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2018年06月11日18:32

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【バレエ】 Kバレエ 「クレオパトラ」 (9日マチネ/10日)


Kの「クレオパトラ」上演は、昨年の10月以来、早くも2度目。
以下は9日マチネと10日の舞台を御覧になった我が師の感想だが、
相変わらず客観的でありながらも、ダンサーたちの熱気と、
登場人物たちの感情が激しく交錯するさまが、
映像となって脳裏に再現されるようだ。


実は私は映画も含めてまだ1回も観ていないので(熊さん、ごめん)、
せめて物語だけでもおさらいしておこうとKの公式サイトを覗いたら、
公演情報には日程/配役表があるだけで、「あらすじ」がない。

たしかヒストリーには作品毎の簡単な解説があったな、と行ってみるも、
そもそもレパートリーに「クレオパトラ」がない。(笑)
配役表のpdfも、前回の「クレオパトラ」以降止めてしまったし、
公式サイトの担当者、手を抜きすぎなんじゃないか。

で検索したら、去年のものだが、こんなサイトがあった。
http://www.bunkamura.co.jp/orchard/lineup/17_cleopatra/

忙しいとか、人手がたりないとかなのだろうけど、
自分たちの公演の宣伝になるのだし、
「クレオパトラ」はまだ馴染みのない演目なのだから、
せめてリンクくらい張ってもいいんじゃなかろうか。


★9日マチネ

クレオパトラ:浅川
プトレマイオス:篠宮
カエサル:キャシディ
アントニウス:堀内
オクタヴィアヌス:杉野
ポンペイウス:ヴィユウジャーニン

「序曲を聴いた時は、主旋律が弱くて迫力に欠けると思ったけど、
次第に音が出てきて、エンディングでは迫力ある音になっていた。
オープニングとエンディングは同じ曲だから、違いが明確だった」

「初演時にも思ったことだけど、
2幕のスピード感に比べて、1幕は少しもたつきを感じる。
でも、踊り手の動きは明らかに初演時より良くなっている」

「浅川さんのクレオパトラは、威厳や迫力もあるんだけど、
女性としてのクレオパトラの演じ方が繊細な気がする」

「カエサルはキャシディさん、
ポンペイウスはヴィユウジャーニンさんで、
初演時と変わらず」

「プトレマイオスの篠宮くん、
初演時は山本くんの無邪気な弟王の役作りに少し引っ張られている感じで、
独自性をあまり感じなかったので、無邪気な弟では山本くんに分があった」

「今回はもう少し年齢を上に設定して、
若い王としての傲慢さや狡猾さを少し足した感じ。
篠宮くんには、その方がしっくりくる」

「オクタヴィアヌスは杉野くん。カッコいい!
元々彫りの深い顔立ちなのにアイメイクを濃いめにしているので、
衣装に違和感がない。
テルマエロマエに出てるローマ人役の濃い日本人俳優に負けない」

「オクタヴィアヌスは見せ場の踊りも衣装もカッコいいので、ちょっとお得。
攻め入る時とか、群舞を従えて真ん中で踊る姿は、
グリゴロ版のクラッススを思い出す。振付もちょっとオマージュ入ってると思う」

「攻め入る時の群舞が1列ずつ左右から駆け込んでくる場面は、
ベジャールのカブキの討入り、ボーリング陣形が入ってる気がする。
でも、熊さんの場合はリスペクトが感じられるので、
単純に真似してるという印象はない」

「カブキの討入りもクラッススもワクワクする気持ちはよくわかる。
女の私でさえそうなんだから、男性ならなおさら思い入れがありそう。
ただの推測というか妄想にも近いけど」

「群舞に可愛い若い男の子がいるな、
よく可愛い子ばかり集めるなぁと思ったけど、
あれは山本くんだったかも」

「アントニウスは堀内さん。初演時は浅川さんの日は宮尾くんだった。
宮尾くんはミュージカルに出演中だからだね。
堀内さんの優しい雰囲気はアントニウスが似合う。
しかもテクニックがあってキレも良い。前回の宮尾くんはちょっと重かった」

「クレオパトラを想いながらも、オクタヴィアヌスの押しに負けて、
オクタヴィアと婚約してしまう優柔不断な優男っふりが、
あまりにも自然で突っ込みたくなる。ソロルかよ…。
しかも、ソロルと違って権力者に逆らえない立場でもないから、
もっとタチ悪いかも。←役が優男なだけで堀内さんのことは褒めてるんだよ」

「オクタヴィアは毛利さん。移籍して大正解だね。活躍が目覚ましい。
オクタヴィアはアントニウスに恋心を抱いて幸せいっぱいに踊るけど、
結構テクニックが強くないと踊りきれない振付。
フェッテではダブルやスポッティングを入れていた。
口紅は濃い色だけど、スワニルダの時より優しげなメイク。
アントニウスに振られて嘆き悲しむ役で、激しく責めたりする役ではないから」

