食堂のテーブルに「ふりかけ」がたくさん置いてある船は、
コックさんの腕前がいまひとつ、なのだとか。(笑)
大きな荷物があったので、エレベーターを使ったところ、
開いたドアの外には車椅子のおばあさん。
手早く箱の外へ出て端に寄り、ドアが閉まらないよう手で押さえると、
「大丈夫だから!」
と、突然、怒鳴られた。
いや、大丈夫と言われても、
介添えの人は見当たらないし、私の前に一人降りているから、
ドアの開いている時間にはもう余裕はないはず。
なのでそのままドアを押さえていると、
「大丈夫だから!」
と再び怒鳴られた。
それも余計なことをするな! と言わんばかりの口調で。
すみませんね、お節介で。(笑)
あの老婆は、いったい何が気に入らなかったのだろう。
誰か教えてください。
以前、話が相手に伝わらないのは、
話し手の話術が下手なのか、
それとも聞き手の理解力が足りないのか、
ということが、どこかで話題になっていた。
何が言いたいんだかわからない、要点だけ話せ! とか、
難しいことは言ってないのに、頭悪いんじゃないの? と、
レスはそれぞれ自身の体験を交えつつ、
「こしあんvsつぶあん」論争の様相を呈していたが、
やはり相手の言っていることを理解しようという意思が、
聞き手にあるかどうかが一番重要だと思う。
話下手と脳味噌のちょっと足りない人の組み合わせでも、
相手はなにを言っているのだろう、と真剣に聞き耳を立てれば、
多少時間はかかるかもしれないが話は通じるし、
IQ200同士が向かい合っていても、
聞き手が耳を閉じていたら何も伝わらない。
それはともかく、専門家の話は楽しい。
今年のルマンは、スタート直後こそ、
フロント・ローを独占したトヨタのハイブリッド車に対して、
非ハイブリッド車の加速も負けておらず、
将棋の飛車角落ちのようなものではあるけれど、
トヨタ車への「縛り」が絶妙なんだな、これは面白い展開が期待できるかも、
と思ったが、それは最初の1周だけだった。
ハイブリッド車の強みは、
なんと言ってもワイドバンドで絶大なトルクを誇るモーターだが、
解説によるとスタート時は充電量が十分でないため、
本来の超絶な加速は発揮できないのだという。
1周してバッテリーへのチャージを終えたトヨタの車の加速は凄まじく、
ライバル不在のトップ・カテゴリー(LMP1)への興味は、
一瞬にして失せた。
ライバルなどいなくとも優勝は優勝だー、と叫ぶ脳天気な連中もいるが、
その後のトヨタ車2台は、よく言えば「リスクマネージメント・モード走行」。
だがこれは、レースでは「手抜き走行」とも言う。(笑)
たとえば、コーナーの縁石は結構段差があって、
乗り上げると衝撃がきつく(そうでないソフトなところもある)、
サスペンションに負荷はかかるし、
車体が浮き上がって挙動も不安定になる。
だからできれば乗り上げない方が良いのだが、
ライバルとの差をコンマ1秒でも広げるため、
ライン取りを極力直線に近づけようと無理矢理乗り上げていく。
しかし今回、そこまで攻めなくても良いトヨタ車は、
普段よりも縁石を踏まない。
またカテゴリー混走レースでは、格下車が移動シケインとなり、
これをいかに巧く抜いていくかが見所のひとつとなる。
ライバルがいる時は、「うわ、ぶつかる!?」
と車載カメラ映像を見ていても肝が冷えるギリギリの追い抜きをするが、
今回は「減速して」安全に抜けるところまで「待つ」。
テールツーノーズでライバルが背後にいる時は、
レコードラインから外れた場所を走ったりもするから、
やはりタイヤやブレーキには余計な負担がかかり、
耐久レースではこれが蓄積されて故障につながる。
けれどトヨタ車は、ほぼ単独走行状態なので、
理想のラインを淡々となぞっていく。
当然、ドライバーの精神的、体力的負荷も少ないからミスも減る。
これでも「優勝は優勝だー」と喜べ、と言うのだろうか。
その一方で、
ポルシェやフェラーリ、フォード、BMWなどが鎬を削る、
