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2018年08月29日01:44

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神宮スズメの独り言2018秋〜1〜侍ジャパン

壮行試合としてはいいゲームだった。

高校代表の先発は明徳の市川君。春のセンバツはに出場したが夏は予選決勝で敗れている。つい1週間前まで試合をしていた大阪桐蔭や金足農の選手たちをはじめ、このメンバーの中では最も試合勘が鈍っているはずだ。そこを修正するための先発だったとボクは思う。

予定通りの3イニングを投げて被安打3で3失点。初回はいきなり3ボールとなるが法政の向山君を三振に取る。だが四球を出し牽制悪送球で2塁に進められると辰巳君のタイムリーと4番頓宮君の左中間への本塁打で3点を失った。

制球の悪さは投手をどんどん追い込む。ましてや格上の大学生との試合だ。早めに追い込んで遊び球を使いながら勝負する。いくら高校生のトップクラスとはいえ相手も大学代表である。それでやっとトントンだろう。カウントを悪くすれば投げるボールは限られてくるし、狙われやすくなる

しかし、市川君はそれでもその後勝俣君に安打を浴びたものの、2回3回は無安打に切り抜け4つの三振を奪った。上出来だったと思う。

市川君を4回からリリーフしたのは浦和学院の渡辺君。190センチの長身から投げ下ろすボールの威力は甲子園で株を上げた一人だ。しかし、彼もまた制球が悪い。まず勝俣君に初球を流し打ちで左翼席に叩き込まれると、制球を乱しストライクを取りにいったところを打たれた。渡辺君と児玉君に安打を打たれ、1死1・2塁から向山君の当たりは右中間へ・・・

ライトの根尾君とセンターの藤原君という大阪桐蔭の俊足が追うが、打球は根尾君のグラブの先に落ちた。2塁走者はタッチアップ態勢、そこから一気に本塁を突いたが、すぐに打球を拾った根尾君から奈良間君を中継しバックホーム。本塁を突く走者が数メートルを残した位置で返球を受けた捕手小泉君は楽々とアウトにとった。

だが、大学は抜け目ない。すぐに盗塁を決め2死2・3塁とすると佐藤都志也君のセンターオーバーの3塁打でこの回さらに2点を追加し6−0とした。藤原君は多少浅めに守っていた。

5回の高校は先頭の根尾君がセンターを超える3塁打。脚も見せる3塁打だった。ここで大学は前進守備を取らない。1点献上OKという中で蛭間君の内野ゴロで1点を返した。

さらに6回、2死から奈良間君が死球、中川君の安打に外野手のエラーが絡んで2死2・3塁から、藤原君の3塁への内野安打で更に1点を入れた。記録は内野安打だ。だが、3塁手が一瞬ジャックルした。プロならエラー。しかし、それだけ脚が速いということでもある。6−2とスタンドは盛り上がったが、7回には満を持してマウンドに上がった柿木君に伊藤裕季也君がバックスクリーンに本塁打を叩き込んだ。この回からマウンドに上がった大歓声を浴びて150キロ以上を記録したが、伊藤君の真っすぐ狙いがはまった。

8回には逆に大学のドラフト候補松本航投手から小園君がライトスタンドへ本塁打を放った。だが、最終回は東洋の甲斐野君の150キロ超えのストレートの前に4番から始まる高校は三者凡退に倒れた。


今日のこの試合はチケット完売。2年前のマリンスタジアムでこのような大学と高校の代表対決が壮行試合として行われたが、チケットは当日券まであった。

そして、その試合は高校代表にとって素晴らしい試合だった。序盤こそ先発の木更津総合の早川君が打ち込まれて5点を失ったが、その後は横浜の藤平、履正社の寺嶋、東海大市原望洋の島、花咲徳栄の高橋、広島新庄の堀が各1イニングを投げて無失点。しかも全員が大学生から三振を奪った。そして8回から登板したのはその年の優勝投手、作新学院の今井。2イニングで被安打1、奪三振5だった。

この世代は黄金世代だと思っている。だが、これらのプロ入りした投手陣は今はどうだろうか・・・・

高校野球は甲子園がすべてだ。そのあとのステージを考えている選手はたくさんいるが、直後のこの大会を重要視している選手など誰もいない。

しかし、今年は異常だった。その暑さも異常であり、この異様な盛り上がりも・・・・

この試合はあくまで練習試合であり、甲子園での疲れを調整しながら戦う大会だ。だが、マスコミの影響だろうか、中年おばさんのグループが目立った。黄色い声援の中にもう高い声が出なくなった茶色いおばさんの声援が混じる。

