mixiユーザー(id:12949847)

2017年12月01日10:02

239 view

今日の本棚495♪



「人質の経済学」

ロレッタ・ナポリオーニ
村井章子(訳)


実はこの本、経済学の本だと思って手に取ったんですよ。
結構人の気を引く為の、過激なタイトルの本もあるので。
中身は予想と全く違い、タイトルそのものでした(;^_^A
中東や北アフリカ等で頻繁に行われている、誘拐ビジネスを研究した本です。

こういったノンフィクションのルポルタージュを読む機会は滅多に無いのですが、とても興味深く読むことが出来ました。
うーん、海外旅行をしたいという気が失せますね…標的になるのは人道支援活動家やジャーナリストが主ですが、観光客も多くが被害に遭っています。
国家は表向き「テロリストとは取引しない」との声明を発表しますが、その裏では秘密裏の駆け引きが行われ、人間一人に対しての値段が付けられます。
それぞれの国の政府が、明確に人質に優先順位と幾らまでなら払えるかを決めているのです。
もうそれだけでもぞっとしますね…。

悲しいのが、タイトル通りこれがただの犯罪ではなく、ビジネスとして既に広い世界で行われている点です。
貧しい国では一件の誘拐取引で町が活性化し、産業が潤う。
毎日の食べる物にも困る人々は、善悪の概念すら薄らぎ、人質を同じ人間とも見なさなくなる…。
取り締まれば良い、逮捕すれば良いという単純な図式では語れない貧困という現象が、絶望を募らせます。それでも、誘拐行為は絶対的に許してはならない悪なのですけれど。
「二人のシモーナ」における世論と、対照的だった日本人三人の誘拐事件もとても考えさせられました。この事件は、ドラマ「相棒」の劇場版でも取り上げられてすごく印象に残っています。

解説は池上彰氏。
やはりシリアでISに殺害された、日本人ジャーナリストの事件も取り上げられています。
当時のニュースでは分からなかった、情勢と殺害理由には言葉もありません。
今後私たちは、テロリスト達とどう立ち向かっていかなければならないのか。
とてもとても、考えさせられる1冊でした。



(図)
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2017年12月>
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      

最近の日記

もっと見る