GTEクラスの攻防は今年も見応えがあり、
解説者が「今年ほどLMP1が映らないのは珍しい」とぼやくほど、
トップカテゴリー車そっちのけで、格下クラス車ばかり映していた。
このクラスにも日本車の姿があれば良いのだが、
ニュルに投入されていたレクサスは、残念ながら相手にならなかった。
カテゴリーが違うとは言え、ポルシェやフェラーリのGT3規格車は、
最初からその目的で開発されているのに対し、
レクサスは一般車がベースのため、
いくら手を加えても戦闘力の向上には限界があるのだという。
LMP1への興味は失せたが、耐久レースの中継には、
車同士の駆け引き以外に、もうひとつ楽しみがある。
それは多彩なゲスト陣(解説者)による「蘊蓄」だ。
スプリント・レースの解説は、半分以上、
目の前で起きているレースの展開に即した話になるが、
耐久レースは長丁場なので、それだけでは間がもたない。
そこでゲストたちは、自身の体験に基づいた、
ドライバーの心情やメカニックの苦労など、
さまざまな裏話を披露してくれ、これがまた興味深くて面白い。
たとえば、24時間レースでは、
当然朝も夕方も走っているから、朝日や夕日がまぶしい。
太陽と対面する時はサングラスも役に立たないので、
路側寄りに走ってコース際の白線を目印にするが、
路側はタイヤの削りカスや、
コースアウトした車の掻き出した砂利が多いので、
タイヤがカスを拾ったり、グリップを失って姿勢を乱すこともある。
しかもイエローフラッグも見えないから、
いつ事故車が目の前に現れるかと、緊張しっぱなしだという。
今年のルマンでは、BMWがレース車両としてはひときわ大柄な、
新型クーペM8を投入して注目を浴び、
不勉強な解説者はよくこんな大型車をベースにしたものだ、
にも関わらず速いのはなぜ? と不思議がっていた。
ところが別の空力に詳しい解説者によれば、
前方投影面積の縮小だけを考えて小型車をベースとし、
トレッド幅はレギュレーション一杯に広げ、
オーバーフェンダーを付けたりすると、
空力のライン的にはそこに段差が生じて乱流が発生する。
しかし、見ての通り大柄のM8のシルエットは段差が少なく、
全体にとても滑らかなラインなので気流の乱れが少なく、
その効果は前方投影面積の不利を補うほどだという。
アストンマーチンのGTE車両は、
後方に突き出したディフューザーが特徴的だが、
上部の車体も延長してディフューザーと一体化した方が、
空力的には好ましい。けれどレギュレーション上、
そこまでの改造は許されていないので、
実はあれは苦肉の策なのだという。
日本人は外国人と比べると夜間走行が苦手だが、
これは目の色が関係しているそうだ。
青い目の外国人は、いわゆる「夜目」が利き、
モーターホーム内の薄暗がりで本を読んでいたりするくらいだから、
夜間でも照明の少ないコースを昼間とあまり変わらずに走れる。
ただしその分、明るいところはまぶしいようで、
白人がよくサングラスをかけているのは、
ファッションだけでなく、実用も兼ねている。
モータースポーツでは女性の進出が遅れているが、
レジェンド的な存在の女性ドライバーもいて、
解説者として登場したそのひとりにMCが、
「ルマンに参加したとき、いちばん大変だったことは?」と質問。
「男性のプライドと既得権益」
実力のない男が、相手が女というだけで偉そうにするのは、
どこの世界も同じなんだなと、つい、笑ってしまった。
ちなみにレースで追い抜く時、男性同士だと、
追いついた方がヘッドライトをバシバシパッシングして、
「おらおら邪魔だどけー!」とやるが、
女性がこれをやると後でいろいろ言われるらしく、
彼女はぴったり後ろにつけておとなしく好機をうかがい、
ここぞという時にスパッ! と抜いていくという。
なんと爽快で格好いいのだろう!
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