「2幕のエンディングに至るまでの演出は本当に上手いなぁと思う。
畳み掛けるような演出と迫力で、力強い音楽も相まって圧巻。
浅川さんのパワフルさと悲しみの表現に引き込まれる」

「女の私でさえドキドキする衣装と振付は、
男性が観たらどんな感じなんだろう」

「でも、海外ではセクシーな女性は男性好みだけど、
日本人男性にはクレオパトラは強すぎ攻め過ぎで好みではないかもね。
観客にも男性は少なめ」

*今回から始まった(?)フォトコールについて。
http://www.k-ballet.co.jp/news/view/2172

「最近、カーテンコールでの撮影を許可する公演が、
ミュージカルなどでも増えてきているのは、
SNSでの拡散、宣伝効果を狙っているんだろうね」


★10日

クレオパトラ:中村
プトレマイオス:山本
カエサル:キャシディ
アントニウス:栗山
オクタヴィアヌス:遅沢
ポンペイウス:

「今日はオープニングから主旋律がしっかりしていた。
やはり経験値の問題なのかな」

「祥子さんは顔立ち的にもクレオパトラのメイクが似合う。
切れ長の目をアイラインで強調したメイク。浅川さんの目は可愛いからね。
それに、中村さんはクラシックだと意外と伸びやかに踊らない印象だけど、
こういうコンテンポラリー要素のある作品だと、
長い手脚を伸び伸びと大きく使って踊るので、見映えがする。
プロポーションも際立つ衣装と振付だし、ちょっと敵わないな」

「あと色気というか、エロティシズムが祥子さんの方があるかも。
艶めかしい。浅川さんは古典の方が美しく見える。
祥子クレオパトラの無慈悲な感じも、なんかハマる」

「山本くんのプトレマイオス、やっぱり良い。
傲慢でわがままで、野心があって、でも鍛錬は嫌いという、
こんな君主の国民にはなりたくないけど、どこか可愛らしさがある。
踊りは鮮やかで、キレと軽やかさが見事」

「案内人という役名の、道化的でアリのような献身的なクレオパトラ部下、
昨日の佐野くんも良かったけど、やっぱり酒匂くんの方が余裕があって、
見ていて安心感がある」

「ブルータスは伊坂くん。カエサルに忠実で熱い部下。
演劇的に派手で面白い。踊りのキレも良い」

「男娼とクレオパトラのお付き達の踊りがベジャールのハルサイを思わせる。
エロティックではあるけれど、音楽的にも躍動感があって、
どこかあっけらかんとした感じが似てるのかな。
クレオパトラのお付きは「ファラオの娘」のイメージともかぶるかも」

「大満足! 祥子さんはクレオパトラ、当り役かも。
浅川さんより祥子さんの方が良いと思ったのは初めて。
いつもは表現が薄味と感じていた祥子さんだけど、
クレオパトラは表現力の高さを見せつけられた感じ。
非常に明確に伝わってくる。今日観て気付かされた点がいくつもある。
熊さんからは今頃やっと? 受信力をつけろと言われそうだけど」

「クレオパトラの婚姻は基本政略結婚だし、
敗者だから記録は残っていなくて謎が多いから、
後世の作り手によって解釈が自由なんだろうね。
誰を好きだったとするとか。熊版ではアントニウス。
彼の前でだけは蛇イメージの衣装や動きは見せない。
彼が死んだことによって、また蛇の化身となる。
祥子さんの目付きと激しく爆発するような怒りと嘆きで明確になった」

「男娼を選んで交わる時は蛇の化身になるし、
絨毯に巻かれてカエサルの前に現れる時も、
蛇の化身の衣装を長くしたようなドレスで、やはり惑わせて落とす感じ。
その時点では愛情はない。その後は情が生まれるんだろうけど。
カエサルが殺された時は嘆いて気落ちしてるからね」

「権力と官能と、ドロドロした様々な人物の欲望が渦巻く1幕。
2幕でカエサルが殺害された後に、廉くんのアントニウスが現れると、
空気が一変する。なんという清涼感!
カルメンで神部さんのミカエラが出てきた時以来の爽やかさ」

「爽やかで甘く優しく、昔の少女漫画から抜け出てきたようなアントニウス。
彼とのアダージオでは、クレオパトラの表情も、
アントニウスに合わせるように可愛らしさが感じられる。
媚びるような可愛らしさではなく、少女性をおびるような表情で、
そこには無慈悲さや計算高い狡猾さや艶かしさはない」

