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2018年10月04日13:12

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頭、顔を描写すること


この間この町の芸術家たちが町の各所でそれぞれの作品を展示する催しがあった。 そのとき家人の展示するスペースの近くに人間の頭ばかり描いている作家の作品があったのでそれを眺めていた。 それで思うところがあってそこにいた二十代の半ばごろの青年に尋ねるとそれは自分のものではなく自分の父親のものだと言った。 その父親の名前を Jan Kleingeld といって元はインダストリアル・デザインをやったりちょっとしたモニュメントにその場所やそれにちなむ語句を付け加えたりしているとのことだった。

https://nl.wikipedia.org/wiki/Jan_Kleingeld

二、三年前に脳梗塞の発作を得て九死に一生の経験をして利き腕を含む半身不随となりそれ以後筆を取り水彩に没頭してこのような人間の頭を主に描き続けているとのことだった。 そこにはかなり類型的な男と思しき頭が幾つも描かれており、それらは殆どが丸い目を剥いてこちらを眺めているのだった。  無表情とも思えるけれどその中に何かを持ってこちらを眺めているようにも見えなくもない。 ただ単にそこに在るというような顔があり、また何かを訴えるような眼をしていているような表情を湛えているものもある。 死と隣り合わせ、若しくは死に絡まれているように見えるものもあり、全体にみて多くの頭、顔には何らかの形で死が関わっているように感じたのだ。 だからそこにいた息子の説明でそこにある沢山の像の表情に納得できたのだ。 父は最近このようなものしか描かないのだと言った。 自分が去年死と隣り合った経験をして人のポートレートを撮ろうと思い立ったのと共通しているのを感じた。 そのうちこの作家と話す機会があるだろうと思う。

この作家がまだ元気なころの作品が家から200mほど行ったところにある運河に架かる跳ね橋にある。 橋が上がって我々がそこで待つ一瞬の間に橋の連結部の日頃はそこを通る我々の下に隠れた文字が読める。 WIND・WATER・SCHIP・GROET・WACHTER・WIJ  WACHTEN とある。 風・水・船・挨拶・管理人・我々は看、監視し、待つ というのだが、オランダ語の動詞 Wachten には英語の watch と同じく、見る、看る、監視する、様子をみる、待つ というような意味をもつ。 だから Wachter は看る人、待つ人であり管理人でありそれは我々でもある。 橋が上がり、降りてくるのを待つのは我々だが、風、水、船を待つ、監視するのは管理人だけではなく我々も同じくそうである、そしてそれぞれに挨拶を、という言葉がそこでのんびり開通を待つ我々の前を毎日上下する。 
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