月01日 09:05)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=4&from=diary&id=5311923

　消費増税まで後一年を切った。安倍首相は「この道しか無い」と推し進めているが、色々と問題点を抱えている。記事にリンクしている部分とその他の諸問題と打開策もみてみよう。

■軽減税率は日本人には向かない■

　恐らく公明党の強い要望で受け容れたのだろうが、既に軽減税率を入れている欧州でどうなっているのか見てみよう。例えばベルギーでは外食すると２１％の消費税を負担させられる。一方でパンやミネラルウオーター、牛乳は６％である。あまりにも税格差があるため、外食産業の団体が毎年のように日本でいえば財務省に陳情に行き、丁々発止の議論を展開している。

　他人に面と向かって冷静な議論が苦手な我々日本人に果たしてベルギー人のような芸当が出来るだろうか？それはちょっと無理ではないかと思う。世界から見たら比較的日本人は我慢強いが、いざ議論がヒートアップすると制度批判ではなく、個人攻撃へ転化してしまうことが多いものだ。

■クレジットカード払いのお客の方がキャッシュ払いの客よりも偉いのか■

　今回、キャッシュレスを推進すべく、政府は中小小売業に対し、カード払いのお客には２％の実質減税をし、カードの機器（キャット）の設置に補助を出す案が挙がっている。
だが、小売業側はカード会社に手数料を払わねばならず、これは中小小売業としては結構馬鹿にならない負担のはずだ。

　日本の消費者のうち、常にカードで払っている人は全体の１８％に過ぎない。アメリカは６２％、ドイツは４５％。カード社会、と評されるアメリカでもこの程度だ。大体中小小売店ほどカード払いのお客よりもキャッシュで全額払ってくれる人を上客と見做してくれるものである。誰が考案したのか知らないが、街角の商店街の声を全く聞いていない証左である。

■消費増税⇒法人税減税の穴埋め⇒実質賃金アップにつながるのか■

　経済評論家の三橋貴明氏は前回の消費税増税について、借金返済の為だったと述べている。確かに三党合意（その当時の民主党の後継の立憲民主が今更になって「消費税反対」と述べているのはおかしな話だが）でそう決まった。だが、蓋を開けてみれば、５兆円の法人税減税の為に増税したのではないかと疑いたくなる。

　麻生財務大臣は内部留保３２８兆円もある企業について、「守銭奴」と述べた。しこたま貯め込むだけで、実質賃金は上がっていないではないかと云う訳だ。

　簿記の知識がある人や経理・財務関係のお仕事をされている人であれば、誰でも分かるだろうが、法人税は人件費を始めとするコストを差し引いた純利益に課税されるのであって、純利益は内部留保か配当に回るに決まっている。

　寧ろ企業に賃上げして欲しいならば、法人税増税の方が効果的だ。

　アメリカでは合法的な節税として、寄付という手もあるが、日本では寄付にまで課税して来るので、この手は使えない。そこで経営者であれば、「税金に持って行かれるぐらいならば、社員の給与アップに使ってしまえ」と考えるはずだ。

　このようなことを企業会計に長けた経団連の人たちがバックにいながら、なぜ言わないのか不思議で仕方が無い。

　１０％増税は不可避的なところまで来た。だが、次のフェーズで修正することは出来る。

■滞納の多い消費税よりも付加価値税か資産税の方が安定財政で公平■

　サラリーマン、ＯＬの身だと分からないだろうが、自営業であれば、誰でも御存じだろう、実は消費税こそ最も滞納の多い税である。１０％に増税ともなれば、更なる滞納が増え、政府が期待したような税収にはならないかもしれない。ましてや軽減税率を設けているので、尚更だろう。

　これを打開する方法が２つある。

　１０％増税からそれほど間をおかずに付加価値税を流通段階で１０％に課税してしまう方法に改正してしまうのである。こうすれば消費者にとってややこしい計算は必要なく、全て税込のため安心して購入出来る。便乗値上げについては消費者庁が厳重に監視すれば良い。

　もうひとつは資産課税である。資産税は１％増税するだけで日本の歳入は１９兆円増える。資産を余り持たない若年層の負担は薄くなり、たくさん持っている人は当然増える。

　
　どちらかをやるだけで何も滞納のリスクも高く、景気の腰割れがほぼ確実視されている消費増税など必要ない。特に日本の経済成長率はフラットかマイナスで、経済が実質停滞しきっているような国ではこちらの方が向いているのではないだろうか。