「そのあと登場するオクタヴィアヌスの遅沢さん。
キレは杉野くんに譲るものの軽やかさに加えて爽やかさが。
初演の時は若々しいとは思ったけど、こんなに爽やかだったかな」

「アントニウスとオクタヴィアヌスの友情も、
杉野くんと堀内さんは昔の少年漫画みたいな熱い友情
(少年ジャンプの友情・努力・勝利の三大テーマみたいな)。
ちょっと気弱な主人公アントニウスに、
グイグイと押しの強い、熱く頼もしい友人オクタヴィアヌス、みたいな」

「一方遅沢さんと廉くんは、昔の少女漫画みたいな爽やかな男の友情。
なんか皆んな爽やかな感じに寄っている。廉くんの清涼感の影響おそるべし」

「オクタヴィアの矢内さん、軽やかで動きが滑らかで美しく、
音感も良いので観ていてストレスがない。
廉くんとの身長差はかなりあるものの、心地よいユニゾンを見せてくれる。
テクニックも強いので、フェッテは軸がまったくブレず、
ダブルを多用しながらスポッティングを披露し、見事に決めて盛り上げてた」

「アントニウスを追い詰め傷を負わせたオクタヴィアヌス、
首に剣を当ててとどめを刺す直前で止めて立ち去る場面、
杉野くんは、苦渋の表情でやっぱり殺せない!
とアントニウスを置いて立ち去っていたと思う。
敵対しても友情は変わらず、情けをかけたんだなと、
オクタヴィアヌスに悪い印象はなく、カッコいい印象のまま終演」

「一方遅沢さんは、死んで楽になんかさせるものか、
生き恥を晒せと高笑いをして消えて行った…。
爽やかな若者から急にヒールの表情に。
大切な妹と自分を裏切ったアントニウスがよほど許せずに、
可愛さ余って憎さ100倍みたいな感じになってしまったのかな。
今日の方が、むしろ殺してくれ! オクタヴィアヌス!
と叫ぶアントニウスの演技に説得力はあるかな。
友人を殺せないというのも、良い話なんだけど」

「オクタヴィアヌスにとどめを刺されなかったものの、
自死を選んだアントニウス。
その亡骸にすがるクレオパトラにも多少違いが見えた」

「浅川さんは怒り<嘆きに見えたけど、祥子さんは嘆きからの怒り。怒り>嘆き。
憎しみを湛えた目には、この世の全てのものに対する怨みが感じられ、
アントニウスに影響された善良なヒトとしての自分を、
アントニウスとの想い出とともに文字通り脱ぎ捨て、
本性である蛇の化身としての自分を選ぶ」

「強さと妖しい禍々しさと神々しさを併せ持つ、孤高の存在としてのクレオパトラ。
盛り上がる音楽と共に高揚感を覚えるエンディングはクセになる。
クレオパトラの2幕はブルメイステル版「白鳥」の3幕みたいな充足感がある」

「男娼は、娼婦の男版と単純に思っていると違和感がある。
娼婦を描く時は、だいたい派手に着飾り男性を魅惑する演出だけど、
ここで描かれる男娼にはそれがない。
男性的な色気があってクレオパトラを魅了するのではなく、
クレオパトラに翻弄され支配される弱い存在。
だから、ちょっと中性的な魅力のある廉くんと堀内さんが
キャスティングされているんだね」

「Kのダンサーで色気があるのはキャシディさんと、
ダントツで遅沢さんだものね。杉野くんも最近色気がでてきたけど」

「クレオパトラは男性ごときに落とされない、というエピソードなんだろうね。
そのクレオパトラが2幕でアントニウスと恋に落ちるというのが、
ひとつのキモなんだろうな」


我が師は最初、忙しいから今回は浅川さんだけでいいか、と思ったそうな。
でも廉くんのアントニウスは観たいなあ、と追加したところ、
中村さんに圧倒された、追加して良かった! とのこと。

1幕と2幕は5分しか違わないのに1幕の方が長く感じるのは、
1幕は登場人物たちの紹介や解説、説明パートなので、
舞台に引き込まれないというのが大きいようだ。

ホワイエで語られる他の観客たちの感想も同様で、
中には「どんだけ超大作なの?」と苦笑いする人もいたとか。
前回も含めて複数回観覧し、
内容を知っている我が師ですらそう思ったのだから、
初めての人はどれほど長く感じたのだろう。
難しい注文だと言うのはわかった上で記すが、
1幕の改訂は今後の課題だろう。

とはいえクラシックの形式張った感じはしないので、
壁画を彷彿とさせるオリエンタルなメイク共々、
海外のバレエ・ファンにも受け入れられるのでは、
ぜひ観せたい、とも語っていた。
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