吉田く〜〜ん。

選手が球場に表れアップに入った時は異常だった。やっと外野の席を先週の金曜日に手に入れたボクは、内野席完売の表示を見て信じられなかったのだ。誰がこの試合のチケットを買っているのか・・・・


少なくとも2年前のそれこそ黄金世代の試合を観たボクにとっては・・・

奈良間君が死球を受けた時にウイスキーのボトルを持ち込んで酔っ払っていたオヤジが叫んだ。「痛くない、痛くない、1塁へ行け」

一人で観戦していたボクは思わず大声が出た。「こんな試合で怪我したらどうすんだ、バカか!!」

何人かが振り返ったが、ボクは毅然としていた。この試合は勝負ではない。調整だ。そのための格上挑戦だ。

このオヤジは毎日ワイドショーを見ること以外に何もやることがないであろうあの茶色い声援のおばさん軍団の仲間だった。だが、そのおばさんたちはもう試合には興味をなくしていて、崎陽軒のお弁当を食べ終わった後は柿の種とビールと共に世間話に夢中だった。

この試合の意義とかその後の大会や彼らの将来などは眼中にない。マスコミが例年以上に取り上げて全国区となった今年の高校野球のスター軍団が大学代表を叩きのめす姿を求めてやってきたのだろう。

だからその可能性がなくなったと思えた瞬間からその試合に対する興味はなくなっており、それでも勝負に固執する人は怪我しようがなんでも塁に出ろと言う。

だが、彼らは甲子園で戦った直後である。フィジカル面だけではなく、メンタルの部分でもコンディションが万全であるはずがない。ほとんどが燃え尽きているのだ。もちろんここに選ばれた選手たちは将来も野球をやる。すぐにプロという選手もいれば大学経由という選手もいるだろう。だがそれでもこの試合は調整試合であったはずだ。そういう意味ではワイドショーに毒された人たちにとっては物足りなくともこの試合は有意義だった。

あの2年前の試合を考えてみると、身体がまだできていない高校生がピークに持って行った甲子園の直後にさらに無理をして戦った結果がどうだったか・・・

あの時のエースたちが今プロでどうなっているか・・・

この時期は休ませるべきだ。甲子園の日程すら殺人的だと言われている中で、この代表戦に加えて、上位進出校は国体まである。

そしてこのような練習試合ですら、死ぬ気でやれと観客は言い、お目当ての選手が出なければもう野球すら見ていない・・・・

しかし、言ってもわからない人に文句を言うのもばかばかしい。掛け算の九九すらできない子にこんな簡単な因数分解すらできないのかと批判しているようなものだ。

今日の壮行試合は素晴らしかった。しかもそれは永田監督の采配も含めてだというより、その采配そのものがだ。

投手陣は打ち込まれた。だがそれは明らかに調整不足。万全ならもっといい勝負になっただろう。そして、打撃陣は2年前と違っていいところを見せた。根尾君の3塁打も、そして何よりも願っていた小園君の本塁打。甲子園では初戦こそ活躍したものの2回戦からはド不調に陥っていたのだから・・・・

そして、守備の連係やその肩の強さも示した。逆に大学のレベルの高い守備にやられるところもあった。高校レベルなら通用してもその上では通用しない部分。断っておくが、彼らがその上のレベルの選手たちなのだが、それでも通用しなかったところ・・・・

大学で立ちはだかったのは大阪桐蔭出身の田中誠也投手、浦学出身の小島投手、後輩にプライドを見せた。そして清水君や津森君、松本君や甲斐野君という甲子園経験ないドラフト候補たちはその意地を出した。

プロは甲子園経験などまったく関係がない。強いものが勝つ、ただそれだけだ。

ちょっとマスコミで取り上げられてそのブームに乗ってチケットを買った人たちこそその厳しさを理解してほしいと思うが・・・・

あの茶色い声援のおばさんたちは明日からはまたワイドショーの別の話題に乗せられていくことだろう。



2018年8月28日 侍ジャパン壮行試合(於 明治神宮野球場)
高校日本代表
000 011 010 = 3
300 300 10x = 7
大学日本代表

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